PERSONA × MY-TH UNFATHOMABLE VOYAGE ―沖縄怪異航路― 作:ボルメテウスさん
「んっ」
ゆっくりと俺は瞼を開けながら、周囲を見る。
「あれ、俺は確か寮のベットで寝ていたはずだが」
「ようこそ、我がベルベットルームへ」
「その声は」
俺は、ゆっくりと声の主を見ると。
「イゴール、なんで」
「それは、あなたに伝えなければならない事がありましたから」
そうして、ウォルトンがシードエクズを取り出す。
「ライドエグズを船にたとえましょう。あなたは、その船を乗り換えながら旅を続けているのです」
「そうなのか?」
「えぇ、乗る船によって、進める道は変わりますから。そしてシードエグズは、船に積む新たな装備。帆を加えるか、錨を下ろすか。それによって、同じ船でも取れる進路が変わります」
「縁……」
俺はその言葉を口の中で転がした。ライドエグズが他者との絆だとしたら、シードエグズはもっと小さな、ささやかな繋がりなのだろうか。
「その通りです」
ウォルトンは静かに頷いた。まるで俺の思考を読んだかのように。
「ライドエグズは貴方自身の心が変化し、新たな仮面を被ること。姿そのものを変える力です。ですがシードエグズは違います。貴方の在り方を変えるものではありません。ただ、手元に新たな道具を授けるものです」
「道具……」
俺はヘッジホッグプラスを思い出した。あの棘付きのマント。俺の姿がハリネズミになったわけではない。マウスフレームのままで、ただ背中に棘という装備が増えただけだ。
「表裏のない一つだけの力。それがシードエグズです。姿を変えるのではなく、その力を武器として形作る。だからこそ──」
ウォルトンは海図台の上で二つの卵を並べ直した。
「これは貴方一人だけのものではありません」
「えっ?」
「同じ海を渡る仲間へ、帆を貸すことも錨を分けることもできるのですよ。シードエグズは小さな縁。一つの動物の力を様々な形で使えるため、必要とする者の手へ渡ることも許されるのです」
マリナや大神さんにも使えるのか。あの二人が武器を持てば、もっと立ち回れるはずだ。
「例えば狼の加速が剣になり、亀の守りが盾になるように。その形は持つ者の進路によって自由に変わります。一つの力が一つの形に縛られることはないのです」
俺は自分の手の中にあるシードエグズを見つめた。白い殻。まだ何者でもない可能性の塊。これを誰かに託す日が来るのかもしれない。
ウォルトンはゆっくりと笑みを浮かべる。
「あなた方が帰ってこられたのは、装備だけのおかげでしょうか。誰が道を開き、誰が人を運びます。一人では越えられない波もあります。次の航海では、誰に何を託すか。それもまた、あなたが選ぶ進路なのですよ」