どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~ 作:誰でも愉快なハメハメハ
「あ、先輩! その人捕まえてください! ファミレスでの私たちの会話を聞いてた可能性大です!」
「ファミ……レス……? どこだそれは」
「昼過ぎに行った店の事ですよ!?」
大きなおっぱいにバルン! と弾き飛ばされてすぐに立ち上がったのだが、そうしている間に後からやって来たおっぱい……違った、主人公である神剣アンリがブルン! とその姿を角から表した。
(くっ……挟まれたいけど、こういう意味じゃ挟まれたくなかった……!!)
まさに前門の胸、後門の胸……いや違う、虎と狼だった。
くそ、視界に映る暴力的な存在感に思考が乱される……!!
「み、巫女服痴女が二人だとぉ!? 本当に最近の流行なのか!?」
とりあえず、彼女らは一般人に姫巫女関係の話を聞かれたと思って俺を追っているのであれば、ここはまだ一般人を装うのが吉。
前後へ視線を移し変えながら、少々怯えを含むように驚いておく。
特に前は腰に刀を携えてやがる。
竹刀袋に入ってた奴か。
「む……失礼だな。これは姫巫女としての戦闘服だ。そのように言われるのは納得がいかないぞ」
「ああ、もう! 先輩も簡単に姫巫女って……記憶処理するからいいんですけども」
前を塞ぐ先輩とやらの言葉に呆れて、主人公神剣アンリが頭を押さえて項垂れる。
なにもよくねぇよ。
項垂れたいのは俺でお前じゃねぇよふざけんな。
(なにかないか……ここから入れる保険は……!)
逃げられる道を探そうと視線を動かすが、残念なことにここは両サイドは民家を囲う二メートルほどの塀で防がれている。
魔法が使えるならともかく、今の俺の身体能力じゃそれも難しい。
前と後ろもそうだろう。姫巫女を相手に、その両脇を通り抜けられる自信はない。
かといって、瞬間移動を使えばその場から一瞬で消える俺の姿を見せることになる。
「もう、散々逃げ回ってくれちゃって……あなた乱暴しようってわけじゃないのよ? 私たちの裏事情を知ってると淫魔に襲われる可能性が上がるからってだけで、記憶に封印をかけたら普通の生活に戻れるわ」
つまりあなたのためよ、と当たり前のように告げる神剣アンリ。
何その仕様知らないんだけど。
意外にもちゃんとした理由があり、その理由も一般人(現状の彼女たちから見て)を守るためのものであったとは。
とはいえ、そんな理由があろうとも、こちらには関係がない。
いや、正確に言えば関係しかないのだが、それでも今彼女らに捕まるのは俺にとってリスクしかない。
なので、演技は続行だ。
「わ、訳の分からないことを言いやがって、深夜徘徊してる巫女服痴女の言葉なんてさらに信じられねぇよ!! ほら、別に警察に通報したりもしないから、俺の事なんかほっといてどっか行けっての!」
シッシッ、と顔を顰めて二人を追い払うように手を振る。
最悪の場合は、正体バレ覚悟での瞬間移動も考慮すべきだろうか。
この二人……というか、姫巫女の組織に顔バレするという特大すぎるリスクを背負う必要があるためできれば使いたくない。
何か他に手はないかと、必死に思考を回して助かる道を模索する。
「すまないが、それは無理だ。アンリが言ったとおり、これはあなたを守るための措置でもある。淫魔は裏に足を踏み入れた者に寄って来るからな」
「……その淫魔とかはよくわからないが、もし仮に俺がお前らの話を聞いてたとしても、ファミレスでその話をしてたあんたらが悪いのでは?」
「……それは本当にすまないと思っている。あそこに人がいるとは思わなくてな。初めて来た場所で、つい浮足立っていたんだ」
「私も先輩の様子に気を取られてて……」
じゃあお前らのガバのせいじゃねぇかよ!!
グッと、そう叫びたい気持ちを押さえる。
くそがぁ……! こんなガバのせいで俺自身がピンチになるとか納得がいかねぇぞ……!!
「安心して。この会話も含めて、全部きれいさっぱり忘れさせてあげるから。うちの記憶処理班は優秀よ? 余計な記憶障害なんて起きたことないわ。……たぶん」
「おいなんか余計な一言入ったぞ」
「大丈夫よ。忘れちゃうけど、東京まで一瞬で移動できるポータルも体験できちゃうわ! 今なら美少女二人の送迎もついてタダよ!」
まるで通販番組番組のように神剣アンリが言うのだが、そもそも俺一人で瞬間移動なんて簡単にできるし、なんなら日本全国が俺の瞬間移動可能範囲である。
下位互換に魅力なんて感じるわけがなかろう。
おまけに美少女二人というが、猪突猛進な脳筋なうえに、ワンチャン淫魔に凌辱されるか、淫魔と手を組んだ人間に快楽堕ちさせられる奴などこちらから願い下げである。
俺は純愛がしたいのだ。
NTRなんてされたくないのだよ。
「……おかしいわね。普通の男なら、喜んで飛びついてくるのに」
「な、なんて自信だ……さすがに引くぞ」
「と、とにかく! あなたについてきてもらうことは確定なのよ! 言うこと聞かないなら、気絶させてでも……!」
神剣アンリがガントレットを構え、それに同調して先輩と呼ばれていた姫巫女も刀を抜いた。
推定一般人相手に武器を向けるんじゃねぇよ。
(けど、このままじゃまずい)
どうみても交渉……というか、演技で見逃してもらえる段階は過ぎている。
いやまぁ、二人の巫女服姿を見て、かつあれやこれやと話を聞かされた時点でそんなものはなかったのだろうが……それにしても無理矢理過ぎないだろうか。
こうなっては仕方ない。
(顔バレ覚悟で魔法を使用する……!)
覚悟を決め、瞬間移動の呪文を唱えようと口を開く。その時だった。
「【別……」と言葉を発した直後、周囲に響くようにアラート音が鳴り響く。
いったいなんの音かと驚いて呪文を中断し、音のした方へと目を向けると、そこには小型の端末を凝視する先輩姫巫女の姿があった。
いったいなんだ、と反応するよりも先にその姫巫女が刀を鞘へと戻す。
「アンリ、救援要請だ。反応はこの近くの路地裏、任務に来ていた姫巫女からのものだな」
すぐに向かうぞ、と踵を返した先輩姫巫女に、神剣アンリは「あ、ちょっと先輩!?」と声をあげる。
「こ、この人はどうするの!? まだ記憶処理も済んでないんですよ!?」
「悪いが、救援が優先だ。一番近いのが私たちだしな。たしかに記憶処理も大事だが、それは後でも問題はない。人命の方が大事だろう?」
「わ、わかりました」
先に行くぞ、と先輩姫巫女が塀へと飛び乗り、そこからさらに住居の屋根へと跳びあがる。
それに続くように神剣アンリも塀へと跳ぶが、こちらを振り向いた彼女は俺を見下ろして言う。
「あなた、名前は?」
「え、俺……? 東山トウリだけど……」
「わかったわ。悪いけど、あなたの記憶処理についてはまた後でよ。いい? 逃げるんじゃないわよ! じゃないと、あなたが危険なんだからね!?」
それだけ言って彼女もまた屋根へと跳ぶ。
後に残された俺は、二人が闇夜の空へと姿を消したのを見てようやく息を吐いた。
どうやら助かったらしい。
我ながら、咄嗟に偽名を名乗れたのは褒めるべきだろう。
「さて……じゃあ俺も後を追うか」
バサリ、と。
異空間へと収納していた魔法使い用の服を取り出して身に纏う。
全身を漆黒のローブに、深く被ったフード。
フードの中身は顔面周囲の空間を歪ませることで、決して顔が見れないようにしている。
もちろん、外側から見た時だけの使用だ。
「立つ鳥跡を濁さず……淫魔は倒せないが、サポートくらいはできるしな」