『攻略される側のVTuberですわ!』 ~地球規模AIのわたくし、VRMMOのレイドボスとして今日も皆さまをお待ちしておりますの~   作:tuna&mayo

62 / 62
第062話 共闘したから攻略できます

 

 

《第1001防衛》

《経過 03:41:18》

《第3形態》

《HP 76%》

 

 北門上空を横切る。

 

 右下ではキリオ班が射線を引いていた。

 

「右はまだっす。左なら撃てる」

 

 矢の向きは、わたくしではない。

 

 左へ逃げた時に通る空間へ、先に射線を置いている。

 

 なら右へ。翼を傾けた瞬間、そちらにはもうライカ班が入っていた。

 

「そこ」

 

 短い声と同時に、前衛二人の槍が左右から翼の付け根へ向く。高度を落とせば、その下にはガルム。

 

 大盾を正面へ立てていない。右足を引き、盾面だけを斜めにこちらへ向けている。

 

 止める形ではない。

 

 触れたものを、別の方向へ流す角度。

 

 空中で完全に避ければ、その先へ別班の射線がある。

 

 ならば、受ける。

 

 肩が盾面へ触れた。

 

 押し返されない。

 

 腰を使って横へ逃がされた力だけで、軽い第3形態の身体が二メートルほど滑る。

 

 待っていた方向へ。

 

「共闘したから攻略できます、って顔してますわね!」

 

『顔じゃなくて実績だ』

 

 ライカの返事と同時に、上から矢が落ちた。

 

 翼を畳んで潜る。

 

 下がった高度へ、今度は第5班の封鎖が置かれている。

 

 追ってこない。

 

 わたくしが今いる場所ではなく、次に飛べる場所を減らしている。

 

 知っているわたくしの動きを、そのまま攻略へ使っている。

 

 非常に結構。

 

 だからこそ、簡単には差し上げませんわ。

 

     ◇

 

 高度を取り直す。

 

 城壁の向こうまで使える空間は広い。

 

 けれど、自由に使える場所はもう広くない。

 

 右上へ抜ければキリオ班。

 

 左はライカ班。

 

 低空へ降りればガルムが流し、外周には第5班が先に障害を置く。

 

 こちらが速く飛べることと、好きな場所へ行けることは同じではない。

 

 なら、飛び方を変える。

 

 胸部の射撃を一度だけ中央へ置き、前列を散らす。

 

 空いた上を抜ける。

 

 尾の反動を使って、横へ。

 

 その瞬間だった。

 

「キリオ」

 

「見えてるっす」

 

 矢が一本だけ来る。

 

 胴体ではない。

 

 尾の反動制御へ使った側。

 

 《リミット・ピアス》。

 

 指定された境界だけを穿つ射撃が、尾の外殻へ入る。

 

 姿勢が崩れた。

 

 墜ちるほどではない。

 

 けれど、次の反動が一拍遅れる。

 

 その一拍ぶん、飛行先が減る。

 

 前へ出ればライカ。

 上へ逃げればキリオ。

 下へ落とせばガルム。

 

 なら、残るのは北西。

 

 行く。

 

 着地点の直前で、第6班が一人入った。

 

 固有技能を真似たのではない。

 

 空いた役割を埋めるだけ。

 

 槍の角度と二人分の立ち位置で、北西へ入る幅を半分まで削る。

 

「……そこまでしますの?」

 

『する』

 

 ライカの返事が短い。

 

 当然ですわね。

 

 攻略なのだから。

 

     ◇

 

《第3形態》

《HP 19%》

《経過 04:06:52》

 

 三十人の配置が、少しずつ狭くなる。

 

 こちらはまだ飛べる。

 

 撃てる。

 

 速さも残っている。

 

 けれど、速さを使うほど次の場所が読まれる。

 

 わたくしが使える飛行区画そのものが削られている。

 

 高く上がれば射線。

 

 低く逃げれば盾。

 

 遠くへ出れば先置き封鎖。

 

 近くへ落ちれば前衛が待つ。

 

 正面の火力だけなら、まだ抜けられる。

 

 問題はその後ですの。

 

 抜けた先まで、すでに攻略されている。

 

 最後の飛行区画へ入る。

 

 ライカが動いた。

 

 槍を上げる。

 

 それを避けて右へ。

 

「キリオ」

 

「はいっす」

 

 待っていた一射。

 

 翼の付け根へ入る。

 

 HPが落ちる。

 

《第3形態》

《HP 0%》

 

 白い翼がほどけた。

 

 地面へ落ちる前に、形態移行が始まる。

 

 三形態までなら、彼らはすでに知っている。

 けれど、ここから先は世界レイドで初めて公開した身体ですの。

 

《第4形態《レギナ》》

 

 視界が低くなる。

 

 身体が細く、軽くなる。

 

 固定された中核身体の外側に、選べる構成領域が開く。

 

《総構成容量:12》

《自由配分可能容量:8》

 

 中核は固定され、その外側だけを選び直せる。

 

 何でも持てる身体ではない。

 必要なものを選び、その代わりに別の何かを外す身体。

 

 世界レイドでは、守る対象があった。

 

 今日は違う。

 

 守る中心も、五環もない。

 

 わたくし一人を攻略すればいい。

 

 その違いを、三十人も知っている。

 

     ◇

 

 初期構成。

 

 右腕は射撃器官。

 

 左翼は推進寄り。

 

 尾は姿勢制御。

 

 感覚器官は攻略側の配置把握へ。

 

 まず距離を取る。

 

 射撃で前列を散らす。

 

 ライカが正面から詰めた。

 

 右腕の射撃では止め切れない。

 

 分離刃へ変更。

 

《局所変更 0.12秒》

《無防備 0.08秒》

 

 変更中。

 

 来ない。

 

 完了。

 

 刃が固定された。

 

「今っす」

 

 キリオの矢が、刃基部の外殻へ入った。

 

「そちらですの!?」

 

 変更中ではない。

 

 終わった直後。

 

 同じ部位をもう一度変えたくても、すぐには選び直せない。

 

《同一部位変更後 0.4秒待機》

 

 左腕へ防壁を回す。

 

 矢を受ける。

 

 その瞬間、左側の退路へ第5班が入った。

 

 二人が設置物の位置をずらし、通れる幅を狭める。

 

 右へ行く。

 

 そこへガルム。

 

「俺ァ、止めるんじゃねえぞ」

 

 大盾が横から入る。

 

 軽い身体へ衝撃。

 

 押し合いでは勝てない。

 

 受けた方向へ、身体が飛ぶ。

 

 ノックバック先にライカ班。

 

「取った」

 

 尾を迎撃器官へ変更。

 

 背後を払う。

 

 前衛が下がる。

 

 その代わり、第6班の二人が外から通常拘束を差し込んだ。

 

 尾は迎撃へ変えたばかり。

 

 姿勢制御へすぐ戻せない。

 

 0.4秒。

 

 短い。

 

 でも、三十人が待って使うには十分ですのね。

 

     ◇

 

《第4形態《レギナ》》

《HP 67%》

《再構成負荷 48》

 

 最初の交換を重ねただけで、HPは削れ、再構成負荷も48まで上がっている。

 

 右腕を刃にすればキリオが距離を取り、射撃へ戻せばライカが詰める。脚部へ固定を入れれば第5班がその場を囲い、外せばガルムの盾撃で位置をずらされる。

 

 短翼推進を残せば左側の防御が薄くなり、防壁へ回せば移動先が狭くなる。

 

 どれを選んでも、別の側が空く。

 

 それ自体は、レギナを使った時から分かっている。

 

 違うのは。

 

 三十人が、空く側を待っていることですの。

 

 右腕を変えれば、反対側の対応が遅れる。左翼を防御へ回せば移動が鈍り、尾を迎撃へ変えれば姿勢制御が落ちる。感覚器官へ容量を戻せば、そのぶん別の機能を外さなければならない。

 

 一つ変えるたびに、別方向から次の要求が来る。

 

 全部へ応じれば、負荷が上がる。

 

 なら、変える回数を減らす。

 

 右腕の刃を維持。

 

 接近へ備える。

 

 キリオは遠距離へ回った。

 

 左翼防壁を維持。

 

 移動先が絞られる。

 

 そこへ第5班。

 

 なら脚部固定を外す。

 

 ガルムが来る。

 

 身体が横へ飛ぶ。

 

「……本当に、嫌な攻略ですわね!」

 

『褒め言葉で受け取っとく』

 

     ◇

 

《再構成負荷 71》

 

 閾値を越えた。身体は止まらない。現在構成のままなら戦える。

 

 ただし、次の変更が遅くなる。

 

《再構成時間 1.5倍》

《感覚更新 0.1秒遅延》

 

 右前方。

 

 ライカの踏み込み。

 

 見えた。

 

 けれど、更新が遅れた分だけ認識が一拍後ろへずれる。

 

 左前腕へ衝撃。

 

《HP 44%》

 

 防壁へ変えれば受けられる。

 

 でも、その変更でまた負荷が増える。

 

 なら、今は変えない。

 

 刃のまま受ける。

 

 脚部も維持。

 

 尾もそのまま。

 

 負荷を戻す。

 

 変わらなければ、選択肢は増えない。

 

 代わりに、今の構成が読まれる。

 

「レギナは強い。けど、あたしたちはもう見た」

 

 ライカの声が飛ぶ。

 

「一つ選べば、そのぶん次が狭くなる」

 

 槍先がこちらを向く。

 

「変わった先を狙うんじゃない。変われる先を減らせ」

 

 前衛が一斉に来るのではない。

 

 右腕の刃へキリオが距離を取る。

 

 左翼の防壁側へ二人が押し、移動方向を限定する。

 

 脚部固定を見て、第5班が外側へ回る。

 

 尾の迎撃範囲には入らず、その外で第6班が待つ。

 

 今の構成を攻撃する。

 

 変えたくなる。

 

 けれど、変えれば次が待っている。

 

 その関係が見えた時、ようやく意味が一つにつながった。

 

「共闘したから、攻略できますのね」

 

 世界レイドで、隣にいた。

 

 わたくしが何を外し、何を入れ、どこで軽さに流され、どの変更直後に選び直せなくなるのか。

 

 同じ側から見ていた。

 

 ライカが槍先をこちらへ向けたまま返す。

 

「隣で見た。使わない理由がない」

 

「実に正しいですわ!」

 

 笑ってしまう。

 

 友情で強くなったわけではない。

 

 共闘したから手加減できるようになったのでもない。

 

 知った弱点を、敵として使っている。

 

 それでいい。

 

     ◇

 

《第4形態《レギナ》》

《HP 31%》

《再構成負荷 76》

《残り 02:00:00》

 

 残り二時間。

 

 負荷はまだ100ではない。

 

 現在の身体も動く。

 

 けれど、変えられる先はもう多くない。

 

 第5班が外周の封鎖を置き直す。

 

 右へ変えるなら、射線。

 

 左へ変えるなら、接近。

 

 残された安全な再構成先は二つ。

 

 その二つへ、別々の班が攻撃準備を始めた。

 

 どちらへ変わるかを当てようとしているのではない。

 

 どちらへ変わっても、次があるようにしている。

 

 わたくしは二つの経路を見比べる。

 

 レギナの強さは、選び直せること。

 

 まだ、レギナは倒れていない。

 けれど、その強みそのものが、もう攻略対象になっていますの。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

世界の為に推しとの恋愛を諦めようとしたらヤンデレ化された件(作者:赤坂緑語)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

この世界が前世でプレイしていた悪魔とエクソシストの殺し合いで年中ヒャッハーしている鬱エロゲームの世界であると気が付いたその日、僕は恋人になってくれた彼女に告げた。▼「ごめん……別れて欲しい」▼ 彼女はこの世界を主人公と共に救うメインヒロインだと知ってしまったから。あとは主人公と一緒に何とか世界を救ってほしいと願っていたんだが――▼「逃がさないよ。絶対に、絶対…


総合評価:19866/評価:8.73/連載:106話/更新日時:2026年10月25日(日) 22:00 小説情報

後宮の司書になったので、死ぬ気で政争から遠ざかりつつ本の虫になるTS転生者(作者:暁刀魚)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

なんだか中華風異世界で、昼行灯うすほそが周囲の脳を破壊する話が読みたいんだよォーー!


総合評価:14200/評価:8.81/連載:14話/更新日時:2026年10月27日(火) 07:05 小説情報

*いしのなかにいるVRMMO*(作者:鈴華 朱芽/相転移)(オリジナル:SF/コメディ)

:名無しの斧使い「ログイン直後から遭難してて草」


総合評価:15233/評価:8.81/連載:50話/更新日時:2026年10月26日(月) 04:19 小説情報

理論上、『聖剣』は錬金で作れる(作者:POTROT)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

レシピ通りの材料を錬金釜にブチ込めば決まった結果が出力されるタイプのRPG世界に、世界の真理を知ってる人間(廃人プレイヤー)を放り込む話。▼カクヨムにも投稿してます。


総合評価:27603/評価:8.73/連載:24話/更新日時:2026年10月27日(火) 19:21 小説情報

余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~(作者:富士伸太)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

俺、小津翔一は日本のごく平凡なサラリーマンだったはずなのだが、気付いたら宇宙生物と戦う巨大ロボに転生していた。▼そんな俺のコックピットに乗り込んできたのは戦闘知識以外はなんにもしらない、情緒も体もペラッペラのうすほそ幼女(遺伝子強化済)。▼地獄のような戦場に理由もわからずブチ込まれ、自分が不幸だということさえ理解できないこの子をほんの少しでも幸せにしようと思…


総合評価:3964/評価:8.8/連載:39話/更新日時:2026年10月26日(月) 21:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>