どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:岳鳥翁
なんか勝手に、俺が組織を立ち上げたことになっている件について。
……いや本当に、何でそうなったの?
「なぜそうなる?」
「真面目に答えるのと、不真面目に答えるの。どっちがいい?」
「前者からで頼む」
いそいそと俺に貸してくれていたスマホをジップロックにしまう來伊は、「仕方ないにゃぁ~」と手を止める。
「まあ当然だよねって言うべきかなぁ……今回の件、ホクトくんが私たちを頼ったのがすべての元凶って話だよ」
「仕方ないだろ……今回の件、一晩中に俺一人で片付けるには無理があったんだ。近日中には何かしらのアクションがあるとは思ってたが、正確にはわからなかったしな」
そりゃ、できるのなら俺一人ですべてどうにかしたいのが本音だった。
が、しかしだ。
俺の魔法……空間魔法は汎用性が高いとはいえ、それでもできることに制限はある。
探知なんかは諸にそれだな。
範囲内の形状に基づいた捜索はできても、どこまでの人間、そして企業が関係者なのかは俺個人が地道に時間をかけて調べる必要がある。
一目でわかるわけじゃないからね。
今回のような時間も猶予もない場合じゃ不向きなうえに、派手に動いて一気に片をつけようにも、何も知らない無関係な者を誤って殺してしまいかねない。
さらに関係者が俺の予想以上に多かった場合、派手に動いたぶん逃がして根本までの徹底掃除ができなくなる可能性もある。
だからといってこっそりやるのも、それはそれで時間がかかりすぎるわけだ。
どうしたものか、と。
そこで思いついたのが、來伊たち野良の姫巫女への依頼である。
彼女らは機関に所属しない、いわばフリーの姫巫女。
個人で企業などの依頼を受けているとも聞くし、俺個人からの依頼だって受けてくれるはずだ。
おまけに機関に所属しない分、彼女らは自ら情報収集をする必要があるのだが、個人で集められる範囲をカバーするため、野良同士で繋がっているという話を來伊から聞いていた。
そんなわけで、來伊を通じて野良の姫巫女たちに集まってもらったのだ。
皆機関を抜けてもなお、個人で姫巫女を続けている猛者揃い。身体能力だけではなく、きっと異能だって俺の空間魔法に並ぶ有能なものもあるだろう。
この二年間での活動で、殺すついでに運よく手に入っていた金があったため、十人くらいの依頼料にはなるだろうと思っていた。
三〇人も集まるとは思わないじゃん……
「時間あったら一〇〇人くらいは集まったよ?」
「破産するっつーの。つっても、今回の三〇人は何故か報酬を辞退されたわけだが……」
やっぱゴミどもの汚い金は受け取りたくねぇよなぁ……俺だって表での生活じゃ死んでも使いたくねぇと思ってたくらいだし。
今回はゴミの金でゴミ掃除ができるぜぇ! と思ってたけど、それを受け取るのは姫巫女なわけで……そりゃ嫌だよな。
「いや、そんなことないと思うけど……お金はお金だし。まぁ、代わりに私のスマホが犠牲になったわけだけど」
「でも無報酬ってわけにもいかないだろ? 野良ならゴミどもと関わってる可能性も低いし、お礼を言いに直接会いに行くくらいは――」
「それはダメ。最悪死ぬよ?(主に搾り取られる的な意味で)」
「死ぬのか俺!?(物理的な意味で)」
ま、まさかそこまで……いや、ゴミの金を受け取りそうになったのだ。当然といえば当然のことだろう。
ううむ……お礼じゃなく、謝罪行脚でもするべきか……? 場合によっては、できるだけ何かお願いを聞くことを検討してもいいかもしれない。
この世界の主人公である神剣アンリが関わってこないなら、特に大きな問題にはならないだろうからな。
「む……? ホクトくん、もっとダメなこと考えてる顔をしてるね?」
「そんなことはないが? 謝罪くらいは必要だろうからな」
「謝罪……? まぁ、うん。それで何で第三の組織扱いされてるのかだけど……姫巫女三〇人なんて大人数が作戦行動とってたら、そりゃそう思われても仕方ないって話だよ」
「そうなのか……?」
俺の問いかけに、そうそうと頷く來伊。
よくよく考えてみれば、この世界がどういうものかはある程度知ってはいても、そのあたりの細かいことまでは詳しいわけじゃない。
そりゃ裏活動の中でそれなりに関わることはあったが……あくまでも標的はゴミであって、姫巫女たちのことは助けた後ほとんど気にしてなかったし。
その後を気にしたのは主人公である神剣アンリと、自ら俺を見つけて凸ってきた來伊くらいなものだ。
で、どういうことなのか話を聞く。
なんでも姫巫女というのは、基本的には単独か二人組での行動が主で、極稀に多くて五人ほどのチームで動くこともあるらしい。
バカかよもっと安全マージンとれよ。
だからガバって言われるんだぞ、俺に。
ここら辺は関東と関西で多少異なるそうだが、それでも十人以上での任務ともなれば、街一つを舞台にして対淫魔機関が陣頭指揮を執るほど大規模なものになるとのこと。
來伊曰く、その規模の任務は十八年前にあった一回くらいなんだとか。
あれか、と脳裏に浮かんだ景色に目を伏せつつ、今回俺の依頼で動いた姫巫女の数を振り返ってみよう。
三〇人である。
時間があれば一〇〇人近くまで増えていたとも聞いている。
……下手な都市一つくらいは落とせそうな規模ではなかろうか。
「まぁ姫巫女って、基本我が強くて協調性ないのが大半だからねぇ」
「野良とはいえ姫巫女のお前が言うのかよ……」
「事実は事実だもん。だから昔の私は罠にかかったわけだし」
こやつ触れづらい話題を息をするように言いやがった。
事実なだけにツッコめないと黙る俺を見た來伊は、「まあでも、総合的にはプラスだったかなぁ」などと言ってこちらにズイと体を寄せ、そのまま俺の肩に頭を乗せようとしてくる。
「アイタッ!?」
その頭を、軽くしばいた。
「馬鹿猫娘が。良かった風に言ってんじゃねぇよ。お前の人生が連中のせいで壊されたことに変わりはないだろ。今プラスになってたとしても、過去のマイナスはなかったことにはならねぇんだ。もっとキレてもいいんだよ。來伊も、他の姫巫女たちも」
もちろん
ずっとマイナスが続くより、今がプラスになっているのならその方がよほどいいことだろう。
だがだからと言って、それで過去のマイナスがプラスマイナスでゼロにはならないはずだ。
人生なんて、足し算引き算で許容できるほど単純なものではないのだから。
騙される奴よりも、悪意を持って騙そうとしてくる奴らのほうがもっと悪い。殺されたって文句は言えねぇし、俺が言わせねぇ。
だから殺すのだ。ゴミは、すべて。
「……ホクトくんのそういうとこ。やっぱ好きかなぁ、私」
ボソリと何かを呟く來伊だったが、小さすぎて聞こえなかった。
猫にしか聞き取れないような声だったのだろう。だって俺は難聴ではないのだから。
「んで、話の続きだが……普段まとまらない姫巫女が対規模な作戦行動をとった。だから組織立った動きと思われて、対淫魔機関とは別組織ができたと思われた。ここまでは良い。いやよくないんだが……それがどうして俺がトップになるんだよ」
「今回協力してくれた子たち、みーんなホクトくんに助けられてる子たちだもん」
「チクショウ!! トップと思われても仕方ねぇ理由が出てきやがった……!!」
つまりあれか、『昔助けたんだから組織に入ってくれるよね?』みたいな感じで構成員を確保、そして組織を作ったと思われたってことか!?
頭脳筋な機関の姫巫女と、秩序も治安も考え方も終わってるゴミがゴロゴロと転がっている国の上層部だ。そんな単純な判断をされてしまってもおかしくないところにまた、この世界が終わっているんじゃないかと思わされてしまう。
「くっ……だとしたら、今回の作戦に参加してくれた野良姫巫女たちには申し訳ねぇな。組織を嫌って野良になったのに、関係ない奴らに勘違いで組織だなんだと言われることになるなんて……」
「あ、私含めて皆、『それでいい、むしろそれがいい』って言質貰ってるから大丈夫だよ?」
「……なんて?」
「ついでに、不真面目な理由の方は『ノリでそうなった』って言っとくね」
「本当になんで?」
訳が分からないよ。
一気に真偽を疑いたくなるような情報を流し込まれたため、思わずこめかみを指で押さえて待ったをかける。
つまりなんだ、どういうことだ……?
「つまりぃ~……皆、身も心もホクトくんに捧げてもいいって思ってるって話」
「訳の分からない方向に話を飛躍させるんじゃねぇよパンクするだろ頭がさぁ!?」
「飛躍じゃにゃいんだけどなぁ~」
くそう……來伊の余計な一言でますます訳が分からんことになった。
これはあれだな。一回寝て、改めてどうするかを考えた方がいいかもしれない。
なにせ、昨晩はまた徹夜だったからな!
「というわけで、俺は寝る」
「一緒に寝る? 私も徹夜で殺し回ってたからさ」
「寝わけないだろ猫娘。大人しくお前も寝とけ」
じゃあな、と俺はスマホを返すために訪れていた來伊の部屋を出る。
返すだけのはずが、色々と事情を聞いていたためすっかり陽も登ってしまっていたらしい。
良い子はもう起きてる時間だ。
「ま、悪い大人だから俺は寝るんだが。くぁっ……昼過ぎくらいには起きて飯でも――」
「おはよう、ホクトさん。私の名前、考えてくれた?」
自分の部屋に入ろうとした、まさにその時。
まるで俺が戻って来ることを見計らっていたんじゃないかと思わせるタイミングで、隣の部屋の扉が開き、ひょっこりと顔を覗かせた少女が一人。
そうじゃん、名前の件もあったわ。
起きたら考えるって言ってたじゃん、俺。
これで何も考えずに寝たら戦犯がすぎるだろ。
「……とりあえず、部屋上がるか?」
少女は部屋を出て、俺は部屋に入るタイミング。
眠たいということもあり、俺がそう少女に聞くと、彼女は嬉しそうに頷いて俺の部屋へと上がり込んでくるのだった。