どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~   作:岳鳥翁

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5話

 頭を抱え、額をテーブルにくっつけるように伏せる。

 

 なんだよ電子機器に干渉する能力ってさぁ……!

 そんなの知らないじゃん!? 言っといてくれよそんな能力があるのならさ!! 姫巫女なんて、基本淫魔を討伐する脳筋集団だと思ってたから、そんなのあるとか思ってなかったっての……!!

 

「そ、想定外の事態……!」

 

 まさかこれが孔明の罠……!? おのれ、なんと卑怯な手を使うんだ!

 

 などと、心の中である程度憤ったところで思考を整理する。

 

 つまるところ、何だ。

 結論だけ言えば、俺が迂闊だっただけの話である。悲しいね。

 

(検索履歴は……いや、下手に触らない方がいいか)

 

 漏れ聞こえてきた話からすると、その電子機器干渉の能力を使う姫巫女じゃ俺の自宅の位置までは特定できなかったらしい。

 ここで余計なことをしたら、今度こそバレる危険もある。

 

 グッとこらえて、スマホの画面を下にしてテーブルに置いた。

 

「それにしても……カンナ様はその『正体不明』をどうするつもりなんだ? わざわざ私たち二人を派遣して、戦闘でもさせるつもりか?」

 

「母さん曰く、淫魔相手ではないなら学生に任せてもいいって判断らしいです。私たちは学生の中でも実力上位ですし、何があっても対応できるようにってことだと思います」

 

「ふむ……ならば、カンナ様の期待には応えなくてはな。俄然、私の剣も冴えるというもの」

 

「あの、先輩。もし見つけても、まずは交渉からですよ?」

 

 おいおい……ここファミリーレストランだぞ。

 そんな関係者以外聞いちゃいけないだろうことを、こんな場所でべらべら喋るんじゃねぇよ……聞こえちゃうだろうが。

 

 何が怖いって、俺をただの一般人だと認識して、もし今の話を聞いてたら記憶処理しちゃいましょう、なんてパターンも考えられるのだ。

 もしもそうなったら、俺は全力で逃げるね。今後のバイトバックれ確定である。

 

 ……あれ、もしかしてここの席に人がいるって気づいていらっしゃらない?

 

 ならばこのまま、バレないようにやり過ごせば……!

 

「はい、キタさんお待たせしました! ハンバーグ御膳とアイスクリーム……うわっ、どうしたんです?」

 

「……ああ、お疲れ後輩ちゃん。うん、終わったなと思って」

 

「え、まだ運んできたばっかりですけど……」

 

 どうやら俺の昼食がやって来たらしい。

 

 既にテーブルに突っ伏しているのだが、気分的にはズンッと、さらに沈み込んでいるような気さえしてくる。

 料理を運んでくれたホール担当の後輩ちゃんは、そんな俺の様子に「えぇ……」と若干引き気味のご様子。

 

 チラと料理に目を向ける傍らはす向かいの席にも視線を向ければ、セーラー服を着たとんでもプロポーション女子高生二人がこちらを横目で見ている様子が見て取れた。

 

 あ、これダメな奴ですかね?

 

「なぁ、後輩ちゃん。ちょっと店長に伝言頼んでもいいかな? 体調悪いんで早退しますって」

 

「え……えぇ!? そうなんですか!? なら、ハンバーグ御膳とアイスクリームは私が……」

 

「あ、ごめんこれはちゃんと食べるよ。帰っても食べるものないし」

 

 よろしく、と頼んでハンバーグ御前に手を付ける。

 後輩ちゃんは少し納得いかないという表情を浮かべていたが、手を震わせてハンバーグ御前を食べるのを見て下がってくれた。

 しばらくすると、「店長から許可取れましたよ」と後輩ちゃんが教えてくれた。

 

 そんな彼女に感謝しながら、俺は一人食事を進めるのだった。

 

 嫌な予感で、味がしなかったのは内緒である。

 

◇

 

 で、だ。

 

「う、うおおおおおお!?」

 

「ちょっと待ちなさいよ! 別に痛くはしないから大丈夫だって!」

 

「ガントレット付けてパンチング練習してる奴が言っても説得力ねぇんですけど!?」

 

 あの後ファミリーレストランを出た俺は、姫巫女女子高生二人が後を追いかけてきていないことを確認しながら帰路についた。

 念には念をと、真っ直ぐ帰るのではなく、あちこちを移動しながら近場で一番大きなショッピングモールへ赴き、人気のないトイレから直接瞬間移動で帰宅したのだ。

 

 その甲斐あってか、夜まで姫巫女の気配もなく過ごすことができた。

 

 そして時間も深夜近くになり、さすがにもうあの二人も帰っただろうと考えた俺は、ラーメンでも食べてからいつもの活動を始めようかと外へ出た。

 そこまでは良かった。

 

 問題は出た後である。

 

『あ!』

 

『……はい!?』

 

 深夜までやってるラーメン屋での食事を終え、そろそろ魔法使いの姿に着替えるかぁ~、と考えていた矢先のこと。

 曲がり角から現れたのは、主人公こと神剣アンリだった。

 

 ファミレスで見たセーラー服ではなく、巫女服(袴丈ベリ-ショート)を身に纏った姫巫女姿での邂逅。そしてなぜか彼女は俺の顔を見るや否や声をあげ、「ちょっと表出ろやゴラ(意訳)」と追いかけ始めたのだ。

 

「そんな言い方一言だってしてないわよ!?」

 

「嘘だ! 目がそう言ってただろうが……! というか、まじでなんなんだあんたは!? こんな深夜に外で巫女服なんか着やがって! 今時の痴女は巫女服が流行なんですか!?」

 

「せめてコスプレって言いなさいよ!? いや、コスプレでもないんだけどそうじゃなくて! 大人しく捕まりなさい!!」

 

 てかはっや!? と後ろから追いかけてくる神剣アンリ。

 そんな彼女に向けて、俺は逃走をやめずに後ろを振り返る。

 

「そもそも何の用で俺を追いかけてるんだよあんたは!? 身に覚えがないんですけど!?」

 

「あなたお昼のファミレスで、私たちの近くに座ってたでしょ! 私たちの会話を聞いてた可能性があるから探してたの!! 安心して、記憶処理なんてすぐに終わるし痛くもないから!!」

 

 ガンガンッ!! と両手に嵌ったガントレットを打ち合わせる神剣アンリに、「嘘つけ痛いだろそれ!?」と叫んだ。

 絶対痛いに決まってるだろあんなの。いくら魔法が使えるとはいえ、肉体そのものは姫巫女ほど頑丈じゃないのだ。

 

 それに痛い他にももう一つ、あのガントレットによる物理的な記憶処理でない場合の可能性だ。

 電子機器に干渉できる姫巫女がいる以上、直接人の記憶に干渉できる姫巫女がいても不思議ではない。

 

 そしてその可能性が事実であった場合、捕まったその時点で俺のことがバレる。

 

 それは何としても避けたい。

 

(クッソ、なんて厄日だ! 自分のせいではあるけども……!!)

 

 ではどうやってこの状況を打破するか。

 深夜の地方都市であるため、大通りに出てもほとんど人はいないだろう。「暴漢に襲われています!!」と叫んで突入したところで意味はない。

 

(魔法を使えない今、こいつから逃げ切ることは不可能に近い! となれば、できることはただ一つ!!)

 

 それは土地勘を活かしたかくれんぼ!

 ファミレスでの話を聞くに、神剣アンリは今日ここへ来たばかりだ。となればこの辺りのことはまだよくわかっていないはず。

 

 俺の勝機はそこしかない!

 ただ一時、神剣アンリの視界から外れることさえできれば、その瞬間に自宅に飛べる。

 

「悪いことなんて、何もしてないはずなのになぁ……!!」

 

「ああもう! いい加減待ちなさいよ!!」

 

 グネグネと、曲がり角を駆使して逃げつつ、頭に描いた地図を頼りに目的地まで進む。

 この先の道を曲がった先には、工事中でマンホールが外されている場所があるのだが、そこへ飛び込めれば逃亡は成功となる。

 

 飛び込んだ瞬間に自宅に飛べばいいからな。

 

 あとは追いかけてきた神剣アンリが俺を見失い、逃亡先として下水道へ降りたならこっちのもの。

 俺のいない下水道を延々と彷徨う……いや、早いとこ引き上げて淫魔討伐にでも勤しんでほしい。

 

「よし! ここを曲がればマンホールの……!! ムギョッ!?」

 

「……む? 君は……」

 

「あ、先輩そいつです! ファミレスで私たちの席の近くにいたのは!」

 

 勢いよく角を曲がり、目の前に現れたのはとんでもない存在感を放っているドンッとした双子山。

 スイカ以上のそれと顔がぶつかり、その圧倒的な弾力によって俺の体が弾き飛ばされた。

 

 視線を上げてまず目についたのは、深夜であるにもかかわらず淡く光っているように見える灯のような赤髪。

 あと巫女服。こちらも尻が出るんじゃないかと思うほど丈が短い。

 

 そこにいたのは、神剣アンリと同じ姫巫女の女性だった。

 

 では皆さんご一緒に。

 

 はい、クソー。




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