俺には年の近い妹と、中学卒業間近の弟がいる、どっちも可愛い俺の兄弟だ、俺の戦いは二人のためにあったと言っても過言ではない。
ただまぁ、危ないことしてましたって言えば物凄い勢いで停められただろうから俺の活動は一切知らせていない、ゲームバカにした天使と俺の家族がカスって煽ってきた天使はもれなくチリにして太陽に捨ててきた。
そう言えば俺、大層な名前が付いてたような…………何だっけ? ルージュ? ベージュ? 色じゃなかったな……コサージュ? ルシ……ルファ……みたいな?
ともかくその辺の名前で俺の存在が浸透してるみたいなんで本名で生活する分には俺は困らない、二つ名が先行し過ぎで本名が伝わってないのバグだろ。
本音はね、もっと本名が広まってたら有名人になってもうちょい楽しく暮らせたかなって思うよ? でも……なんか、調べたら恐ろしいくらいに尾ひれ背びれがくっついた俺と仲間たちの評判に、なんか俺がそうですって名乗りづらくてやめちゃった、何なら敵視されてる評判もあったし……。
だから、俺はいくら楽になるからって名乗りません! 居音は居音です! よろしくお願いします! のスタンスで行く、バレたら学校いられなくなるなぁ、世間はキビシーから……。
「おに〜さまや〜、飯食わんのけ?」
「なんだおとーと、飯食わせてくれるんけ?」
「はよ飯くえ、バカニキィ〜」
弟が来た、そりゃそうだここは実家である、妹は一人暮らししてるんだとか、場所まではプライベートに首突っ込むほど俺も野暮ではないので聞いてない、必要とあれば探して飛んでいけるし(最強の余裕)。
ま、今は飯だ、腹減った、オデ、メシ、クウ。
いただきます、バクッ、ごちそうさまでした。
相変わらず母の飯が美味かった、父は飲み過ぎ。
こんな感じで4月まで暇を潰していようと思ったんだたが……何と言うか間の悪いことに弟の希望校落選の知らせ、俺のお先も一緒に暗くなっていきそうである。
珍しく落ち込んだ弟が実家にある俺の部屋へやってきた、その話の関連だろうか。
俺は畳の上で寝転がるのも悪くないと思っていたところだ、暇ですぞ。
「俺の部屋へようこそ」
「今はボクんだけど?」
そうだった、この部屋譲ったな、譲った割には俺が使ってた時と変わってないのは何故? まぁいいか。
「細かいことはいいじゃないか弟よ、で? 何用? 願いを言え、大抵のことは叶えられるんじゃないかと思う」
「カスの神龍かよ」
「るっせ」
「ハハハ」
な、なんやいきなり……笑いよって……怖いぞ兄は。
「久しぶりにこんなやり取りしたなって……」
「なんだ寂しいだけか、友達いる?」
「ちゃんといるわボケ」
「良かった、兄は安心して旅立てる」
「何処に行くんだよ、無職のくせに」
どぎついストレート来たな……もはやテロだよそれ、しかし俺は今までの兄貴ではない、世界を救って勇者になったけど腐っちゃった男ではない。
新学期を待ちわびるニュー深人だ!
「ま、どっかに行く」
なんて言えば頭のおかしな奴って評判に拍車がかかってしまう、やめておこう。
「あ、リコのやつどうしてる?
「え? リコねぇ? 連絡取ってないの?」
「暇がなかった」
「嘘つけニート」
誰だこんな粗野に育てたの、俺か。
「まぁいいや、リコねぇ今は学校で働いてるって、教員免許取れたって喜んでた」
「……嘘、この超能力社会で教鞭取るって正気か?」
「なんでそんな殺し合いに飛び込んた奴を見る目で言うんだよ、リコねぇはこの家唯一の天才だから海外行って飛び級して帰ってきたんだよ、だから大丈夫」
「えっ……なにそのヤバイ奴…………」
「お前の妹だろ」
そうでした…………しかし、なんだ、兄としての威厳がダブルスコアで離されてるな……いやダブルスコアどころじゃねぇかも……
「シュウトや」
「なんだ?」
「俺、兄っぽい所ある?」
「ねぇけど」
肩が落ちまくった。気を取り直して妹のほうを聞く。
「リコは姉っぽい?」
「大いに、長期休暇は絶対帰ってくるし、欲しいもの買ってくれるし……なんか毎回不機嫌だけど」
「アイツ何してたって不機嫌そうじゃん」
「そうかも」
ま、男兄弟に挟まれてたわけだし、ちょっと窮屈だったかもな……それが今ちょっとずつ爆発してるとか……
どっかで顔合わせたらガス抜きしてやろ、どうせ勉強ばっかで暇してないんだろうし。
勉強で思い出したわ、シュウトの次の志望校何処にするんだ?
「シュウト、志望校は?」
「え……あ……そうだった……」
「可愛い弟よ、バカめ」
「アバダケダブラッ!」
「にぎゃぁぁぁぁ!!」
と言って指先から電流をバチッと流す吾が弟、死ぬほど痛かった、俺が世界最強のお兄ちゃんでなければ即死だったな……コイツ、そのうちツッコミで誰か殺さないよな。
くそ……こうなったら恨み返しだ!
「お前そんなんで彼女とか出来るのかよ〜」
「っ……!」
「ほほ〜? へぇ〜……? 顔が赤いぞ?」
「うぶじゃうぶじゃ」
「うるさい! ボクにだって一人二人いるわ!」
「……それはそれで酷くない? 顔いいだけのカスじゃん」
「ぬがぁぁっ!」
強めに詰め寄って頭をイジり、グリグリと指を頬に刺してやる、可愛いやつめ、まだまだ兄貴が負けてやりませんぞ〜! ばーかばーか。
◆
久しぶりに出会った兄は、何処も変化していなかった、兄はやっぱり兄なのだと再確認した。
昔から秘密主義で、隠し事が多いが、秘密はボクもあるのでそれを追求はしない。
兄はリコねぇにも、ボクにも優しい、何したって怒らない、何を強請っても止めない、昔から。
だから、兄を見ると止められない。
兄がこの部屋を去ったあと、ボクはさっきまで兄がいた場所へと寝そべった、残っている温もりを感じ取るために。
……実を言えば、ボクと兄の間に血縁関係はない、何ならボクは
だからボクは全てを偽り、捨てられたくない一心で居音シュウトと言う男として今まで暮らしてきた、十年前の騒動のせいでボクみたいな孤児はいくらでもいたから。
なぜか兄さんだけボクを血のつながった弟だと思ってる、兄さんが実家に居なかった期間にボクが生まれたんだと思ってるんだ、お母さんが里子だって伝えたはずだけど忘れてる、それを忘れるほど激しい何かがあったんだとは薄々気がついてるけど。
それでボクが女だと分かっているのはリコねぇだけ、長期休暇になるとボクの様子を見に帰って来てくれる、そして体の調整もお願いしている、リコねぇが言うには超能力が原因の成長鈍化はいずれ落ち着くのだという、ある時一気に伸びるんだって。
「サイヤ人かよ……って、兄さんが移ったな……」
兄さんが移ったか……兄さんに……もっとボクに勇気があれば……強かさがあれば……あれば何? ボク何考えてた?
「あ、そうだ志望校……兄さんいないし……はぁ……」
そう言えばリコねぇの勤め先の学校が話題になってたような……なんでだっけ……あ、スマホスマホ……ヒットした。
「世界最強の超能力育成高校をスローガンにしたから、か……そのせいで天使との戦争があったのに……って言う人がいるんだね、アホらしい……今は僕らの一部じゃないか、今更目を閉じて生きられないよ」
天使ねぇ……兄さん、天使の話はしたがらないんだよねぇ……なんでだろ……兄さんに秘密があるのは分かるけど、その秘密までは分かんないなぁ〜……リコねぇはその秘密薄々気がついてるっぽいけど。
やっぱり血のつながった家族はわかるのかな……ボクだけ血が繋がってないから…………ボクだけ…………だから……ボクだけは兄さんを…………兄さんを? なんだろうこの気持ち、よくわからない……。
そうだ志望校、……兄さん居ない所はどこでもいいや、リコねぇの所行こ。
「…………名前長いな、マルコス高校にしてよ」
相当ふざけた内容の入試以外ゆるゆるの倫理観アウトサイドな場所だけど、リコねぇが選ぶくらいだし、行って損はないはず。
明日、早速そこへ願書を出そう。