カバンを見る。
「文具よし」
ポケットを触る。
「スマホよし」
鏡を見る。
「髪型……あ、ハネてる……こんなもんか、よし!」
服装は?
「中学の制服残してて良かった……シワあるな……ちょいといじれば……目立たなきゃいいや」
肌ツヤ?
「できてるできてる、体も若返ってるな、よし!」
全ての準備、ヨシ!
今日は、入学試験の日、私立マルコス・イスヴァナ超能力育成高校へ行く。
テレポート提出は無事に受理され、入学試験の用紙が送りてきた、と言っても端的に『この日この時間にここへ来い』って文書と、校内へ入るための仮の身分証明書。
この身分証明書、年齢欄が24じゃなくて16なのは俺のやったことです、 嘘を書きました、24は流石に跳ねられそうだったしね……義理で名前だけ本名です! 高卒じゃないからバレないよね?
でね、流石にこのまま行けば不味いんで見た目を偽っていく、さっきのチェックはこれのため。
偽造がバレたら終わりだけど……名前と年齢くらいしか求められてなかったしバレないでしょ、バレたら潔く出頭します、バレなきゃ犯罪じゃねぇは確かに法治国家の死角だね。
居音深人16歳、背は平均より高めなのは素ですが、超能力でアンチエイジングして代謝と肌ツヤと体質を年齢相応にしておきました、髪は短髪の黒、顔は変えてないが若返った分……なんかどこにでもいそうなモブっぽくなった、戦いがない時代ならこんな顔になってんだろうな俺、まつ毛ちょい長だけど普通の日本人男子の顔だ。
まぁこれで怪しまれないでしょ多分、これで俺って見抜く奴はそれこそ『反逆同盟』の時のメンバーくらいじゃない?
父さん、母さん、妹と弟には『三年くらい自分探しの旅行に行ってきます』と伝えておいた、妹のリコは既読付けすらしなかったし、弟のシュウトは「自分探しより仕事探せ」とド辛辣、俺だけが弟妹と仲が良いと思ってるのか?
そろそろ出発時刻だ、むふ、楽しみだ……学舎での青春! ……くだらない笑い、くだらない話、なんてこと無い日常! そして……彼女とかできちゃったり……ん? それはないか……相手未成年じゃ恋愛対象には出来ねーな、じゃあ先生? いやいやそれこそ生徒と先生のいけない恋になるじゃないか……真面目にやろ。
あ、移動はテレポね。
──彼は襖にわずかな隙間が生じていたことに気が付かなかった。
◆
「ん、あれって……シンジ兄……?」
彼女はつぶやきを残した。
◆
着地!
「よし、予定通りだ」
ここは私立マルコス……長いからマルコス高校の、体育館裏、事前にここは人通りがほとんどないことを確認している、方法? そこはほら千里眼とかあるじゃんそういうの、それ。
目的地は本校舎前、東京ドームで例えるくらい広い敷地のド真ん中にあるんだが、敷地に負けないくらい校舎もデカい。
敷地面積だけ見れば大学も結構大きいところは大きいみたいだが……ここはその二回りは大きいんじゃないか? 東京ドームが一杯入るな。
建物の角に身を隠し、前後左右を確認、受験者が集まる場所へコソコソと移動しそれとなく合流した。
中学の制服引っ張り出してきて正解だった、様々なグループが談笑やら卒業後の再会を楽しんでいたので、私服で来たら白い目で見られてただろうな。
しかしこうして見ると中学の学生服も色々あるんだな……普段使い出来るブレザーが多いか……あ、あれ有名なお嬢様学校の制服だ、ドレスっぽいんだなぁ〜。
それはそれとして、皆結構超能力をひけらかさないようにしてるな、誰も見せてないし、説明もしない、昔の俺なら嬉々として超能力が成長したこと伝えたろうに……最近の子って超能力にドライなの?
人間観察が面白くなってきたな、まだ試験開始時刻まで時間あるし、壁にでももたれて眺めてよう。
……あれ、思ったより人数いるな、ザックリと数えるだけでも千人超えてないか? 敷地がデカすぎて千人でも狭く感じないんだけど。
……ん、視線?
「…………」
うわ、なんか俺のことめっちゃ見てる……寄ってきた!? うわうわうわやめろ来るな! 逃げ……たら不審だから逃げられない!
俺のこと見てた人が人の間を縫って俺の前へ立った、よく見れば俺と同じ制服の男子だ。
まだまだ幼い顔付きだが、大人になれば甘めのイケメン男性になりそうなポテンシャルを感じる、気弱な態度が改められたらモテそう、でもこういうタイプはモテたくはないんだろうなとも考えたりして……。
オレ? モテ……でもいいけど絶対途中で面倒くさくて相手しなくなるな、うん。
あ、話がそれた、彼の話を聞いてあげよう、話したくてソワソワしてるし、手を彼へと差し出してそちらからどうぞと促した。
「あ、どうも、えっと……君さ、同じ中学……だよね?」
やっぱり向こうもそう思ってたんだ、いやそうだろうけど……俺の顔知らんだろうによく来たな。
今更突っぱねるも可哀想だし話し相手くらいはしよう。
「そうだな……顔は知らない、他クラスだろ?」
「うん……そうだね、僕も顔は知らない……でも同じ中学の子がいてよかった……あの、名前は?」
「居に音と書いてイオト、深に人でシンジだ、好きに呼んでくれ」
「えっと……じゃぁシンジ君で……」
なんか俺急に主人公になれそう、お父さんにロボに乗せられない? ……無いな、両親健在だし家族仲は良好だ。
「あっ……僕も名前、
「げんじゅ……?」
渋いな……げんじゅ……なんか強そう、俺が名前に反応してから彼は少し調子を上げて話す。
「意外に渋い名前だって、よく言われる……家がお寺だから、ちょっと変」
なるほど、言われ慣れてるってか。
「まぁ感性は人それぞれだし、大人になってから名前も変えれたりするぞ、嫌ならだけど」
「え? えぇっと、大丈夫、そこまでじゃない……ありがと?」
「変なアドバイスしてすまなかった、あと感謝をこちらに聞かれても困る」
「ごめん……」
やめろやめろそんなすぐに頭下げないで、気分の下降が早すぎる、ここは少し丁寧に話してみるか。
「あ、へこませるつもりはなかったんだ」
「ご、ごめん……」
「謝んなくていいよ」
「あ、ごめ「じゃなくて?」…………それはそれで、なんて言えばいいか……分かんないや」
「ごめん以外なら何でも大丈夫」
「え……あ〜……いわし……」
さ、散々悩んでそれか?
「流石にひらいて干すぞコラ」
「ご、ごめんさない!」
でもなんかそこはかとなく親近感湧くな、仲良くなれそう。
──キーンコーンカーンコーン……
チャイムの音が鳴り響き、続いてわずかなノイズ混じりの男性の声が聞こえてくる。
『あー、あー、マイクテストマイクテスト……入学試験待ちの皆様、お時間になりましたので係員に従い各試験会場へと移動してください……繰り返します──』
遂に来たか、さて、やる気はバッチリだ、が目の前の知り合いはどうにも震えていた。
「う……緊張する……」
「大丈夫、大丈夫」
「ちょっと吐き気が……ヤバイどうしよ……! 緊張しすぎちゃ……!」
「ほれどうどう……よーしーよーし……」
分かるぞ、俺もビビる時はビビるからな……入学試験くらいの緊張はそのうち慣れるぞ!
一先ず俺はコイツの手を引いて遅れ気味に試験会場へと足を運んだ、同じ試験会場で良かったよ。見捨てずにすんだからな。