どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:誰でも愉快なハメハメハ
さてさて。
主人公と出会ってしまったとはいえ、俺がやるべきことは特に変わることはない。
あれから数日経つが、いつもと変わらず支度を整えて家を出た。
向かうのは俺がアルバイトしている近くのファミリーレストラン。
高校卒業後からであるため、もう二年も世話になっている。基本はホールを担当しているのだが、たまにキッチンに入って料理を作ったりもしているため、俺個人の料理スキルもかなり鍛えられたものだ。
「ありがとうございましたぁ~」
退店する客に声をかけながら、いつもの仕事を進めていく。
本当ならフリーターなんてするつもりはなかったのだが……色々あってこの形に落ち着いた。
まあ裏での活動を考えれば、シフトでの時間調整がしやすく、いざ突然辞めることになってもダメージの少ないフリーターが最も向いていたと言えるだろう。
……二年も世話になっているぶん、急にバックレるようなことはしたくないけどな。
相手テーブル席を片付けながら、そんな日が来ないことを願う。
すると、入り口が開いたのかチリンチリンと鈴の音が鳴り響いた。
「いらっしゃいま、せぇ…………何名様でしょうか?」
「二人。できれば禁煙席で頼む」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
ホールの担当として入ってきた客を出迎えるのだが、その姿を見て一瞬体を強張らせる。
あ、別にこの前の主人公がやって来たとかじゃない。入ってきたのは、二人組の女性だ。
ただし、どちらも胸がものすっごくでかい。
そしてちょっと気が強そう。
ふむ……姫巫女に違いない。
警戒心を抱きながらも、顔には出さずに二人を禁煙のテーブル席へ案内する。
別に彼女らが姫巫女と決まったわけではないのだが……忘れてはいけないのが、ここが凌辱エロゲの世界であるという事。
その事実とともに、俺がこの二年間で救出した姫巫女の事を考慮すれば、この予測もあながち間違いというわけではない。
エッロイ体をした女性はだいたい姫巫女。
ここテストに出ます。
「注文が決まりましたら、テーブルのコードからお願いします。ではごゆっくりどうぞ」
見たところ二十半ばの女性たちだ。学生にはとても見えないため、もし姫巫女であるとするなら任務か何かで近くに来ているのだろう。
もしかして俺か? と嫌な予感がよぎるが、それはないと頭を振る。
なにせここは、東京から離れた地方都市。おまけに俺に繋がるような痕跡も残していない。
姫巫女とは異なる、不思議な力を使う神出鬼没の男。それも顔がわからないという条件で探し出せるわけがない。
つまり、万が一にも俺の正体にたどり着く可能性はないのである。
なので俺なんかの捜索にリソース割くくらいなら、一匹でも多く淫魔を狩ってくださいな。
「すみませ~ん、たぶん十一番テーブルの二人組、めっちゃ食べる気がするのでご注意を」
「げ、まじか……」
キッチンに寄り、先ほどの二人組の注文が多くなりそうなことを伝えておく。
姫巫女の人ってエネルギーの消費が激しいのか、基本皆よく食べるのだ。たまに「あの人姫巫女だろうなぁ……」という人がこの店に来るが、全員そろって健啖家である。
たぶんあの二人もそうだろう。
「キタちゃんのそれ、よく当たるもんなぁ……了解、頭に入れとくよ」
別のキッチン担当が苦笑する中、俺は「では」と再びホールへ戻る。
その際、案内した二人組の横を通りが借りながらチラと視線を向ければ、案の定スマホに表示された注文画面には多数のチェックマークが入っていた。
キッチン頑張ってください、と心の中で合掌しておく。
そしてファミレスで一番忙しいと言えるお昼時も過ぎた頃、ようやく休憩の時間がやって来る。
バックヤードで勤務用のエプロンを脱いだ俺は、空いている席に腰を下ろした。
昼食をタダで食べられるのも、ここのアルバイトの良い点だと言えるだろう。
客も少ないため、少し贅沢してテーブル席に着く。
ふふふ……一人でテーブル席を使うなんて、我ながら悪である。他のホール担当のアルバイトに「あ、やってるなぁ~」という目で見られながら、スマホに映るメニューへ目を通していく。
今日の気分はハンバーグ御前だ。ポチポチと、追加でサイドメニューのアイスクリームも注文しよう。
「いらっしゃいませ! 二名様ですか?」
そんな時だった。
新たなお客さんが来たのか、ホール担当のアルバイトの子が入口の方へ向かって行った。
特に珍しいことでもないため、気にせず注文したメニューを待つ。
「こちらのテーブル席へどうぞ!」
アルバイトの子は、俺が座るテーブル席のはす向かいのテーブル席へ客を案内する。
ふむ、この時間帯でテーブル席が早々に埋まることはないと思うんだが……できるだけ早く食べ終えて仕事に戻ることにしよう。
とりあえず、注文が来る前に水でも取って来るかと席を立った。
「さすがにこの時間だと空いているな。アンリはこういう店にはよく来るのか?」
「都心に出る時たまに行きますね。セイラ先輩はあまり行かないんですか?」
「ああ。暇があれば剣を振っていたからな……今日が初めてなんだ」
「…………ヒュッ」
立ち上がろうとして浮かせた腰を、再度席に下ろす。
なんか、いた。
なんか、というか主人公がいた。
「……え、何で?」
そろりと気づかれないように視線を向ければ、そこにいるのはこの世界の元となったゲームの主人公である『神剣アンリ』その人だ。
特徴的な桃色の髪をツインテールに結った美少女。あと胸がでかい。
先日出会った時とは異なり、姫巫女の戦闘服ではなくセーラー服に身を包んでいる。
そしてもう一人。
主人公である神剣アンリの向かいに座るのは、まっすぐな赤い長髪の美少女。
セイラ先輩、と呼ばれたその少女は、ちょうど肩にかけていた竹刀ケースをテーブルに立てかけるところだった。
あとおっぱいがでかい。
主人公よりもだ。
それだけ確認して、俺はサッと視線を下に向けた。
「…………え、まじで何で?」
本当に。なんでこんなところにいるんですか?
「それにしても……本当にこの辺りなのか?」
「はい。同じクラスに電子機器に干渉できる子がいるんですけど……その子が言うには、神巫女学園と神剣について検索した反応がこの辺りであったそうなんです」
まだ能力が弱いからおおよそらしいんですけど、と神剣アンリがため息を吐いた。
そしてその呟きに、俺はチラと手元のスマホに視線を向ける。
「……」
お……俺の馬鹿野郎ぉおおおおおおおおお!!
面白い、続きが気になる、という方は是非是非応援の程よろしくお願いいたします。