どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:誰でも愉快なハメハメハ
「救援班の編成、完了しました!」
「わかった。周辺マップと目標ビルの内部構造データは端末に送信済みだ。突入前には確認しておいてくれ」
「はっ!」
東京郊外の山奥。
まるで世間から隔絶されたやうなその場所に、姫巫女を養成する神巫女学園は存在する。
建前上、神道系のミッションスクールということになっているこの学園だが、その正体は淫魔を討伐する姫巫女の養成学校となっている。
万年人手不足の姫巫女たちにとって、淫魔の餌食とならない実力ある姫巫女の育成は必須。
それゆえに建てられたこの学園の存在で多少は人手不足はマシになったが……それでもまだまだ厳しいのが現状だった。
だからこそ、その人手不足を補うため、学生の中でも一人前と認められた学生に限り、任務を振り分けることがある。
今回の任務もまた、そうして学生に回された任務の一つだった。
内容はとある製薬会社からのもので、夜な夜な会社のビルで残業している社員が行方不明になっている、というもの。
最初こそ警察が行方不明者の捜索に対応したのだが、その捜索途中で淫魔が関わっるであろう痕跡を発見。
これにより、対淫魔機関――通称対魔機関預かりの案件となったのだ。
とはいえ、淫魔の痕跡そのものは微弱なものであったため、この程度の淫魔であれば学生の姫巫女に任せて大丈夫だろうと判断された。
――そして、依頼元である製薬会社の社長に淫魔との関わりがあると発覚したのはつい先ほどのこと。
任務そのものが罠である可能性が高い、と判断された。
「ではこれより、神剣アンリの救援に向かいます!」
「……ああ、君たちの無事も祈る。すまないな」
「いえ……我々より、あなたの方が気が気が無いでしょう。神剣さん」
「馬鹿者、長官と呼べ」
学園の理事長室にて。
救援班のリーダーに選抜された姫巫女の言葉に、彼女は……対淫魔機関長官である神剣カンナはため息交じりに背を向け、窓の外へ視線を向けた。
神剣カンナ。
過去には最強の姫巫女として名を馳せ、現在は対淫魔機関の長官を政府より任じられている女性。
十八年前に起きた淫魔侵攻と呼ばれる大災害を戦い、多くの人々を救った彼女の存在は、姫巫女を引退した今もなお多くの姫巫女たちに語り継がれるほどだ。
そんな彼女であるが、アンリ……娘のことを一人の母として心配しているのだろう。
秘匿されているとはいえ、彼女は一つの機関の長を務める人間。普段は東京中心の政府にて姫巫女たちへの管理や淫魔への対応に追われている身なのだが、今日ばかりはこの神巫女学園へと駆けつけていた。
「アンリは戻っているか!?」と、必死の形相で駆けこんできた彼女の顔を、救援班のリーダーである姫巫女は忘れられないだろう。
そんな折だった。
「し、失礼します!! し、至急ご報告したいことが……!!」
「なんだ、騒がしい。どうしたんだ」
「む、お前は……表で待機命令を出していたはずだぞ」
もうすぐにでも救援班が出発しようとしていたこのタイミングで、第三者が彼女らの下へと駆けこんでくる。
その慌ただしさにカンナは眉をひそめ、救援班のリーダーは出発まで待機させていた救援班の一人であることに気付き、問いを投げかけた。
すると、駆け込んできた姫巫女は「き、帰還されました……!」と肺に残っていた息をすべて吐き出したかのように言う。
そしてその直後、駆け込んできた姫巫女に遅れて特徴的な桃色の髪を揺らした少女がひょっこりと現れた。
その姿を見て、二人は目を見開く。
「み、神剣アンリ殿が、帰還されました……!!」
「えっと……神剣アンリ、ただいま戻りました。その、心配かけてごめんなさい、母さん」
◇
「なるほど……そうしてお前は、その男に助けられた、と」
神剣アンリの帰還によって一時的に騒がしくなった部屋であったが、現在はアンリとカンナの二人が残り事の次第についての報告を行っていた。
すべての話を聞き終えたカンナは、窓際へと寄りかかると慣れた手つきで煙草を取り出し火をつける。
そして煙を窓の外へと吐き出しながら、「ふむ……」と腕を組んで頷いた。
「そいつは『
「『
「ああ。とはいっても、我々で勝手に呼称しているだけなんだが……ここ二年で、彼に危ないところを助けられたという姫巫女も少なくはない」
少し待ってくれ、と理事長室に設けられた資料棚へと歩み寄ったカンナは、そこからとある一冊のファイルをアンリへ手渡した。
アンリが確認してみれば、そこには姫巫女たちの名がずらりと並んでいる。
「これは?」
「その助けられた姫巫女たちの名前だ。救出時の状態に差はあれど、そこに名のある姫巫女たちは生還を果たしている」
「これ全部って……結構な数よ、これ」
ずらりと名前の並ぶ資料が数ページにわたり、その数は優に百を超えているだろう。
普通は淫魔に追い詰められ、敗北した時点で生還は絶望的なのだ。普通なら餌となって食われるか、あるいは次の淫魔を生む苗床にされることもある。
そんな状況から助けるほどの実力者……それも普通は姫巫女の力の根源である巫女力が発現しない男が、ともなれば俄然興味も湧いてくる。
だがしかし、そんなアンリの興味は次のページの内容に移った。
今度は姫巫女ではなく、企業らしき名と人物名がズラリと並んでいた。
こちらは先ほどの姫巫女ほどではないにしても、五十以上の名が記されている。
「母さん、こっちの資料は何? 見たところ、姫巫女のものではないようだけど……」
「……『
ふぅ、と煙を吐き出しながら拳で額を押さえる姿。
それは母がストレスを抱えている時に良くする仕草だと、アンリは良く知っていた。
どういうことなのかとアンリが問えば、カンナはもう一度煙草を吸ってから答える。
「そこに書かれているのは……ここ二年の救助活動の傍らで、『
見たんだろ、お前も。
その一言でアンリが思い出したのは、自身が救助された数時間前の事だった。
「まぁとは言え、そこに書かれているのは淫魔と取引をしていた、所謂人間の裏切者たちだ。さっきの姫巫女のリストは、その殺された奴らに捕まっていた姫巫女だよ。皆、クソどもの餌食になる前に、あるいはダメにされる前に『
「なら、別にいいんじゃないの? もちろん、法の裁きを受けさせる必要はあると思うけど……実際姫巫女の皆は無事なんでしょ?」
「それはそうだが……そうはいかないのが社会というものだ。特に上層部の一部、特に後ろ暗い噂のある奴らは、何としてでも『
ニヤリと笑みを浮かべながらうまそうに煙草を吸うカンナ。きっとその一部の奴らの顔でも思い出しているのだろう。
「でもそんな奴らの言うこと聞く必要なんてないんじゃない? ほっとけば私たち姫巫女だって助かるんだし……」
「それでも野放しにしておく理由にはならない。上の一部の言うことを聞くつもりはないが、それでも対魔機関としてはどうにか『
だけどねぇ……とカンナが肩を落とす。
「接触しようにも、どこにいるのかさっぱりだ。救出された姫巫女にも話を聞いたが、いつの間にか姿がなかったらしい。アンリもそうなんだろ?」
「え、ええ……そうよ。素早く動いたとか、そういう感じの消え方じゃなかったわ」
「となると考えられるのは……姿や気配を完全に消す隠密系の力か、あるいは瞬間移動みたいな空間干渉系の力。姫巫女じゃないから、まったく別ものという可能性もあるな」
「つまり何もわからないと」
その呟きに、そういう事だとカンナが諦めたように頷く。
アンリ自身、『正体不明』について何かわかるかと期待していただけに少々落胆が大きかった。
「だが今回の件は、そんな状況に変化があるかもしれん」
「え、そうなの!?」
しかしアンリの落胆は、カンナのその一言で覆る。
「ああ。お前が捕まり、そして『正体不明』によって救出された今回の一件は聞いている限り少々特殊なようだ」
「あの……あんまりむせ返さないでもらえないかしら? 自分の失敗を言われてるようで恥ずかしいのだけれど……」
「明確な失敗そのものだろう。特に、お前に任を下した私のな」
それよりも、とカンナは話を続ける。
「アンリ。お前は『正体不明』と会話したそうだな? そして、お前の名前に過剰に反応を見せた、と」
「え、ええそうよ。何故かはよくわからなかったけど」
「そこだよ。私の名前ならともかく、お前の名に反応したんだ。認められてるとはいえ、今回が初任務だったお前の、な」
カンナの言葉に、「あ」とアンリが言葉を零す。
カンナ曰く、これまでの『正体不明』は姫巫女を救出する際、姫巫女たちに感謝と今後は騙されないように注意するようにしろと話しかけてきたそうだ。
そこは今回のアンリの件においても同様だった。
だがその後の会話。
露骨に『神剣アンリ』の名前に反応して見せた。
そこに何かしらの手掛かりがあるのでは? とカンナは考えた。
「何かの手掛かりになるかもしれん。アンリ、もう夜も遅い中悪いんだが……『正体不明』との会話のやり取り、そしてどんな反応をしていたのか、もう少し詳しい話を聞かせてもらうぞ」
「え、えぇ……もうあと数時間で日の出なんだけど……」
「姫巫女なら問題ない」
そんなカンナの言葉にがっくしと肩を落とすアンリは、日が昇ってカンナが政府へ戻るまでの間、まるで取り調べをされる犯人のようにカンナから質問攻めにされるのだった。