どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
「例の研究個体、この辺りにいるって本当か?」
「ああ、体内に仕込んでた装置の反応がこの辺りにあったってよ。持ってった怪しい男とやらを殺して、さっさと回収して帰ろうぜ」
草木も眠る丑三つ時。
とある地方の山中にて、闇に紛れ、真夜中の森を突き進む人影の集団があった。
銃火器などで武装した凡そ五十人ほどの男たち。
彼らは皆、とある企業に所属する戦闘のプロ集団……企業所属の傭兵、と言えばわかりやすいだろう。
ホクトの知る現代日本であれば考えられないことではあるが、この世界は淫魔などという異形の存在によって危険度が格段に増した世界だ。
一般には知られずとも、そういった存在を知る層の者たちは自己の身を守るために個人で戦力を持つ者も多い。
存在を知っていると淫魔に狙われやすくなる、という事実があるためだった。
姫巫女という対淫魔のスペシャリストがいても、常に彼女らが守ってくれるわけではないし、その姫巫女だって絶対ではなく淫魔にヤられることもある。
そんな事情もあるため、政府機関も個人で戦力を持つことについては黙認しているのだ。
ホクトからしてみればガバガバのガバであるため、文句の一つも言いたくなるだろう。
そして今森を進む彼らもまた、そんな一企業のトップが己の身を守るために集め育てた武装集団……だったのだが、その企業のトップが『色々』あって事故死し、後を継いだ者が淫魔とたまたま関りを持っていたことで、今では立派な淫魔の駒である。
いや、『元』人間というのが正しいか。
人に淫魔の因子を埋め込み、人外の力を宿す技術。これにより彼らは淫魔のような不死性(姫巫女の力以外に対する不死性)こそないものの、人を大きく超える力を手に入れた強化人間となったのだ。
閑話休題
さて、そんな彼ら―とある生理学研究の企業に所属する戦闘部隊『
本来であればその研究所の仕事なのだが、残念なことに関西の姫巫女たちによって壊滅。
うまく彼らとの繋がる証拠を消して逃れた彼らの企業が、その研究を引き継ぐことになったのだ。
その最初の仕事が、研究個体の回収である。
「ケッ、あいつらトチりやがって……こっちはいい迷惑だぜ」
「まあそう言うなって。ガキを回収して男の方は殺す。それだけでボーナス弾んでくれるんだ、いい話だろうよ」
「どうせなら男じゃなくて、女の方が良かったけどな。楽しんでから殺せる方が得だろう? 姫巫女ならなおよしだな!」
「間違いねぇ。あいつら体は一級品だからな。前の奴は最高だったぜ」
「全員で
一応隠密行動中であるからか、彼らは皆お互いの顔を見合わせると、クスクスと肩を揺らして小さく笑みを浮かべたり、ナニかを思い出して頬を緩める者もいた。
事実彼らが言う通り、『
まぁその内容は、強化人間となった彼らの戦闘能力を測るため、淫魔の調査任務でやってきた姫巫女を嵌めたものであるが。
俗にいう『騙して悪いが』というやつだ。
さて、そんな聞く者によっては顔を顰めるような話に下衆の花を咲かせる彼らであったが、戦闘を歩いていた者がピタリと立ち止まって身を屈めた。
それに合わせて他の者たちも同じように屈み、草木に身を隠す。
彼らの視線の先。
ちょうど木々が生えていないギャップであるためか、月明かりが差し込むその場所に。
山中には似合わないだろうアパートがそこにはあった。
二階建ての、きわめて普通の集合住宅。
だからこそ、その場違い感に彼らは思わずお互いに顔を見合わせた。
「……おい、本当にここなのか? 俺たち化かされてねぇか?」
集団の中の一人が声をあげるが、それを茶化すような者はいなかった。
なにせ彼ら全員が、彼と同じことを考えたのだから。
「いや、間違いない。ここで合ってる。見ろ」
だが先頭の男はこれを否定し、手元の画面を彼らに見せる。
研究個体に埋め込まれたチップ。その在り処を示す画面上の赤い光の点滅は、間違いなく前方の建物からの反応を示していた。
「いいか、まずは建物を囲む。反応があるのは二階の真ん中の部屋で、動きがないことから寝てる可能性が高い。例の男もどこかの部屋にいるはずだ。各員は目標の研究個体の部屋以外に毒ガスを注入し、制圧を――」
「その必要はない」
「――は?」
瞬間、音もなく。
指示を出していた男の四肢が切り離されていた。
脚が半ばからなくなったことでバランスを崩し、首の繋がっただけの胴がドサリと音をたてて地に落ちる。
そこで初めて、男は自身が倒れたことに気付き、同時に四肢の切り口から血が噴き出し始めた。
「な……に……?」
「数人残せばいいか」
いつの間にかその場に立っていた黒いローブを身に纏った男の姿を見て、残りの『
約五十名からの一斉射撃。
それも至近距離からの弾丸の雨霰だ。
絶え間のないマズルフラッシュが、薄暗い森の中を明るく照らし出すほどの光を灯す。
避けられるはずもない。
事実、その男は避けなかった。
避ける必要もなかったからだ。
「【阻め】」
男が何かを呟く。
たったそれだけで、命を絶たんと放たれた『
十数秒にも及ぶであろう時間は、たとえ強靭な肉体を持つであろう姫巫女でも耐えがたいものであるはずだ。
淫魔さえ、すぐに再生して死ぬことは無いにせよ、体中に穴をあけて足止めするくらいのことはできるはずだ。
だというのに
「バ、バケモノか……!?」
「失礼な。てめぇらの方が人類にとっての
黒ローブの男は一片の傷も負うことなく、まるで何事もなかったかのように平然とそこに立っていた。
フードに覆われた見えない顔が、余計に彼の得体の知れなさを際立たせている。
「く……!? 止むを得ん! 撤た――」
「【別て】。させる訳ねぇだろ」
再び、音もなく。
そして今度は、全員の両の腕と脚が分断される。
瞬く間に、約五十のダルマが出来上がった。
「き、貴様……! どこの手の者だ!? その力、我々と同じ強化人間だな!?」
「は? ちげーし、お前らと同じとかクソくらえだゴミが」
死んどけゴミが、と。
その一言とともに、黒ローブの男に――ホクトに叫んだ男の体は、みじん切りされたようにその体が崩れてしまった。
ビチャビチャッ、と斬っても意味がない血が周囲にまき散らされる。
「しっかし、両手両足切り落としても悲鳴すらあげねぇか……おまけに、こんな短時間で止血まで始まってやがる」
これが淫魔の技術ってやつか、と。
近くに倒れていた『
強化人間たる彼らは、軽い傷であればすぐに再生できるうえに、切断されたとしても、切り離された部位を癒着させれば時間経過で元通りくっつけることが可能だ。
だがそれでも。
あれだけバラされれば、間違いなく死ぬ。
強化人間となったことで程遠くなっていた『死』
それが今、目の前にあった。
明らかに目の色が変わった彼らの姿に、ホクトはフードの中で笑みを浮かべる。
「んじゃまぁ……解体されたくなけりゃ、俺と正直にお話してくれるな?」
まぁもちろん、最後には皆殺しだが。
そんな本音は隠したまま、真夜中の尋問がスタートするのだった。