どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
アルバイトの同期に連絡したこともあって、きっとすぐにでも俺に関する捜査が始まっているだろう。
そうなると、もう『北畑田ホクト』という人間はこの世にはいないことになるわけだ。
悲しんでくれるのはアルバイトで仲良くやっていた従業員、それから高校の知り合いくらいなものだろう。
もっとも後者に関しては、この生き方を決めた卒業後から連絡を取っていないためわからないが。
まぁ、平和に生きてくれるのならばそれで十分だろう。
そのためにも、俺はまだまだゴミ掃除をしなければならないのだから。
「さて、とりあえずはゴミを探すか」
やってきたのは東京のど真ん中に立つでっかい塔。その名も東京ツリーだ。
国や都道府県の名前はそのままのくせにこういうところはオリジナルなのが、ゲームを元にした世界であることを実感させにきやがる。
「もっと平和な世界で、もっと普通に生きたいものだぜ。【探れ】」
己の願望をボヤキながら、ツリーを中心に周囲一帯に探知をかける。
使用している魔法は、至極単純明快。指定範囲内の空間を探り、その範囲内で何が起きているのか、立体的に把握する魔法だ。
今のところ一度に探知できるのは街一つ分くらいか。
二年前に比べれば、これでもかなり範囲が広がった方である。増えた分、処理しなければならない情報量もえげつないことになっているが。
もっとこう……範囲内で淫魔や人類の裏切者だけに反応する探知魔法、みたいな感じにできれば、時間をかけず、より多くの姫巫女を助けられるのだが……やれることを最大限やるしかない。
もちろん、街一つすべての詳細を探るのは時間がかかりすぎるため、ある程度は絞ってはいる。
それこそ、高いビルの最上階や隠されているであろう地下室、あるいは建物のどこかにある隠し部屋などなど。
だいたいの裏切り者のゴミどもは、そうした人目につきにくい場所で、捕らえた姫巫女にあれやこれやとイタすことが多い。
それはやましいことをしている上に、姫巫女や淫魔関係は秘匿すべきものであるからでもあるのだろう。
その分、俺も気兼ねなく殺せるのだが。
「現状の目標は、探知範囲の拡大……できれば日本全土カバーできればいいんだが……さて、俺一人でどこまでやれるかだ」
だからこそ、今できる最大限のことをする。
現状だと、一度の探知が街一つ。一晩丸々かければ、大きな区一つ分くらいの調査ができると言ったところか。
己の力じゃ、まだまだ足りない。
それなりの数の姫巫女を助けられたという自負はあるが、それでも、それ以上にまだ助けられていない、助けられなかった姫巫女だっていたはずだ。
淫魔を殺せないのにこの程度とは、何たる体たらくか。
嘆いても好転はしないため、グッとこらえて呑み込んだ。
「お、今日もゴミを発見発見。【跳べ】」
運よく見つけたのは、今回の探知範囲ギリギリに引っかかった建物の、その地下だった。
股を開かせる悪趣味な体勢で拘束された姫巫女らしき女性と、そんな彼女に迫ろうとしていた裸の男。
仮にそう言ったプレイであったのなら申し訳なかったかもしれないが、立体映像で見ても女性が拒絶しているし、何よりも男の股間のブツがウネウネと意志を持って蠢く異形と化していたためアウト判定である。
一瞬でその現場へと跳ぶと、立体映像よりも目に悪い光景が飛び込んでくる。
主に男の裸が原因なのだが。
「なっ……!? 貴様、どこから――」
「【別て】」
突然地下室の部屋に現れた俺を見て、ギョッとした様子で叫ぶ男。
だがしかし、ゴミに発言権など皆無である。
何かを言い切るよりも早く、男の首を落とし、そして異形と化した元イチモツも丁寧にミリ単位でバラした。
ボトボトコロンと、ゴミだったものの体が床に転がり、赤く床を染めた。
「え……え?」
「ふむ……見たところ、麻痺毒で動けなくされたってところで捕まった感じだな。救援要請は出せたか?」
「あの……えっと、出す前に捕まって……あなたは――」
「なら外に出たらすぐに出しな。【跳べ】」
困惑した様子の姫巫女は、こちらを見て何かを聞きたそうにしていた。
だが、それを無視して俺は彼女に触れ、そのまま彼女を建物の外へと瞬間移動で脱出させる。
この魔法、触れてさえいれば俺以外のモノも転移可能なのだ。
姫巫女を逃がす時には大変お世話になっている。
余っていた上着も一緒に転移させたので、裸で帰るようなことはないだろう。
そんなわけで、無事に姫巫女の救出もできたし、後はここを出るだけなのだが……どうにも、そういうわけにはいかなくなった。
突如床から跳ね上がるように襲い掛かってきたナニカを、障壁を張って受け止める。
障壁とは言うが、指定範囲の空間を固めただけのものだ。固めた結果、空間そのものが変化することがなく、故に何モノの通過を許さない。
そんな無色透明の壁が受け止めたものへと視線を向ける。
「うーわ、斬り落としたイチモツが動いてら」
正確には、元イチモツであるが。
薬か何かで淫魔と同じような性質を持ってしまったのだろう。だからこそ、魔法で持ち主は死んでも、これだけは死ななかったわけだ。
そのまま四方八方を障壁で囲み、箱のようにして捕えてみる。
グネグネと伸縮を繰り返しながら、まるでイモムシのように暴れ回るそれに嫌悪感を抱く。
何度か魔法でバラしてみるが、結果は同じだった。
淫魔のなりそこないも殺せないのだから、ほとほと残念だ。
「つーわけで、だ。こいつの処理を任せたい。そこでずっと様子を見てたんだろ」
「にゃーん」
こちらの死角に当たる物陰。
ここへ跳んでくる前から気づいてはいたが、彼女もタイミングを見計らっていたのだろう。
鳴き声をあげながらてくてくと姿を現したのは、毛並みの整った一匹の黒猫だった。
足元までやってきたそいつは、まるで懐いた本物の猫のようにすり寄ろうとするのだが、それを俺はヒョイと飛び退いて躱す。
「バレてんのに猫のまねごとを続けるのはやめろ」
「にゃーん、ホクトくんったらひどーい」
「下手に俺の名前を呼ぶんじゃねぇ。どこで誰に聞かれてるかわからねぇだろうが」
「まったくもー、照れ屋さんなんだから」
第三者が見れば猫が喋るというおかしな光景がそこにはあるのだろうが、残念なことに、こいつは猫の姿をしているだけの人間だ。
瞬間、どろりと猫の姿が溶け、溶けたモノが人の姿を形作る。
「ダ・ア・リ~ン!」
「誰がダーリンだ誰が」
瞬間移動で彼女の背後を取ることで、跳びかかってきた少女を躱す。
青い髪をセミロングにした少女は、そのまま床へと額をぶつけると、痛い痛いと涙目になって赤くなった額を抑えていた。
「うう……ダーリンがディ~プなキッスをしてくれたら、たちまち治っちゃうかも?」
「バカなことを言ってないで、早いとこそれを片付けてくれ」
ため息交じりに指示を出せば、彼女は「かっしこまり~」と軽い反応を返した。
閉じ込めていた淫魔の成り損ないを開放する。
「死ね」
箱を解き、その身が宙へと投げ出されたその瞬間。
彼女の手は禍々しい爪を伸ばした巨大な猫のようなものへと変化し、そのまま成り損ないを切り裂いた。
ただそれだけの攻撃で、ゴミは跡形もなくその姿を崩壊させる。
「いっえ~い、これぞまさしく共同作業ってやつだね! つまるところケーキ入刀、私たちは新婚!」
「結婚してねぇよ……あとお前、元とはいえケーキ代わりがイチモツでいいのか?」
「ごめんやっぱ今のなし」
いつもはコロコロと表情を変えて内心を掴ませない彼女だが、スンと瞬時に真顔になったその様子に、「そりゃそうなるわな」と納得して頷く。
「まあいい。ちょうどお前を探してたところだ。
「私を……ハッ!? ってことはもしかして、ダーリンからのプロポーズが……!? 是非是非! ハンコでもなんでも押しちゃう~!」
「ちげーよ」
再び跳んでくるバカを障壁で受け止める。
ベッタン! と窓ガラスに気付かず飛び込んだ猫のようになった來伊は、「にゃっ!?」と声をあげて地に落ちた。
「も~、なら何の用なの? 結婚以外にないと思うんだけど」
「それしか頭にないのが怖ぇよ」
まったく、と相変わらずな彼女にため息を吐く。
出会いはたしか二年ほど前。ちょうど俺が、この裏活動を始めたぐらいの時期だったか。
場所はどこかの地下競売場。優秀な学生の姫巫女であった彼女はオークションの目玉商品として競売にかけられていたのだが、そこを俺が助けたのが知り合ったきっかけである。
あれは中継を繋いだネットオークションだったことが悔やまれる。
あの場にいた関係者はすべて殺せはしたものの、商品を買おうとしていたゴミどもは殺せず、俺という存在をゴミどもに周知される結果となったのは苦い思い出だ。
そしてそれはあの場にいた来伊サキも同様だった。
姿も見えないゴミどもからは一方的にその名と姿を知られた彼女は、当時闇を知った姫巫女として淫魔に手を貸すゴミどもにつけ狙われることになったのだ。
そんな現状に嫌気が差し、彼女は組織を抜けて野良となったらしい。
「組織に入ってないだけで、野良の姫巫女なんてそれなりにいるからね~。それで? ホクトくんは何が聞きたいの?」
「なに、居場所をなくした者の先達として、色々と教えてもらおうと思ってな。不幸にも、表での姿で神剣アンリって姫巫女に目をつけれちまったんだ。そんで情報漏洩の可能性も考慮して、『北畑田ホクト』って人間を淫魔に襲われて死んだことしてきたんだよ」
俺自身のやらかしでこうなってしまったことは事実だが、それでも戸籍やらなにやらと失うものは大きい。
仕方ないことではあるが、そんなやるせないという内心を「やれやれだぜ」とため息とともに吐露する。
だがしかし、色んな追手から逃れてきた彼女に聞けば、衣食住を何とかする方法があるかもしれない。
そう考えて、こうして接触を試みたわけである。
「でだ。こうなると戸籍も使えないだろうし、今後のことを踏まえて、慣れてそうな来伊に相談を――」
「――は? ホクトくんが、死んだことに……? それでホクトくんが、戸籍をなくした……?」
「……あの、来伊さん?」
様子のおかしい彼女の名を恐る恐る呼んでみるが、どうやら聞こえていないらしい。
これじゃあ話が進みそうにないため、一度彼女に近づき、その肩に手を置いて揺すってみることにした。
「おーい、来伊……? 大丈夫か?」
「ああ、うん……ごめんねホクトくん。とりあえず、そいつ殺せばいい?」
「絶対ダメだからな!?」
本当にこいつ大丈夫だろうか。
早々に不安に駆られる俺なのであった。
面白い、続きが気になるという方は是非応援よろしくお願いします。
新キャラクターの来伊サキちゃんです。