どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~   作:岳鳥翁

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17話

「まあそういうわけで、大阪の方に行った際この娘を保護したわけだ。住まわせてもらってる立場でなんだが、目処が立つまでは俺が面倒を――」

 

「ホ、ホクトくんの……隠し子ってコト!?」

 

「話聞けよ猫娘」

 

 わざとらしく驚いてみせる來伊の頭に、俺は呆れながら軽くチョップを落とす。

 肉体強度的には俺よりも遥か高みにいるはずだが、來伊は「えーん、ホクトくんがぶったにゃぁ〜」と泣き真似をしながらその場に崩れ落ちた。

 

「撫でてくれたら治るかも?」

 

「なんか言ってらぁ……それより、この子の保護については問題ないか? 淫魔と手を組んでる奴らもそうなんだが、関西の姫巫女にも追われてるみたいでな」

 

 猫のように足元に擦り寄ってくる來伊を無視して話を続ける。

 すると來伊はヌラリと体をくねらせ、俺の背後に隠れて様子を見ていた少女の前に移動。

 

 突然近寄られたことで、少女はビクリと肩を跳ねさせると、俺の背中にピッタリと顔を埋めて來伊の視線から逃れた。

 

「あ、ずるい! 私もやる~」

 

「やめんかこの馬鹿娘!!」

 

「ニャッ!? ひ、酷い! 真似しただけなのに!」

 

「こんな小さな子の前で、人の股間に顔を埋めようとするお前が悪いわ!?」

 

 先ほどよりも強く……というか、割と本気で來伊の頭に拳を落とす。

 何度でも言うが、人としての強度は圧倒的に姫巫女の方が上であるため、殴った俺の方が痛いのだ。

 

 痛む拳を擦りながら來伊を睨む。

 

 すると、グイとローブの裾が引かれたことに気が付いた。

 見れば、先ほど俺の背後に隠れた少女がこちらを見上げている。

 

「……手、大丈夫なの?」

 

「ん? ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとうな」

 

 心配そうに俺の手へ視線を向けている少女に礼を言い、そっとその頭に手を伸ばす。

 一瞬目を伏せて体を強張らせた少女だったが、できるだけ優しくその淡い紫の髪を撫でているうちに落ち着いたらしい。

 最後の方は気持ちよさそうに目を細め、若干ながら俺の手に頭を押し付けてくるようになっていた。

 

 なんだこの可愛い生物は。

 ほれほれ、撫でるのは継続じゃい。

 

「むぅ~……」

 

「猫娘がむくれてらぁ。ほんじゃまぁ、改めて紹介しとくぜお嬢さん」

 

 撫でていた少女の脇に手を入れ、そのままグルリと回転しながら抱き上げる。

 急に持ち上げられたからか、最初は「きゃっ!?」と驚きの声をあげたものの、すぐにその声は「きゃー!」と楽しそうなものへ変化していた。

 

 見た目からして、まだ十歳にも満たない少女だ。

 暗い顔をして何かに怯えたり、不安そうに周りを見ているよりも、こうしてはしゃいでいた方が余程世界にとって有益だろう。

 

「目の前でほっぺた膨らませてる青いお姉さんがいるだろ? こいつは來伊。姫巫女だけど、どこにも所属してない野良猫だから安心してくれ」

 

「……私のこと、捕まえないの?」

 

「にゃ~。そんなことするくらいなら、ホクトくんを捕まえたいしぃ。……むむ? なーんか誰かに似てるような……?」

 

 何か気になったのか、來伊は少女の顔をじっと見る。

 だがすぐに見飽きたのか、「たぶん気のせいにゃ~」と、今度は俺の方へと距離を詰めてくる。

 そんな彼女の顔面へため息とともに手を置き、これ以上こちらへ近寄れないようにせき止めながら、俺は少女に視線を移した。

 

「とまぁ、こんな馬鹿なことを言う奴だが、現状だと俺が一番頼れる上に意外と面倒見もいい奴だ。何かあったらこいつも頼るといい」

 

「え……や、やだホクトくんったらぁ~。急にそんな褒めないでよね! 濡れ……照れるじゃんかぁ~! しょうがないにゃ~、管理人には事情を共有して許可貰っておくよ」

 

 おんなじ野良だから安心してね、と少女と視線を合わせるために屈んだ來伊。

 俺からの紹介もあってか、最初ほど緊張はしなくなったらしい。相変わらず俺の背後に体を隠してはいたが、少しだけ顔を覗かせた少女は「うん」と最後には返事を返していた。

 

「で、だ。いつまでもお嬢さん呼びだと寂しいだろ? 名前、聞かせてもらってもいいかな?」

 

 來伊と同じように俺も屈んで少女に視線を合わせると、少女は戸惑ったように何かを言い淀み、やがておそるおそる口を開く。

 

「名前は……ない、けど……KC-〇一(ケーシー-ゼロワン)って呼ばれてたわ」

 

「……そうか。なら、呼ばれたい名前はあるか? せっかくこうして逃げ出せたんだ、好きな名前を名乗ろうじゃねぇか!」

 

「……じゃあ、つけてほしい。あなたに、名前」

 

 少女が手を伸ばし、俺のローブをギュッと掴んだ。

 僅かながらに震えているのは、断れるかもしれないとでも思っているからか?

 であれば、心外である。

 

「おう! なら、とびっきりいいのを考えないとだな!」

 

「っ! うん!」

 

「ホクトく~ん。今管理人の子に許可貰ったから、ひとまずは問題ないよぉ~」

 

 俺と少女が話している間に、來伊も用事を済ませてくれたらしい。

 今度管理人の野良姫巫女にお礼でも言いに行こうかと思ったのだが、それを來伊に話したら全力で拒否された。

 

 なぜ? とその理由を問おうとしたのだが、ちょうどその時「ふわぁ~……」と間延びしたかわいらしい小さな声が俺たちの耳に届いた。

 見れば少女が恥ずかしそうに口を押さえて固まっている。

 

「……ま、昨日は大変だったもんな。もう朝ではあるが、許可ももらってるし寝た方がいいだろう。なに、名前は起きてから考えようか」

 

「……わかったわ。楽しみにしてる」

 

「ああ、頑張って考えるさ。それと部屋なんだが、どの部屋がいいかとかあるか? 一人部屋でも問題はないが、個人的には女の子同士だし來伊と一緒の部屋がいいと思うんだが――」

 

「……私、あなたと一緒の部屋がいいわ」

 

 まだまだ部屋に空きはあるらしいので、少女の好きな部屋に住んでもらおうかと思っていたし、そうでなくても一人が心細いのなら來伊に頼もうかと考えていた。

 だがそんな俺の考えに反して、少女は俺のローブを掴んでそう言った。

 

 來伊は未だに屈んだまま、口と目を驚愕で見開いていた。

 

「メスを感じる……!! ホクトくん気を付けて!! そいつ立派なメスだよ!?」

 

「こんな小さい子相手に何を言うとるかお前は」

 

◇

 

 結局なぜか來伊の奴がぐずりにぐずり、最終的にはこれまたなぜか少女が応じる形で一人部屋に落ち着いた。

 いろいろあった直後である。心配になって無理はしてないかと尋ねてみたのだが、意外にも少女は平気そうな顔で「ええ」と一言。

 

 それどころか、部屋に入っていく直前には「また後でね、ホクトお兄さん」とあいさつまで返された。

 

 見た目に反してしっかりした子である。

 

「ホクトくん、騙されちゃダメだよ。あんな見た目だけど、あの子はしっかりメスなんだからね!」

 

「まだ言うのかお前は……」

 

「だってだって! あの子私と二人で話してるときになんて言ったと思う!? 『あなたみたいに煩いのは、お兄さんの好みじゃないと思うわよ?』とか言ってんだよ!? そんなことないよね!? 私、ちゃんとホクトくんの好みだよね!?」

 

「子供がそんなこというわけないだろ……」

 

「こーたーえーてーよー!」としがみ付かんとする勢いの來伊を無視し、話題を切り替える。

 内容はもちろん、あの少女の件についてだ。

 

 何かわかったことはあるか? と來伊に尋ねてみるが、彼女は「ぜーんぜん」と首を振って俺から離れる。

 

「一応、野良の子たちにも情報は回してるけど……今のところは成果なしかな。ましてや関西のことなら、余計にわからないにゃ」

 

「関東と関西の姫巫女って、なんで仲悪いんだろうな……淫魔が敵ってところは同じだろうに」

 

「異能重視の関東と、異能に頼らない関西。伝統やら効率やら言い争ってるのは昔からだにゃ~」

 

 やれやれと呆れ気味の來伊に同意する。

 

 ここらへんのいざこざは、遡れば平安ごろからあるらしい。

 なんでも、元々姫巫女は強力な異能の力を持つ一族がまとめていたのだが、そんな彼らのやり方が気に食わなかった姫巫女たち……要するに、弱いと下に見られていた異能を持つ姫巫女が反発。

 

 結果彼女らは、その一族と袂を分かって西へ向かい、そこで己らの集まりを作ったのだ。

 

 そうしてできたのが関西の姫巫女の組織の前身であるため、今でも関東側の姫巫女たちとは仲が悪いのだとか。

 

 ……ゲームの設定かな? しょ~もね~……喧嘩するくらいなら淫魔倒すか裏切者のゴミ掃除でもしてくれよ。

 

「……で? ホクトくんはいつまで顔を隠してるのかな?」

 

「おん? いつまでって……そりゃ安全が確保されたらだけど?」

 

 当たり前だろ、とこちらを見てくる來伊に返した。

 

 というのも、昨晩少女を助けてから今の今まで、ずっとフードは被りっぱなしである。空間魔法もそのままであるため、きっと少女はフードの下からこちらを見上げても顔を視認できなかっただろう。

 

 ただただ、歪んだ空間が見えていただけに違いない。

 

「警戒してるなら、連れてくる必要なかったんじゃない?」

 

「あの状況で助けねぇ選択肢なんてねぇし、行く当てもなさそうな子供を『じゃあさよなら』ってその場に放置するほど冷たくもねぇよ」

 

 だがな、と俺は続ける。

 

「だからと言って、線引きはいる。あの子自身は俺のことを信じてくれているのかもしれないし、実際俺もあの子のことは信じたい。が、その周りが信じられるかは別問題だ。自覚がないだけで、あの子の目にカメラでも付いてるかもしれん」

 

「あ~、関西ならそんな技術持っててもおかしくないかも? でもそれなら、私が名前で呼んでるのはまずかったんじゃ?」

 

「北畑田ホクトは戸籍上死んでんだ。名前から探すなら生きてる別の『ホクトくん』だし、見つけたところであの子はいねぇよ」

 

 だが顔はだめだ、と強めに告げる。

 せっかく死亡偽装までしたというのに、顔がバレてしまえばあの行動がすべて水の泡に帰す。

 整形という手段も、政府の情報網と姫巫女の異能を前にどれだけ効果があるかわからない。

 

 というわけで、結局隠しておくのが一番の対策なのだ。

 

「でもいつまでもそうはできないでしょ。まぁでも? ホクトくんに信頼されてるって思えば、悪くはないかにゃ〜」

 

 にゃんにゃん、とこちらへすり寄ろうとしてくる來伊の動きを、をアイアンクローで顔を掴むことで押し留める。

 

「なに、そう長くはねぇだろうよ。いろいろと言ったが、あの子を連れ帰ってきたのは別目的もあるんだ。お前らにも手伝いを頼――おいこら俺の手を舐めるんじゃねぇよ!?」

 

 ベロリンチョ、と顔を掴んでいた手を、まるで銀紙についた生チョコを味わうように舐める來伊を地面に叩きつけた。

 

 まぁいい。

 來伊のせいで空気が緩んでしまったが……やることは変わりない。

 

「奴らからしたら、貴重な研究成果だろうに。取り返さないとダメだよなぁ?」

 

 そしてそこを狩る。

 全員まとめて、研究を主導した奴らも、企業も含めて。

 

 全部まとめて、ゴミ掃除だ。




リアル生活ががらりと変わったため、不定期更新になります。
ごめんちょ
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