どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
さて、助けに入ってみたはいいものの……なにがどうして、この状況になっているのだろうか。
チラと背後を振り返ってみれば、そこにいるのは十歳にも満たないだろう少女が一人。それも大きめのボロ布一枚を貫頭衣のように着ている少女である。
この時点で普通じゃない。服を着なさいよ服を。
もし親がまともな服さえ与えていないのであれば、速攻で警察案件である。明らか不審者である俺が介入するべき案件ではないだろう。
というか、俺が捕まってしまう。
……とまぁ、あくまでもこれはこの少女が一般家庭に暮らしている、裏も知らないごくごく普通の少女であればの話だ。
先ほどの、俺がクッションに変えた男の発言からして、どう考えても裏の関係者である。それも姫巫女とは別……つまり、裏切者のゴミどもに追われている身か。
状況から察するに、どこからか逃げ出してきたと考えるのが妥当だろう。
うむ、大いにあり得る。
なんだったら研究対象、あるいは研究成果がこの子という可能性もある。
だってこの世界、凌辱エロゲが元だもんな! それくらいのこと、やるかやらないかで言えば平然とやるに決まってらぁ!
「だ、だれ……?」
「俺が誰か、か。とりあえず、ゴミ掃除の特異な魔法使いのお兄さんってことでよろしく頼むよ。
「め、めいじ……さん?」
「そー! メイジさんだ。安心しな、別に俺は君をそうこうするつもりで来たわけじゃない。ただ変な奴らに追っかけられてるもんだから、心配になって様子を見に来ただけさ。なにか事情がありそうな気するが……残念なことに、お兄さんは君の事なんてまったく知らないんだなこれが!」
カカカ! と少女の前で腕を組み、天を仰ぐように大笑して見せる。
これくらいオーバーにリアクションしてみせた方が、見た目の怪しさは薄れてくれるかもしれない。
本当は顔を見せるのが一番なんだろうが……それは無理だから仕方ないだろう。
少女……汚れてくすんでいるが、淡い紫の髪の隙間から覗く瞳に、僅かながらに安堵の色が垣間見える。
ひとまずではあるが、俺が彼女を追っかけている勢力とは別の存在だと認識してもらうことはできただろう。
「んじゃまぁ、お嬢さんは俺と一緒にこの場を離れて――」
「……っておいコラ待てや! なに勝手に話進めとんねん!? そのガキは俺らが先に見つけてんぞ!?」
「せや! どこの誰かは知らんけど、さっさとそこ退けぇ! 痛い目ぇ見ても知らんぞ!」
カチャカチャ、と背後からの音に視線だけ振り返った。
構えられたのは真っ黒な鉄筒……つまるところ拳銃である。
探知した時から持っていることを知っていたが、こうも躊躇なく構えるものかね。
……構えるよなぁ! こんな世界なんだから!
「おいおい、あんたら。そりゃいささか物騒じゃねぇの? こちと人類のために働く善良な魔法使いさんだぜ?」
「抜かせやアホ。未だに兄貴を下敷きにしとる奴が言うことやないやろが! こっちの仕事も邪魔してくれ追手からに……!!」
「ええからそのガキ寄こせや! やないと撃つぞ!?」
ほーん、と足元に視線を落とす。
すでに意識を手放しているのだろう。俺が上に乗ったままあれこれやってるというのに、クッションとなった男は小さくうめく程度の反応しか返さない。
試しにと男の胴に乗っかっていた足に力を込めてみてもそれは変わらず。カスの鳴き声による演奏会くらいしかできなさそうだ。
「テ、テメェ! いい加減に――」
「【別て】」
叫び、引き金に当てた指に力を込めようとした男たち。
しかし、彼らが引き金を引くよりも先に発動した俺の魔法は問答無用に、音もなく彼らの拳銃、その銃身の半ばから先を別った。
ガチャガチャと、地に落ちた部品が音をたてる中、その異常に気付いた男たちが「……は?」と間抜けな音を零す。
「じゅ、銃が……」
「なんや……今お前、なにしおったんや……!?」
「いやはや、悪いことしてるからお天道様からの罰でも下ったのかねぇ? 夜だけど」
ケラケラと笑いなら彼ら二人に歩み寄る。
動揺を見せる二人ではあったが、それでも裏世界の人間。そこらの不良のようにただ怯えるだけではなく、すぐさま銃を捨てて懐に手を伸ばすと、手にしたナイフを構えた。
そのナイフもバラす。
「「ひっ……!?」」
さすがにここまですれば、俺が何かしているという確信を持てたのだろう。
一歩寄る度に、彼ら二人の肩が跳ね、その顔には恐怖の色が浮かんでいた。
そんな二人の肩に、ポンと手を乗せ語り掛ける。
「悪いことは言わないから、あそこのクッション連れて帰れよ。なに、命令されて追いかけてただけのあんたらを殺しまではしないさ。これでも、不要な殺人はしない主義でね」
ただそうだな、と俺は近場にあったビールケースを指差す。
怯えた目のまま俺が指差す方を見る二人。
すると、彼らの視線の先にあったビールケースは音もなく粉微塵にバラされ、ゴミとなったパーツが地面に散らばった。
二人の震えがますます激しくなる中、もう一度俺は二人に話しかけた。
「ここのこと、ちょっとでも漏れたら、お前らの頭がああなるかもだ。よろしく」
声も出せないのか、うんうんと激しく首を縦に振る二人は、そのまま気絶している兄貴分の男を埋まった地面から引き抜くと、そのまま駆け足で去って行った。
そんな三人組の後ろ姿を見送り、俺は少女の下へと向かう。
「さて、これで落ち着いて話ができるわけだが……もしよかったら、お嬢さんを姫巫女のところに――」
「っ!? それはいやっ……! だってあの人たちも、私を……」
淫魔側の勢力に狙われているのなら、姫巫女たちに少女を保護してもらうのが一番だろう。
そう思っての提案だったわけだが……どうやら俺が考えていた以上に、少女の状況はややこしいものになっているようだ。
少女の拒絶に「ふむ」と思考を巡らせる。
「なら……うちに来るか? 俺自身、姫巫女の味方のつもりだが、別に姫巫女に全面協力してるわけじゃない。というかむしろ、姫巫女の奴らにも追われてると言っても過言じゃないからな」
「そ、そう……なの?」
「おうよ。まぁ、証拠みたいなものはないから、信じてもらうしかないんだが……」
どうだろうか、と少女に問う。
少女からしてみれば、顔も見えない、正体もわからぬ男の言葉だ。どこまで信じていいか、彼女の中でもわからないはずだ。
それでも信じてもらえるのなら、俺は彼女を助けよう。
(なんでかねぇ……この子。どうも似てるんだよなぁ)
だから助けたくなった、みたいな。
記憶の片隅に残る姿がチラついてしかたない。関係ないのかもしれないが、俺個人の恩返し……のような気持ちだ。
「……わかった。私、あなたを信じるわ」
「……自分で言うのもなんだが、いいのか?」
「助けてくれたのは本当だもの」
それに、と彼女が続ける。
「それに……?」
「……もう、お腹が空いて死にそうなの」
「よーし! ならお兄さんが飯食わせてやろう!」
なら行こうか! と空腹で目を回し始めた少女を担ぎ、その場から離脱。
大阪では少女を探す目がまだあるだろうと、近くの地方都市へ赴き、とりあえず少女の服とご飯を買うことにするのだった。