どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
曇らせって、ヒロインにとって大切な存在であるからこそ輝くと思うんだよね。
そういう意味では、一般人が死んだだけだし曇らせには当たらないよねぇ~
ってことで、曇らせタグはつけてないのです。
二人の姫巫女を無事神巫女学園付きの医者へと送り届けた神剣アンリと龍雅生セイラ。
幸いなことに、早期に治療を受けたことで命に別状はないと告げられた。復帰には時間がかかるが、後遺症もない状態で任務に戻ることができるだろう。
それを聞いて安堵した二人は、討伐した蜘蛛淫魔についての報告、そして彼女らがあの地方都市へ向かった理由でもある『正体不明』……本人曰く、『魔法使い』についての報告のため、理事長室へと向かっていた。
「むぅ……なんとか、『魔法使い』殿をこちら側に引き込めないだろうか……」
「セイラ先輩、学園に帰ってくる道中もずっと言ってますよね。まぁ、私もそう思いますけど」
「だろう? 彼のサポートは、素晴らしいという言葉じゃ尽くせないほどだった! 上位淫魔をあれほど容易く倒せたのは初めての経験だったぞ」
アンリもそうだろう? とセイラはアンリへ問いかけるのだが、その問いかけにアンリは「いやぁ」と曖昧な反応を返す。
「私、ちゃんとした戦闘って今回が初めてで……前の任務は、淫魔討伐に見せかけた罠でしたし……」
「……そういえばそうだったな」
三年生であり、学生ながら何度も姫巫女の任務をこなしているセイラとは違って、アンリはまだ一年生。
学年の中で突出した実力を持っているが、姫巫女としての任務を受けることを許可されたのはつい最近になってからだったとセイラは思い出した。
そしてその最初の任務が罠だったとは、とセイラはアンリを慰める。
人を守るために赴いた場所で、人に裏切られたのだ。アンリにとって、それがどれだけショックだったかは彼女も理解できる。
「言っちゃなんですけど、私自身『正体不……じゃなかった、『魔法使い』がいなきゃ今頃……うぅ、考えたくもない……」
どうなっていたかは想像に容易い。
嫌な想像をしたアンリはブルリと体を震わせ、嫌悪感から顔を顰める。
「ということは……アンリはもう二度、彼に救われているわけか。信じていないわけじゃないが彼自身、私たち姫巫女を嫌ってはいないのは本当なんだろう」
「上が信用できないっていう彼の言うことも、よくわかるんですけどね」
身に沁みて痛感しているアンリのため息に、セイラも「そうだな」と頷いた。
淫魔と戦う姫巫女の存在は国の上層部以外には秘匿されている。
超常の力を身に付けたまさに超人。そしてその超人たちが戦う異形は、知ってしまうことで縁を繋ぎ、その者を襲う可能性を高めてしまう。
だからこその秘匿。そしてそれらを知る上層部には、少なからず姫巫女の護衛がつけられることも珍しくはない。
だからこそ、だ。
そんな彼女らを……見目麗しく、強い力を持つ彼女らだからこそ、己の好きなようにしたいなどという下衆な欲を滾らせるのは。
その欲望から、彼らは淫魔と手を組み、そして姫巫女を罠に嵌めて手籠めにしようとする。
そしてもっと最悪なのは、手籠めにし、散々『遊び』尽くした姫巫女を淫魔へ売ることだろう。
その先に待つのは、淫魔たちによる姫巫女の苗床化だ。
戦力としての姫巫女が減るだけではなく、姫巫女から生まれ出た淫魔は強力な力を得るのだから質が悪い。
故に、淫魔に与することは重罪に値するのだが……その裏切り者たちは金と権力を持つ者がほとんど。
姫巫女たちの長である神剣カンナもどうにかしようと上層部に探りを入れているが、その成果も芳しくはない。
まさにクソである。
「もう全員斬ればいいんじゃないか?」
「セイラ先輩、それは極端すぎますよ……私たち、殺人鬼じゃないんですから」
「むぅ……上層部全員を斬り捨てて、『魔法使い』殿がこちらについてくれるのなら安いと思うんだが……」
「はいはい。それより、速く報告して戻りますよ。さっきの一般人の男性、記憶処理できてないんで保護を急がないと。……淫魔なんて、知らずに生きられた方がいいんですから」
ほら行きますよ、と少し速足に理事長室へと足を進めるアンリは、救援要請の対応で保護できなかった男の事を思い浮かべていた。
その彼が淫魔の被害に遭わないうちに保護しなければならないし、その責任が彼女にはある。
自覚があるのか、セイラも同意して理事長室へと急ぐ。
「ああ、アンリと龍雅生か。姫巫女の救援に行ってくれたようだな。ありがとう」
ノックとともに足を踏み入れた二人を出迎えたのは、理事長用の立派な席に座る神剣カンナ。
そんな彼女に向け、二人は今回の件についての報告を終えると、今まで黙っていたカンナが「そうか」と短く頷いた。
「とりあえず、お前たちの話は理解した。上級淫魔と戦闘になったことについては、運が悪かったというしかないが……『正体不明』、いや『魔法使い』だったな。彼がいたことは、不幸中の幸いだったな」
「それで母さんはどうするつもりなの? あの人、うちの上層部を嫌ってるだけで、私たち姫巫女には協力的みたいだけど……」
「そうだな。話から察するに、『
あっけらかんと言うカンナの言葉に、アンリとセイラの二人は「それでいいんですか」と目を丸くするのだが、「その上でだ」とカンナが続ける。
「秘密裏に彼への接触、できれば我々姫巫女との協力体制を結びたい。淫魔に与する人類の裏切者を誅するのは良いんだが、その相手のだいたいが重要なポストに就く者たちだ。好き勝手に殺し回られると、表社会にも影響があるうえに、空いた席にさらに手に負えない悪人が居座りかねない」
そしてそういう奴は、さらに巧妙に立ち回るからこそ手に負えなくなる。
だからこそ、殺すとしてもそのタイミングを計る必要がある。
カンナが件の『魔法使い』と協力体制を敷きたいのも、これが大きな理由であった。
「ふむ……カンナ様、とりあえず彼の『
「既に現場に出ている姫巫女たちを動かせば、上にもその動きを悟られかねない。接触を図るなら、学生の姫巫女が適任だろう」
「なら、また私が――」
「バカ者。学生でもお前は私の娘だぞ? 動きがあれば、上に疑問を抱かせかねん。なに、姫巫女の選定はまたこちらでやっておこう」
話は以上だ、と二人に告げるカンナ。
そうであるのなら、すぐに戻って男性……東山トオリと名乗った男の保護へ向かおうとする二人。
だがそんな二人の話を聞き、カンナは待ったをかけた。
「ちょっと母さん、どうして止めるのよ。報告したでしょ? 早くしないとあの人も淫魔に――」
「その件についてなんだがな。お前たちが連れ帰ってくれた姫巫女二人の治療中に、追加で報告があがってきた。場所は……お前たちが向かっていた地方都市。最初は警察案件だったが、淫魔の可能性ありと回って来たらしい」
その被害者がこいつだ、とカンナはアンリに見せつけるようにデスク上へその資料を置く。
嫌な予感に駆られながらも、アンリは恐る恐るその資料に手を伸ばして目を通す。
被害者は二十歳男性。名前は北畑田ホクト。
友人宛に電話があり、その内容から淫魔に追われていた形跡有り。現在は行方不明。
つらつらと被害報告の資料に目を通すアンリは、そんな馬鹿なと目を見開く。それはセイラも同じだろう。
なにせあの蜘蛛淫魔以外に、あの街では淫魔の反応なんてなかったはずだ。
「それは上位淫魔が近くに出ていたのが原因かもしれん。強大な存在のせいで力の弱い淫魔に気づかない事例は稀にある。それと、本題はこれだ。お前たちが保護しようとしていた男がこいつじゃないかと思ってな。念のため、写真ももらっている」
「それは違うと思うわよ? だって聞いた名前と違う……し………………え?」
あの時、たしかに男は東山と名乗っていたはずだ。
であれば、この聞き覚えのない名前は、あの男とはまた別の一般人なのだろうと考えていた。
あの時近くにいたはずなのに守れなかったことを悔やみながらも、アンリはカンナが取り出した写真を見る。
見て、そして自然と声が零れた。
見覚えのある顔だった。
「なん……で……だって、名前……」
「一般人からすれば、我々姫巫女が不審者に見えてしまうことも仕方ない。なにより追いかけ回された相手だ。偽名を名乗っても不思議じゃない」
淡々と、当たり前のことのように続けるカンナとは対照的に、アンリの動悸は激しくなっていく。
それも当然だろう。
自身の不注意で見知った顔が死んだと、そう聞かされているのだから。
しかもアンリの場合、姫巫女としての任務経験は浅い。
だからこそ、頭ではわかっていたはずの死が重くのしかかる。
「わ、私のせいで……? 私が後回しにしたから……」
「違うな、アンリ。それを言うなら、あの時救援の優先を指示した私に責がある。あの判断が間違いだとは思わないが、お前ひとりを残して彼を保護する選択肢もあった」
ポン、とアンリの背中を叩くセイラに、アンリは「先輩……」と振り返った。
アンリほどではないのは、セイラ自身も経験があるからだろう。
「……アンリ。姫巫女としてある以上、一般人の死は良くあることだ。責任を感じるのは結構だが、重く受け止めすぎるな。でなければ、次にその死が向けられるのはお前だぞ」
この淫魔の調査と討伐については他の姫巫女を当たらせるから休むように、と話を切り上げるカンナ。
その指示に従い、二人は理事長室を後にする。
アンリの足取りは、重く、ふらふらとしたものであった。
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