どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
「ほむほむ……とりあえず、ホクトくんの経緯はだいたい把握したよ」
血で穢れたあのゴミの地下室で話をするのも気分が悪いため、俺と來伊は二人揃ってビルを出ると、東京ツリーの天辺へとやって来ていた。
展望台よりも更に上。普段は整備などの関係者しか入れない場所で、しかも日の出が近いとはいえまだ夜中だ。
人もおらず、話をするにはちょうどいいと、俺は死を偽装した経緯を來伊に説明した。
だって話さなきゃこいつ、そのまま神剣アンリを殺しに行きそうな雰囲気だったし……そこに至る詳細を話せば、少しは冷静になるだろうと思ってのことだ。
「じゃ、私そいつ殺してくるね」
「待てやこの馬鹿猫が」
まぁそんな俺の気遣いも無駄だったわけだが。
笑顔でそんなことを言って立ち上がる馬鹿の手を掴み、そのまま手を引いて座らせる。
彼女はかわいらしく「むぅ」と頬を膨らませると、子供のように掴まれた手をブンブンと上下に振った。
「放してホクトくん! じゃなきゃそいつら殺せない……!」
「会うたびに言ってるだろ。姫巫女は淫魔を殺すために必要な存在だって。無暗に殺そうとすんじゃねぇ」
それにだ、と俺は続ける。
「そのつもりなら、さっさと振りほどいて抜け出してるだろ。身体能力者どうやっても姫巫女のお前が上だし、猫に変化して抜け出すこともできる。無駄に俺の気を遣わせるんじゃねぇよ」
「ふふふ~、ホクトくんとじゃれ合えるならそっちの方がいいも~ん。それに私、ホクトくんの言うことなら何でも聞いてあげたくなっちゃうしぃ?」
掴んでいたはずの手が、いつの間にか指を絡ませるような形に握られている。
それをやった犯人にジト目を向けながら手を放そうと思ったのだが、相手にそのつもりがないのかガッチリしっかり握りしめられて抜けられそうにない。
しまいにはニギニギと楽しそうに笑みを浮かべる來伊を見て、「【跳べ】」と瞬間移動で後方へと抜け出した。
「あんっ、も~……ホクトくんのいけず」
「殺しに行くつもりがないなら、それでいい。敵はあくまでも淫魔と、その淫魔に手を貸すゴミどもだからな」
俺の言葉に、「わかってますよぉ~」とどこか残念そうに來伊が頷く。
そうしてようやく、俺の今後についての相談ができると思ったのだが、「でもねホクトくん」と彼女が続けた。
「殺しはしなくても、その姫巫女たちに怒ってるのは本当だよ。帰る家があったのに、その子たちのせいで帰れなくなったのは本当なんだからさ」
三回目でしょ、と彼女はこちらを見ず、白み始めた空を見上げた。
思わず、目を見開く。
「……何で知ってる」
「やだなぁ~、ご主人様……違った、ホクトくんのことは何でも知りたくなっちゃうだけだよぉ? 元々は機関所属の姫巫女だし、詳細を調べようと思ったら名前さえあれば十分で……あ、でもでも! ホクトくんのことは、誰にも言ってないから安心してね!? データに頼らずアナログで調べたし、跡がつかないようにもしてきたからね!」
「わざわざ『契約』までしたんだ。そこについては疑ってねぇよ」
慌てて取り繕うように言う彼女だが、その辺のことは信用しているし、俺自身その信用に当たるものを目にしているため何も言わない。
というのも、だ。
この來伊サキという女は、競売場で俺が助けたあの日の後、表で『北畑田ホクト』として生きていた俺に自ら接触してきたのだ。
俺だとバラした覚えも、証拠を残すようなこともなかったにもかかわらず、だ。本人には「帰巣本能にゃ」と訳の分からないことを言ってはぐらかされたことを未だに覚えている。
で、大事なのはここから。
俺に接触してきたあの日、彼女は魔法使いとしての俺をある場所へと連れて行ったのだ。
さすがに正体を知るこいつを野放しにしたらまずいと、いざとなったら逃げ切る自信もあったため、監視のつもりで付いて行った。
そしてたどり着いたのが、姫巫女の隠れ里だった。
姫巫女というのは、何も全員が政府の機関に所属しているわけではない。
というのも、姫巫女の存在そのものは遥か昔から存在しているのだ。当然、政府などの組織に所属しない野良の姫巫女だっている。
來伊が俺を連れて行ったのは、そうした野良の姫巫女の隠れ里だ。
そこで『契約』の異能を持つ姫巫女を介して、彼女と契約を結んだのだ。
まぁ、俺に優位すぎる一方的な契約だったが。
なんだよ、俺のことを周囲にバラしたら死ぬって。怖ぇよ、一回助けただけなのに何がお前をそこまでさせるんだよ。
閑話休題
まぁそんなわけで。組織すらも勝手に抜けて追われる身となった彼女を、俺はそこまで疑ってはいないのである。
しかし……そうか。
俺の過去も、ある程度知ってて怒ってくれてたか。
「……勝手に調べられたことは癪だが、まあいい」
はぁ、とため息を吐く。
「ありがとな、來伊。お前のその怒りに、ちょっとだけ救われるよ」
「結婚したいって!? いつでもいいよご主人様!!」
「言ってねぇしご主人様でもねぇよ!?」
キス顔で飛び込んできた來伊を躱した。
真面目に礼を言ったらこれとは、もう少しでもシリアスが続いてくれないものか。これではシリアルである。
ケ〇ッグは好きです。
「ああもう、話が進まねぇな! とにかく、一回目は淫魔で、二回目はゴミどもが原因だから別だし、今回は万が一を想定した俺の選択なんだよ。はい、この話終わり!」
「にゃ~ん~……でも、対淫魔機関の運営体制に問題があることは事実だよ? 上はもちろん、機関の姫巫女だって記憶処理があるからって杜撰なところも多いし。今回も件だって、そうした認識と責任の甘さに決まってるよ~?」
「古巣に対してえらい言い様だな……いや、わかるけどな」
上にはともかく、元同僚や上司に対してもボロクソに言ってる來伊。
だが言いたいことはわかるし、姫巫女たちの脳筋っぷりや考え無しな点については思うところがある。
しかしこのまま続けても、俺と來伊での愚痴大会にしかなりそうにないため話を切り上げることにした。
もう朝日だって昇り始めている。
「とりあえず、本題に戻すぞ。現状、俺は戸籍がないも同然。部屋も借りられないし、アルバイトもできねぇんだ。何とかできる伝手とか知ってたりしないか?」
「……なるほどなるほど。それなら万事、この私に任せて! ホクトくんに不自由はさせないから!」
「おお! それは何とも心強い! 是非頼む」
ドン、と自信満々に胸を叩いた來伊の姿は、それはもう頼り甲斐しかなかった。
きっと何か裏事情があって表に出られない者たちが集まっているところなり、コミュニティなどがあるのだろう。
そういうのは、少しだけではあるがワクワクする。
仮に人類にとって害悪にしかならない悪い奴らが集まっているのなら、全員殺して乗っ取ればいい。
姿を隠し、遠距離からの一方的な暗殺。それこそ、俺の空間魔法の独壇場ってやつだ。
勝ったな、風呂入ってくる!
◇
「というわけで、今日からホクトくんが住むことになる私のお家でーす! 愛の巣ってやつだね!」
「そんなことだろうと思ったよチクショウめ!!」