どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
「……にゃ!
「ああ、あそこか……きな臭いって話は聞いてたけど、事実だったわけだね」
ホクトが『
己が住むアパートから離れた都市部にて待機していた來伊は、予備として持っていた携帯端末へ届いたメッセージに目を通すと、そこへ記されていた目標地点を読みあげた。
その声に彼女と同じように周囲で待機していた者たちも腰を上げ、「んじゃ行くか」と笑みを浮かべる。
「待ちくたびれたな。ようやく、あの方のお役に立てるってもんだ」
「助けられてからというもの、機関を辞めたってのにまったく会えなくなっちまったからねぇ。そういう意味じゃ、來伊ちゃんが羨ましいよ」
「そうそう。『
「にゃはは……たまたま、たまたまだよぉ~。運が良かっただけにゃ~」
周囲の声に來伊は苦笑を浮かべて誤魔化しつつ、ぐるりと集った者たちの顔を見る。
数にして三〇人。そのすべてが姫巫女……いや、野良の姫巫女であった。
(いやぁ~、ホクトくん……違った、
異能という超常の力を操り、身体能力も人外のそれと同等。
そんな存在がこれだけ集まれば、できないことの方が少ないかもしれない。來伊自身が機関に所属していた時も、あるいは野良になった後でも、これだけの数を動員した作戦は経験がなかった。
これもホクト……機関所属時、彼女らを助けた魔法使いの名があればこそだろう。
野良となった彼女らは、普段は個々人で依頼を受ける謂わば個人事業主のような形で活動している。
そして機関所属ではなくなった分、情報は自身で集めるしかないのだが、これらの情報は同じように野良となった姫巫女たちと関係を持つことでカバーしているのだ。
そんな情報網を使って、今回は來伊が他の野良姫巫女たちに声をかけた。
『私たちを助けてくれた魔法使いさんからの依頼があるんだけど、どう?』と。
結果、これだけの人数が集まった。
急遽の連絡だったこと、そして当日中の集合だったこともあってこの人数だが、もしも翌日の集合であったのなら、一〇〇人近い数が集まっていただろう。
今日集まった中には、個人で受けていた依頼をぶっちしてきた者もいるほどだ。
「たまたまってんなら、私だってそうだ。この辺での活動が主だったから来れたが、北や南にいる奴らはどうやっても今夜中の集合は無理だしな」
「連絡網のチャット欄、とんでもなく荒れてたもんねぇ……來伊ちゃん、刺されないように気を付けなよ?」
「にゃ~」
己らは作戦に参加できたという余裕があるからだろう。
今作戦のまとめ役兼、件の魔法使いと彼女らの橋渡しである來伊を気遣う程度の優しさをみせてくれている。
その魔法使い、隣の部屋に住んでますなんて言えばどうなるのか……と、その未来を想像した來伊はブルリと肩を震わせた。
(そういう意味じゃ、管理人ちゃんも遠出してくれてて助かったかなぁ)
自分たちが住む山中のアパートの管理人である野良姫巫女には、隣に誰かが住んでいることは伝えてはいるのだが、それがホクトであることは伏せている。
だがしかし、彼女には今回の作戦の発端となった少女を保護するため、アパートに住まわせる許可を貰っているのだ。
彼女がいれば、この場で下手にツッコまれることがあったかもしれない。
そう内心で安堵のため息を吐いた來伊は、意識を切り替えるために己の体を異能――【猫変化】を使用し、手足を猫のものに、そして猫耳と尻尾を生やした獣人形態へと移行させた。
その場にいる野良姫巫女たちに呼びかける。
「さて、せっかくの
『了解!!』
來伊の合図とともに一斉に駆け出す野良姫巫女。
向かうのは中部地方の、とある大都市の郊外に研究所持つ企業だった。
半数は研究所へ。そして残りの半数は、都市部の本社へと向かうことになっている。
「そういえば來伊ちゃん? あなたが
「え……? まぁ、そりゃそうなるけど……」
「うふふ……なら、一番成果をあげた子がそれを貰うってどうかしら?
どうかしら? と問いかえる一人の野良姫巫女の言葉。
しかし、それを聞いていた周囲の野良姫巫女たちの目は、マジな眼光で來伊にその視線を向けていた。
「……も、元が私のってところが許せるなら?」
「うふふ……言質、取ったわよ? よーし、殺すぞぉ~!」
『殺すぞー!!』
途端やる気と殺意を増す野良姫巫女たち。
そんな彼女らの藩王を見た來伊は、絶対にお隣さん同士でホクトと住んでいることは言わないようにしようと心に決めた。
そんなこんながあり、一夜が明けた朝。
世間には、一企業の経営陣が全員不審死を遂げたこと。
そして関連の研究所がすべて全焼し、職員研究員そのすべても巻き込まれて死亡したことが朝のニュースとして報じられることとなった。
関係のない一般市民からすれば、「ふーん、そんなことがあったのか」とニュースを見たその時だけ気にしたくらいの出来事。
だがしかし、その一報を二つの勢力は無視できなかった。
一つは、淫魔王を中心とする最上位淫魔たちが集まる『
姫巫女の組織である対淫魔機関が動きを見せていなかった中、企業に潜り込ませていた最上位淫魔の一人が数の暴力によって討伐された。
このことから対淫魔機関で、姫巫女を対規模運用可能な組織があると判断した。
そして対淫魔機関においても同様に。
今まで個人、あるいは少人数で細々と動いていたはずの野良の姫巫女が組織立った動きを見せたことにより、対淫魔機関とは別に組織を立ち上げようとしているのでは? という憶測が上層部で飛び交うこととなった。
そして調査の結果、作戦に参加していたのが元機関所属の姫巫女たちであり、そのすべてがとある人物によって助けられた者であることが判明。
これらの情報から、対淫魔機関はあの『
「なにそれ、知らん。怖ぁ……」
後日、來伊から借りていたスマホがジップロックへとしまわれる合間に、それらの事情を聞かされたホクトの反応である。