勇者がいろいろ嫌になって田舎に引っ込むおはなし 作:試行錯誤
前半は血なまぐさい過去の話。
後半がちょっと緩めの感じの今の話。
という面倒な作りになってます。
読みたいとこだけ読んでくれて全然大丈夫!
勇者として名高いバシオン・イヴァーケス。
彼は決して無敗の絶対強者という訳ではない。
何度も手痛い敗北を経験してきた、よく居る一人の人間である。
というよりも、この世界で辛酸や苦渋を味わっていない人間というものはまず居ない、というのが正しい。
中には穏やかな環境に囲まれて一生を終える者も居るが、それはだいぶ恵まれた幸運な方だ。
ほとんどの人間は不意に死ぬ。
家畜として扱われ死ぬ。搾取されて死ぬ。
あるいは数合わせとして集められ何かの際に死ぬ。
特にこれといった何かがなくとも死ぬ。
運に見放され、環境に恵まれず、人に出会えず、悪意には食われ、助けは来ず、貪るモノだけは寄ってくる。
そういったモノを乗り越えるか、または回避し続けるか、あるいはぶち破るか。
望まずとも、超えさせられてしまった者も居る。
そんな人間が辿り着くのが、テン・ミリオン・オーバーというレベル1千万を超える世界である。
レベル10万を超せるなら強者として何ら不足はない。
レベル100万を超えればミリオンオーバーとして富や大なり小なりの特権がついて回る日常へ。
その上をいくレベル1000万超えともなれば、まさしく人間社会の頂点である。
富や特権がという段階どころではない。
あらゆる物が集中し、多くの人間から尊重してもらえる全く違う世界がやってくるのだ。
人間では逆立ちしても勝てなかったモンスター達と渡り合う能力を保有する英雄達。
そんなレベル1000万超えを達成した者が何を思うのかといえば、大半が思うのはこうだ。
死にたくない。
それが本音である。
人類の中で、飛び抜けた能力の発揮を見せる個体。
望む望まざるに関係なく目を引く個体。
退屈をもて余す絶対強者達、それこそ神のような力を持つ連中がいるこの世界で、本当にちょうどよい目印なのだ。
遊びやただの気まぐれ、興味本意で一つの民族や国を吹き飛ばす超存在達。
それを慰めるために差し出し、喜ばせて、満足させて、静かになってもらうのにうってつけのモノ。
少しでも早く、わずかでも長く、ちょっとでも傷が浅い内に鎮まってもらいたいがための、多数の総意による多数のための生存方法としての在り方。
それを理解するからテン・ミリオン・オーバー達は絶望しつつも戦うしかないのである。
家族が居る、一族を背負った、民族を代表させられた。絶滅させないと保証された。
素晴らしい名誉であると信じる、信じ込むしかない。
逃げられない。
そんな重圧から壊れていく者は数多い。
享楽にふける者、色に溺れる者、せめて自分だけは生き延びたいと自己強化に血道を捧げる者、全てがどうでもよくなり自ら暴発する者。
協力して戦うのではなく、自分だけは生き延びたいと、あるいは死ぬまでに欲望を吐き出しきってやると。
そんな利己的な生き方や、刹那的な生き方をする者達とそれを憎みつつ打算により受け入れる者達。
そんなぐちゃぐちゃな人間達の有り様そのものを楽しむ『上』が居て、自分達の醜態そのものが見せ物になっているのだと、眺めて悦んでいる連中が居るのだと分かっていても、彼ら彼女らは感じずにはいられないのだ。
死にたくないと。
勇者と呼ばれる前のバシオンも、他の人間もそうだった。
だから起きる、潰し合いが。
血生臭い競争が。
降りる訳にはいかないのだ。
降りた瞬間、先に死ぬのは自分だと理解できるから。
旗頭が居ない。なれない。なりたくない。
何人かの者が反旗を翻した歴史はあった。
そこから脱出しようとあがいた者も居た。
そして、それらはそのまま暇潰しで消費されてきた命の歴史でもある。
最終的には叩き潰されてきた人間種の歴史だ。
だからバシオンは信望されるのだ。
初めて神に一太刀浴びせた人間として。
恨みも一手に引き受けるのだ。
最悪の無能として。
しかし、中には言い訳のしようがないほどに彼自身が招いた惨事も複数存在する。
バシオンは英雄でも勇者でも救世主でもない、死にたくなかった一人の人間である。
バシオンのレベルが1600万に届こうかという頃の話だ。
「……討伐……? 逃げ出した、テンミリオンオーバーの討伐……? 俺が、この領地を代表して? 何、言ってんだあんた……!?」
疑念と動揺を口にするバシオンに返ってきたのは、『世間の道理』を知らぬ子供に対する苦々しい態度。
既に、多くの時を生きている年長者達が、無知な幼子を憐れむような……否、拒否と反抗を許さぬような冷たい表情だった。
バシオンのレベルが1600万に届こうかという頃。
扱いはそれまでと大きく変わっていた。
レベル1千万の壁を、完全に乗り越えた強者としてのものに変わった。
それまでにもあった、様々な待遇の好変化や有利な条件などの提示が一気に増えたのである。
テン・ミリオン・オーバーを殺すために投入されてくるという異常変異体モンスター達。
戦術巨獣兵デストロイヤーや、死の弾丸フラッシングビートル。
物理戦闘と魔術戦闘をこなすレッサーデーモンの集団や、物理攻撃を無効化するファントムガード等々。
レベル1千万前後の鬼門と称される危険な存在達。
そんな連中に正面から対応する力を保有し、互角以上に戦い、一定以上の確率で勝利を掴む。
人類の上澄みである。
抗う力を持たない者達にとっては、すがるのに十分な者であり。
そして自分達の命の代わりに、差し出して楽しんで満足してもらうのにまさしく丁度よい連中なのだ。
昔からレベルの高い有望な人材の獲得は重視されてきた。様々な国や地域、組織や集団等から勧誘が来るのは日常。
待遇や報酬は様々だが、根本は同じである。
壁であり生け贄。
それは変わりがない。
差し出す方も差し出される方も分かっている。
暗黙の内に『契約のようなモノ』として誰も口には出さず、しかし、お互いによく分かっているという何とも言えない空気が漂う居心地の微妙な空気感。
それがテン・ミリオン・オーバーとそれを扱う人類社会の有り様だった。
そんな長年続く情勢の中、当時のバシオンが居たのはガーネットガーデンズ皇国と呼ばれる西方の国の一つ。
君主制を敷く、肥沃な大地と水の豊かさの両方に恵まれた鉱物資源を特産とする大国である。
恵まれた土地であるがゆえに、発展しやすい……そしてその分酷い目に逢いやすい国でもあった。
その皇国において中規模の所領を納めるリラー男爵領という地域がある。
バシオンが、領都であるナイトラという街に身を寄せていた頃だった。
バシオンがここを滞在先に選んだ理由は自己強化が目的だった。
報酬目当ての選択。
回復魔法系の魔法書と、魔術鍛造された片手斧を報酬に提示されたからである。
書物は、とあるテン・ミリオン・オーバーが昔に残した魔法書『オーラによる回復と再生の概念』という魔導本であり、キュアウーンズ系やオーラ回復系という継戦能力に関わる代物。
オーラを使う者であれば、読まずとも感覚で自己回復魔法の幾つかを精神に刻み付けられるという、願ったり叶ったりの逸品だ。
習得時間の短縮化もそうだが、魔法発現を理屈よりもイメージで使うバシオンに向いている報酬だった。
もう一つの片手斧はついでのような扱いだがしっかりとした業物である。
大振りな肉厚の造りと、刃物というよりは鈍器に近い徹底的な頑丈さが特徴の逸品。銘を『ハングド』という。
常人なら両手斧になりかねないゴツい斧である。
普通の人間なら慎重に抱えるように持ち運ぶような歪な造りと大した重さだが、レベル1千万を超えるバシオンにはそこらの棒切れと変わらない負担でしかない。
正しく威力と頑丈さの恩恵を受け取れる武装である。
その二つを対価に受け取り、リラー男爵領に属するテン・ミリオン・オーバーとして迎えられ、数日に一度危険なモンスターの駆除や排除、迎撃。
他領への派遣任務、将兵への戦技教育など、荒事しかできないような人間としてはかなりの厚遇を受け取り、過ごしていた。
そしてある日、要請ではなく命令が来た。
逃げたテン・ミリオン・オーバーの一人を、追跡し、討伐せよとの『命令』が来たのだ。
人類社会から『役目を放棄して逃げ出した』とされるテン・ミリオン・オーバーを、リラー男爵領地を代表して、始末せよとの命令が来たのである。
バシオンにそれを通達してきたのは雇用主であるリラー男爵その人だ。
しかし強張った表情を見れば、発令したのは彼ではないと即座に分かる。
リラー男爵はメッセンジャーでしかないのだ。
命じて来たのは彼ではない、その上でもない。
もっと『上』からである。
「……何を言ってるも何も……伝えた通りだ、バシオン殿。速やかに相手を追跡して欲しい、速やかにだ。
居場所は、我らの支配者であらせられるルヴォロア様が配下の方を使ってお知らせくださる。見失う事はないだろう、何としても果たしてほしい。何としてもだ……」
ルヴォロア・ギードギーダル。
この近辺を支配するゴーレム種の超存在である。
推定レベルは4000万を超えるストーンゴーレムであり、バシオンには逆立ちしても勝てない相手だ。
物理強化に編重した存在で、時速2000キロ近い速度でぶっ飛んでくる体長10メートルの魔術保護されたゴーレム種、といえばその凶悪さは伝わるだろう。
しかも高い知性により、近年は風の魔法すら操り始めているという話すらある。
そいつから、降りてきた『命令』である。一国の一地方貴族でしかない男爵に逆らう力はない。
「……男爵。逃げたテンミリオンオーバーってのは人間の、なんだよな……?」
確認のために尋ねるバシオンに相対する壮年の男、領主であるリラー男爵の顔は石のように固かった。
「無論だ。役目を果たそうとせず恩恵だけ受け取って逃げ出したなど……余計な手間をかけてくれる……なんということだ……」
リラー男爵は吐き捨てた。
そこには同じ人間種に対する敬意や同情は一切ない。
当然だ。
リラーはこの領地の責任を負っているのだ。
バシオンにリラー男爵領を代表して、という追跡命令が下ってきたということは、バシオンが失敗したらリラー男爵がその責任を被るという事である。
責任を取るという事は、男爵の領地が、領民が、責任を取らされる、ということである。
そしてルヴォロアというストーンゴーレムは、岩の重みで人間が潰れる際の『音』と『悲鳴』が好みである……とされる相手だ。
これまでにも何度も周辺の川が赤色に染まったという惨い逸話が幾つもある。
男爵としては逃げ出したテン・ミリオン・オーバーに呪詛を吐き捨てるしかない事態だろう。
そんなもん知るか。
俺には関係ない。
何で俺が。
やりたくない……と、バシオンの脳裏には一瞬、そんな言葉がつらつらと浮かんだ。
だが、男爵の追い詰められたような、もう泣き崩れそうな顔を見てしまえば、とても口には出せない。
自分よりも遥かに年上の男が精一杯虚勢をはって何とか事態を解決しよう、自領を守ろうとしているのである。
バシオンは説明を聞くしかなかった。
「……俺がその人を、追っかけていって、連れ戻すとかすれば、問題は無し、って事か? 皆……おとがめ、なし? 何も?」
「……伝えろと言われたので伝えるが、隣の領であるガイナイト子爵領に居たテンミリオンオーバーらしい。君がお役目を果たした後は……果たしてくれた後は向こうが責任を取るそうだ。重ねて言うが、討伐だ、あらゆる手段を持って仕留めてほしい。絶対にだ」
殺せ。
それができればよその地域が責任を取る、できなければこっちの地域が責任を取る。
命で。
それを理解したバシオンは目眩がする勢いだった。
リラー男爵領は人口約6万、その隣であるガイナイト子爵領は人口約8万である。
自分の行動次第でいったいどんな事態が発生するのか、感じた事のない恐怖がじわじわと背中を這ってきた。
足が震える。
気乗りしない、と拒否を匂わせる空気のバシオンに向けられるリラーの目は厳しかった。
そこに失笑が漏れてくる。
それも一つではなく複数。
男爵の執務室に招かれていたバシオンだが、他にも二人ほど先客が居たらしい。
失笑を放ってきたのはその二人の男だった。
「……時間が無いんだよなあ、早くしてくれるか? できないならそう言え。今んとこ役立たず認定だ、死ねよ小僧」
「ノェートラ、こちらの坊や様は一応テンミリオンオーバーだってんだ、闘犬ならぬ闘人だ、お守りして連れて行きゃいいんだ、その後なら死んでも大丈夫だ」
「だってよ小僧。リゲィズがいってんだ。おいでよ、お仕事だぜ、それともお前も逃げるかぃ? いや、それも面白えな!」
会話ではなく、侮辱と指図。
その目付きや態度、言葉使いそして内容は完全にバシオンを『笑顔』にするのに十分だった。
こいつらは間違いなくレベル1千万超えだと感じるバシオンだが……だとしても、とりあえずお返ししようと動いた。
敵対開始である。
「……」
バシオンは二人を無言で観察しつつ、正面からゆっくり歩いて接近していく。
当たり前のように臨戦態勢……否、戦闘態勢に入ったバシオンの殺気に、二人は楽しそうに反応してオーラを纒いだす。
お互いに、そのオーラ発現の滑らかさでだいたいの力量を察知。
バシオンの見て取る限りでは少し、負けている感じだ。
ノェートラと呼ばれた男はレベル1100万から1500万前後、リゲィズと呼ばれた男は1500万から1900万前後と推定。
うん、分が悪い。2対1では。
しかし殺れる。勝ち目はそれなり、そして気に入らない。
では黙ってやる義理はない。
少なくとも一人は確実に仕留められる。
もう一人は長期戦に持ち込めば勝機は十分にある、火炎と雷撃で焼き尽くせばスッキリするだろう。
つまり二人とも殺せる可能性は十分にある。
バシオンはオーラを対生命生物のウイルスオーラに変性させ、当たり前のように拳を叩き込んだ。
一応は、手加減した拳がリゲィズと呼ばれる男に受け止められる。衝撃が炸裂、空気を弾いた。
部屋の中が壊れずに無事に留まる程度には加減したが、殺気はきちんと詰め込んだバシオンの一撃だ。
死んでも構わない、というより殺したくて放った一撃である。
むしろこれで死んでいるなら話を聞く価値がない。
バシオンのその一撃はどうやら、まともな戦力であると評価されたらしい。
「おぉ? こいつこの年でオーラ特性を変えられるのか? 東の鬼属が使うスタイルに似てるな」
「東の出身か? ……滑らかさはそれなりに年季入ってそうだけどな? 生まれは西で育ちは東かぁ? 育ちっていうか野生児っポイけどなあ」
態度は軟化したが、見下した態度は変わってない。
何より人の内面に踏み込んでくるその探るような喋り方は癇に触る。
バシオンは強烈に不快を感じつつ、一応は簡単には死なない戦力を保有する相手であると認識し、一旦拳を引っ込め、二人を警戒したまま男爵に向き直る。
もはや、半分野生動物のやり取りである。
最初にお互いが強敵であると認識し合わないとテン・ミリオン・オーバー同士の話は始まらない。
バシオンは苦々しい顔で口を開いた。
「……で、こいつらは誰? こいつらを殺せってんなら今すぐに殺るけど? 屋敷くらいなら壊れて大丈夫か?」
少々どころかだいぶ考えの足りない子供そのものなバシオンの言葉。
男爵は眉間を押さえつつ呻くように口を開いた。
「……これだからテンミリオンオーバーどもは……確認する前に仕掛けるのは辞めてほしい、と言っても無駄なんだろうな、君達には」
「仕掛けられるような事を口にする方が悪い。それで死ぬのは自己責任だろ」
バシオンはそれを迷いなく口にした。人間として見た場合だいぶ終わっている言葉である。
だが、少なくともバシオンはそれを正しいと信じていた、その方針を正しいと信じていた。
少なくともこの頃は。
幸か不幸か。その幼い考え方を爆笑でもって歓迎したのは殺気の籠った拳を受け止めたリゲィルと、それを見ていたノェートラである。
「いいねぇ……! その割りきり! 人間そうじゃないと! 他人の命なんて気にしてもしょーがない!」
「俺達気が合いそうじゃない! 死ぬまではよろしくねー! 坊や君! あ、人の言葉とか分かる? 人間の言葉のことだよ?」
粘りつくような喋り方をしてくる二人をバシオンは無言で睨み付けた。
嫌な連中だ。
機会があれば殺そう、それから装備は頂こう。
そう思いながら……恐らくは、『お互いにそう思っていると』そう思いながらバシオンはリラー男爵に再度訪ねた。
「……で? こいつらは誰なんです? 殺ったら駄目な連中ですか?」
リラー男爵は疲れたように口を開いた。
「その二人が、ルヴォロア・ギードギーダル様の使いだ。二人の案内で、逃げたテンミリオンオーバーを追跡し始末してくれ……頼む」
頼むから、役目を果たしてくれ。
そういって頭を下げてくるリラー男爵という貴族に、バシオンは凄まじく納得のいかない顔で黙りこんだ。
くそみたいな支配者からの命令で、くそみたいな人間と一緒に、知らない人間を追跡して殺してくるくそみたいな役目。
これがテン・ミリオン・オーバーであるバシオンの生き方である。
「……行けばいいんだろ、できるか分かんないけど。とりあえず行くよ」
まあまあ良くしてもらった領民の色んな人の顔を思い出し、ものすごい渋々とバシオンは受け入れた。
そんなに長く滞在している訳ではないが、悪い思いをあまりしていない街だから拒否する気にはなれない。
ただ、正直、全く納得のいかない状態だった。
「大丈夫! ガキの使いさ、すぐ終わるよ気楽に行こう少年! 行きさえすればそのまま死んでも大丈夫だよ!」
「なあ男爵さん、ちょっとそこらで女と遊んでいくから用意してくれ、あんたの身内以外をヤるから安心してくれよ、街回るの面倒くさいから綺麗所集めてくれない? 一番高い娼館に並べといて」
等と抜かしてくるリゲィルとノェートラいう男をバシオンは、殺したい相手から、処分しておいた方がいい相手に心の中で格下げした。
バシオンが14歳になったばかりの頃である。
被害担当、という言葉がある。
読んで字のごとく、『被害』を担当する、またはさせられる、という意味だ。
それは人、物、集団、場所、と全てに当てはまる言葉。
人類社会という枠組みにおいてもまず例外はない。
広大な世界に、気質や性質、趣味嗜好の違う絶対上位者が散らばって好きにやっている以上、どうしても差はある。
地獄の度合いと種類と格差。
数十年に数度の大災害を嘆くか、数百年に一度の極大の被害を諦めるか、日常の過酷さを受け入れるか、気まぐれの地獄にただ振り回されるか。
提示はあっても選択肢はない。ただ泣くだけ。
被支配層である人間には、いかに生き延びるかが史上命題である期間がとにかく長かった。
たまに格差といえるほどの平和が発生するが、半端に平和が続いた後はだいたい酷い事がやって来る。
『楽園』や『天国』へ連れていかれる時がある。
たくさんの人が移動していく時があるのはそれが理由。帰ってこないのはそこが『幸せ』だから。
とにかく深くは考えない。
考えたら怖いから。だから考えない。
それがこの世界の人類の常識、だった。
しかし実のところ察している者は多かった。
知識や学のなさから、言語化や理論だてた物にできる人間は少なくとも、大半は察していた。特に知識層は。
自分達には救いなんてないと。
知る者も、知らない者も皆薄々は察して黙っている世界。
自分の番がいつ来るか、どんな恐怖がくるのか。
そういう日常を誤魔化して、あるいは現実逃避して下を向いて、なんとか過ごしていたのが人類である。
アダルギデオンという勇者の軍団が、血で血を洗う戦争の末に大半のくそどもを叩き潰して明確な生存圏を確立するまでは。
後方といえる程の地域ができるとは多くの人間は思ってもなかった。
そして、それに慣れる人間が急激に増えることも。
アルテナ王国・南方方面辺境都市・ガーベラスタッフ。傭兵ギルド。
受付嬢の一人であるアイーシャはバシオンからの文句に対応しているところだった。
「何を受けるかは自由なんだろ? なんで駄目なんだ」
「これはあなたに見合う仕事とは思えないのよねえー。本人の実力にあまり見合わない仕事をさせちゃうと、周りがちょっと困るのよ、本来これで経験を積むべき人間が機会を逃しちゃうでしょ?」
依頼を受ける人間の力量や方針により、実際に受諾するかどうかさせるかどうかを判断するのも彼女達の業務の一つだ。
あまりに不似合いな仕事はお互いのためにならないのだ。
だから困るのである。
「郊外の草刈りだ、他に誰も受けてない。俺は真面目にやる、モンスターが出てきたらちゃんと対応もするぞ」
動物系モンスターの溜まり場になりかねない郊外の藪の伐採。
報酬は銅貨20枚。
他の依頼と兼ねてもよい、何日かかってもいいので、きちんと達成して欲しい。
依頼主は都市行政の一部門。
ありふれた都市環境に関わる仕事である。
傭兵というよりは野外業業者にお願いするような内容だ。モンスターの危険があるから一応傭兵ギルドにきた仕事である。
達成難易度というか、業務難易度は完全にE級である。街の近くの仕事なのだから当たり前だ。
だからアイーシャは困っているのだ。
「お願いだから、こっちとかにしてくれない? 野外調査隊の護衛任務とか、巡回商人の同行護衛とか。あなたの実力に見合いそうで実入りのいいのがちゃんとあるんだけど? 護衛や集団での仕事が嫌なら単独での駆除討伐とかもあるのよ?」
「やる仕事は自分で選びたい、あんまり外には行きたくない、日帰りがいい。一人でのんびりやりたい」
自分の要求と意思を押し通そうとするバシオン。
別に間違いではない、どちらかというとアイーシャの方が理屈としては分が悪い。
しかし。
今回は傭兵ギルド側にも理屈としては理由があった。
「いやそうなんだけど……そうなんだけどね、あなたはもうD級の仕事を単独で完遂しちゃった実績があるのよ……」
わりと本当に困るのである。
もっと上のクラスの仕事をキッチリこなせる実績を見せた人間が、低クラスのE級の仕事を、どうしてもやりたいとか言ってくる状況はマジで結構、困るのである。
バシオンは渋い顔をした。
「……どうしても急ぎで人手がちょっと足りないって言うから手伝ったのに……」
「その件は本当にありがとうございます、とても助かりました。お陰で速やかな達成により被害はほぼありません……ところで到着したその日に目標特定して駆除任務完遂して、村人の被害ゼロでその後のアフターでメンタルケアまでしてくるのをあなたの中ではちょっとって言うの?」
「仕事したのに……」
「だからありがとうってば、本当に感謝してるのは本当なの! それはそれで職員としては立場もあるのよ」
アイーシャも渋い顔をした。
というか、ここまでアイーシャが渋るのにはちゃんと理由がある。
前回の仕事の報告書にはありえない現象が記載されているのだ。
周辺被害が無いのに、駆除対象のモンスターの巣だけが完璧に焼かれている。
という一文である。
虫相手に火は定石だが、周りが燃えるのが難点の方法なのだ。
なのに、周りが燃えていない。
普通はありえないのだ。
よほど魔術制御が優れたのか、あるいは極小規模で大火力を出したのか。
いずれにせよ、生半可なオーラ運用能力ではありえない。
というか鈍器で外の警戒蟻を粉砕している跡まであるのだ。
その報告書を読む限り、目の前にいるバシオンと名乗る少年は、強力な魔術制御と物理戦闘能力を両立する最前線向きのオーラ使いなのである。
なんでこんな人間がいきなり出てくるのかがアイーシャには本当に理解不能だった。
同僚のカタリナは犯罪流れではないかと疑っていたが、この戦力ならそもそも犯罪などやる必要すらない。大抵の街では歓迎されるだろう。
て言うか、どこでその技を身に付けて磨いたのかが全く不明だ。
さらにいえばもうひとつ、絶対にスルーできない報告も来ている。
「……オーラ運用ができるのはともかく、教えることができるのは覚えたてでは絶対にありえないのよね……」
村の子供達に暇潰しにオーラ運用の基礎を教えたとあるが、これが問題だった。
バシオンの数日の手解きのお陰で、実際にオーラ発現と運用をやった子供……魔術の発動に成功しちゃった子供が二人出たのだ。
「教えてない。見本を見せただけだ、理屈は苦手だから」
「そのあなたのお手本のおかげで、火の発現と風の発現に成功しちゃった子達が出たって報告書が来てるんだけど? 自分が何をさせたのか分かってる? 教えて2日で魔術発動よ? ありえないんだけど」
アイーシャにしてみればこっちはもっとありえない出来事だ。
オーラとは複合的な意味を持つ言葉であり、一概に、これ、と定義できるものではない。
オーラとは何か? と問うと、魔力という者もいれば、気や闘気という者もいるし、霊力や妖力という者もいれば、物理法則への干渉能力という者もいる。
なんか分かんないけど便利な力! とか抜かす輩まで普通に居る。
全員がそれぞれ同じものを持っているのではなく。
それぞれが千差万別のエネルギーや才能を持っているのであり、それぞれが得意な発現のさせ方や、得意な運用の仕方というものがあるのだ。
それこそ無数にある。
例えば、火、という現象を一つ取ってもやり方は数多い。対象を燃やす者、火を投げる者、空間を熱する者、火を纏う者など。
瞬間的な発現なのか、持続する現象なのか、その強弱から物理方向か、精神方向かですら細かく別れていく。
そんな余りにも膨大な不可思議な現象が起こせる能力を、ある程度の方向性でまとめて、運用発現する力を獲得する際の説明として、オーラと呼んでいるだけである。
たとえば戦場皇帝として名高いガドラム・ゴアはこの世界でも屈指の物理攻撃力と防御力を誇る戦士だ。
そのオーラ運用方針は、身体強化と、対物理防御、対魔法防御へ偏り気味。
力技ででいろんな状況を打破できる能力を保有する強力な戦士だが、やることはシンプルだ。
その大剛力で、魔界貴族の頭を肉弾戦で捻りきったという逸話は、男の子の憧れである
一方で、時渡りのアトレイユと名高い大魔法使い、アトレイユ・イヴァーケスは勇者バシオンをして勝てないとする超級の魔法発現能力を保有する。
しかし、強いのは確かだが、彼女の方針は物理的な戦闘能力はそれなりとしつつ、対応能力の広さと殲滅能力にある。
末期では、一秒ほど時を戻せるのではないかと噂された人類最強の魔法使いだ。
また、とんでもない方面に伸びた結果、死者の蘇生や復活を成し遂げるまでに成長したフィデリアーニという枢機卿も居る。
恐ろしいことに、神をこれっっぽっちも信じてないにも関わらずガチの奇跡を自分のオーラで成し遂げる怪物神官である。
こんなとんでもない奴は神の使徒でないと面子が立たないからという理由で、大勢力宗教組織の枢機卿にさせられた男だ。
何より理不尽なのがこのフィデリアーニという神官、素手の殴りあいが一番強いという点である。
移動能力や殲滅能力こそ鈍足かつ不足ぎみたが、アダルギデオンで一番どつき合いに強いのはこの男ではないかとすら言われている程だ。
こんな風に、とにかく千差万別に分かれまくっているのがオーラ運用の世界である。
だからそれを教えるのにはとんでもない手間と苦労がかかるものなのだ。
そもそも教える側が分かってない場合すら、珍しくないという現状である。
数日のちょっとしたお手本だけで、二人の子供が自身のオーラを小さいながらも火と風の現象として発現させてしまうのは完全なる異常事態である。
だというのに、それを、教えてない、見せただけ。とかいわれても指導者に恵まれず成長機会を逃した人間からすれば、ふざけんなとしかいいようがないような話だ。
「……少なくともその二人は将来明るいでしょうね、オーラ運用がもう出来るなら、レベル5万から10万はほぼ確定だもの」
アイーシャは目の前のフードを被った、自称バシオン少年が無自覚にやってる事の危険度に気付いていない事を危惧した。
その子供たちはよっぽど劣悪な経験不足と努力不足にならない限りは、どこの貴族領や国でも、精鋭兵士くらいにはなれるはずだ。
小さな村の出身としては破格の出世だろう。
鍛え方や環境によっては何ならレベル100万が視野に入ってくる。
ましてや今は。
ましてや、今は、バシオン・イヴァーケス達アダルギデオンのおかげで、超存在達を相手にした絶望的な派遣軍も、全滅祭りと揶揄された戦役も、ほぼ無くなっているのだ。
この自称バシオンが教えたその子供達の安定した人生はほぼ確定だ。
自分も勇者の隣で戦いたいと、憧れから強さを渇望していた少女の一人だったアイーシャは……すでに自分に見切りをつけている大人であるアイーシャは思わず聞いていた。
自分も今からでも強くなれるだろうか?
「どうやったの? というかどう教育したらそうなるの?」
「教育って……だから手本を見せたんだよ。それだけだ」
「そんな訳ないでしょ。ていうか聞いた事ないわよ、そんなの」
手の内を見せない、という事かとアイーシャは解釈するが、バシオンにはそんなつもりは一切ない。
バシオンはイメージでしか話してないため伝わっていないが、バシオンのやってる事は本当に見せただけ、それだけである。
しかし実際には頭がおかしい事はやっているのだ。
バシオンの魔法としての現象は『絶対に発動する現象だという現実』が、ある。
数限りない実戦に、強制的に磨きあげられたバシオンのオーラ運用は、もはや揺らぎや無駄が全くない。
それどころか明確に、必ず、絶対に、何があっても、発生する現象として定義させているほど強固な概念である。
極悪な魔法妨害や格上の放ってくる空間汚染の中でも、必ず発現させるように強固な認識でもって発生させる現象なのである。
言うなれば、絶対にやれる人間が、絶対に発生する現象を、柔軟性と成長性の塊である子供の前で実演したのだ。
できる、というイメージで概念を書き換えられたとするとわかりやすい。
勘やセンス、強い感受性のある子供なら、それこそ数日あればバシオンの定義するイメージや概念に引っ張られて、達成するイメージを自分の中や空間に描き出すものだ。
後は自分でやってしまうだけである。
「……ねえ、あなた一回、レベル推定任務を受けてみない……?」
この子もしかしたら、まさかだけどレベル100万とか、を超えるミリオンオーバーの可能性が? もしそうなら、できる事ならもっと良い環境に……等と考えるアイーシャに、怒鳴り声が聞こえてきた。
目の前のバシオンからではない、すこし離れたところからだった。
「いい加減にしろよ!? 俺のレベル幾つだと思ってんだ!? レベル105万だぞ、もうA級になっててもおかしくねえだろ!? なんでまだB級なんだよ!? なんで今さらこんなカスみたいな仕事をしなきゃならねーんだよ!」
怒鳴り散らしているのは20代から30代になりかけの鍛えられた男だった。
怒鳴られているのはカタリナである。
「すでに、ご説明した通りです。傭兵ギルドにおけるクラスの昇格は当ギルド内における規定と規約により条件を満たした方を、上げる事もある、と定めております。特定の条件を達成した方を、必ずしも上げる、という事はございません」
いつもの間延びしたような喋り方はなく、極めて事務的な返答だった。
そしてそれは怒鳴る男の神経を逆撫でしている、というか、男はもう何を言われても気に入らないほどに頭に血が昇っていたようだ。
「推薦状の話は!? 実績のある人間は、実績とレベルを各支部や偉いさんに送ってより上の環境を与えるって話だろ!? そういう契約だろここはよ!? 何のためにこんな田舎で泥水すすってると思ってんだ!? 3ヶ月も経つのに送ったところはどこからも返事が来ねえなんてありえねえ!」
カタリナは事務的な返答に終始した。
「……ですから、何度も申し上げておりますが、推薦状はお出ししましたが、内容は保証しません。私ども傭兵ギルドでは登録された方の実績や推定レベルを紹介してお望みの所へ推薦をするシステムが確かにございます、しかしそれを受け取った側が、必ず雇用や採用をするかどうかの保証は私どもが判断する話ではなく……」
「ふざけんな! 知ってるんだぞ! 俺の素行にマイナス査定つけやがっただろうが!」
食い気味で唾を飛ばしながら食って掛かってくる男に、さすがにカタリナも目を細めた。
少し、声に冷たいものが混ざった。
「……マイナス査定というものはありません。個人的な個別の説明を差し控えますが、例えば取引代金の不払いや戦闘能力を盾に異性に不健全な関係を迫ったり、不適切な行いをする、などの行為がありましたら、私どもとしてはそれらを推薦状に『実績』として記載する事はございます。あくまでも例えばですが」
「……なっ、!? て、てめ……!」
カタリナの、シレッと説明をこなした内容に男は絶句し、そして周りからは失笑が漏れ出る。
今のはつまり、私の目の前で怒鳴るこいつは買い物や取引で不払いや踏み倒しをしたり、異性に対して力や立場で関係を迫ったりした、くそ男です。採用されないのは自身のせいですよ。
という事を暴露されたようなもんである。
「こ、の野郎……! 俺に恥をかかせやがったな!?」
反論ではなく逆ギレをするのは、まさしく男に心当たりがあるであろう状況だが。男はまるで自分が被害者のような怒りを纏い出した。
「個別の説明は差し控えると申しました、貴方様の事は申しておりません」
「ふざけやがって……!? 俺に恥をかかせやがっただと!? 俺は……! このムーゼント様は、アダルギデオンの幹部になる男だぞ!? 下らねえ騒ぎで足を引っ張るな!」
別に確約も保証もない、よくある類いだ。ハッタリである。
ハッタリを効かせてでも周りを黙らせたい輩がよく使う手法なのだ。
看板を利用するためか、憧れか、威圧目的か。
皇国でロイヤルガードになる男だ、とか、帝国で新興貴族になる男だとか、色々あるが、やはり一段上の扱いはアダルギデオンの看板だろう。
言わずと知れた人類最強の戦闘集団。
ここに入る事を目指す人間はまあ多い。血の気の荒い人間は特に。
実際『本当』にレベル100万以上なら、可能性はあるにはある。
しかし。
「……はっ? あんたごときが?」
これまでの事務的なやり取りとは違う、完全なる嘲笑がカタリナから出た。
勇者に命を救われた経験のある娘である。
カタリナにしてみれば勇者バシオンの軍団は、救世主そのものだ。
その自分の前でのたまったのだ。
アダルギデオン幹部? こいつが?
出てくる言葉はただ一つ。このアホが、である。
その言葉はいろんな人間の空気を変えた、聞いた本人には敵対として、周りの人間には荒事のスイッチとして。
アイーシャはすでに、常駐する高レベルの職員に合図を出している。
自称でレベル100万を制圧するのは大変な事だが、まさか放置する訳にもいかない。
一気に緊張感が高まるギルド内。
それでも男はギリギリで、ギリギリで、まだ踏みとどまって……いや、かなり危うい状態だった。
周囲から注目を集める中で恥をかかせられた、というこの状況が、男のプライドをガリガリと刺激していた。
昔はいざ知らず、今ではレベルの高い人間の横暴はかなり通りにくい社会になってきている。
ここで怒り任せにギルド受付の少女に暴行ましてや、殺害などしてしまえば、ムーゼントなる男は間違いなく制裁を受けるだろう。
アダルギデオンから布告が出ているのである。
レベルの高い人間が、人類の敵となった時の対処を、勇者バシオンが定めているのだ。
レベルを傘に着て横暴な振る舞い断じて許さず。
テンミリオンオーバーを派遣してでも始末する。足りなければ大幹部が、それでも足りなければバシオンが出向く。
と、レベル億超えの大幹部や勇者本人を派遣させてでも、必ずケジメをつけさせると通達が各国に出ているのだ。
これのおかげで、今は驚くほど治安は落ち着いているのが現状である。
しかし、それでもやはりやらかす人間は出る。
何よりムーゼントなる男は、もはやオーラを纏い出していた。
状況が動いた。
何がきっかけは正確には定かではない。
だが、ムーゼントにとっては、ギルドの職員が緊張した顔で近づいてくるのを見た瞬間にスイッチが入った気がした。
プライドか、自尊心か、ストレスか。
謝罪ではなく、危険人物扱いされている、と認識した瞬間。
「ふざけんじゃねえぞぉ! くそアマがあああっ!?」
ムーゼントの全力の拳がカタリナに直撃する寸前で、バシオンが、それを横から掴んで止めた。
否、握り潰した。
「……っ?!? うぎゃああああぁっっむぐっ!??」
ギルド内にムーゼントなる男の絶叫が響いた。そして顔面を掴まれてあっという間に悲鳴も止まる。
バシオンがムーゼントの顔面を掴んで、いつでも止めをさせる状態にしているのである。
「っ!? え、? ちょ、? ……嘘でしょ?! いつの間に……!?」
状況に驚愕する人間が多いが、最も驚いているのはアイーシャである。
アイーシャが合図を出した職員より、遠い位置にいたはずのバシオンが……自分の隣に居たはずのバシオン少年が、数メートルはある距離をいきなりワープでもしたかの如く位置を変えて、ムーゼントを止めたのである。
ムーゼントの凶行があっという間すぎて、誰も間に合わないタイミングだった。
そのはずの位置関係を、バシオンだけが消して対応した。
その事実を理解するアイーシャは絶句する。
一方で必死でバシオンを攻撃するムーゼントだが、ただ顔面を掴まれているだけですでに窒息寸前だった。
信じられない怪力で掴まれており、びくともしないどころか何もできない。
脱出や抵抗はおろか、オーラ運用がまったく上手くいかない。
強化も回復も魔術発動も、何もできない。
できるのは、掴んできているバシオンの指の隙間から、バシオンのガラス玉のような捕食者みたいな目を見せられる事だけである。
「……ぶっぐぉ……ぶへっ……ぉご……」
ついには血反吐を漏らして気絶したムーゼントを、バシオンは全く油断をしないまま、掴んだままアイーシャを振り返る。
「両腕と両足と両目を潰しておく?」
アイーシャはめちゃくちゃデカイ声で止めた。
「いやそれ、やりすぎだから!」
アイーシャのその叫びでようやく周りが騒がしく動き出した。
バシオンは後日、支部長に呼ばれて来ることになった。
いきなり感想と評価が激増して震えてます。
あ、雰囲気大事にして感想返信ネタバレしないように返信は自重してます。
自分は感想返信でなんでも書いてしまう方なので。
でも何回もめちゃめちゃ読んでます。嬉しくてニヤニヤしてます。考察してくださる方が多くて楽しんでます。
本当にありがとうございます。
厳しいご意見もありがとうです。読んでくださりしかも感想や意見までもらえるのは本当に感謝です。
全て目を通してます。
て言うか筋の通った意見が多くて納得しかない。
でももうちょっとこの造りで行かせてくれ! お願い!
それと、誤字の訂正も本当にありがとうです。なんで気づかないんだろう、自分で不思議。
今回は定番のギルドの先輩からの手痛い挨拶でした。
やっとやれたよ。
それと意外と最前線や今の現状を気になさる方が多いので、予定変更して、ちょっと次辺りの話をそこら辺を書くかもしれません。
ちなみに擁護してくださる方が多くてすごく嬉しいですが、改めて見返すと、バシオンはタハリ防衛戦ではやはり無能と言われても仕方ない気がします。
もう少し頑張ってる感じで書いてあげられなかったかなあとちょっと後悔です。
つか後書き長えよ。
分かりにくい造りの作品を読んでくれてありがとう!
感謝です!