インクリメンタル☆アルケミスト   作:はめるん用

10 / 88
努力は報われた瞬間に容赦なく過去の物になる。

 クラフト要素のあるゲームで素材集めをしていると、ときどき嬉しい想定外が起きることもある。

 

 例えば、鉄が欲しくて鉄鉱石の採掘に行ったら見知らぬ鉱床を見つけて銀を手に入れたり。

 例えば、目的の素材を落とすモンスターを狩りに行く道中で偶然レアなモンスターに遭遇したり。

 

 いまは屋敷と庭を往復するだけの生活を続けている俺も、成長して外の世界に踏み出せば未知との出会いに溢れている……そんなふうに考えていたのだが、まさかのバケツの中から出てきたよ。それもふたつも。

 

 その名も【汚水】と【無色の砂】というアイテムだ! 名前だけだと廃棄物の気配しかしねぇな! 

 

 だがしかし、説明文を読んでそんな評価もガラリと一変。まずは汚水。鉱石などの錬成に使用したことで魔力元素がデタラメに結合して汚染された水。浄化することで再利用できるほか、【腐食反応液】の素材にもなる……と書かれている。

 いったいなんのこっちゃ? と悩んで数秒、いわゆるデバフ装備だと気づく俺。インセクトが虫の化け物だというのなら、当然頑丈な外骨格に身を包んでいて当たり前。少なくとも警備隊が扱える程度の銃火器は通用しない強度で、だからこそFAなる専用装備を開発する必要があったんだから。

 

 そして無色の砂のほうは、というと。錬成の過程で魔力元素を失った状態の砂で、自然の砂よりも属性魔力の浸透率が高く、火の魔力と反応して【高純度のガラス】や【属性ガラス繊維】を錬成できる……らしい。

 属性ガラス繊維ですってよ! 腐食反応液と違ってどういう道具の素材になるのかサッパリわからんが、なかなかソソる名称である。これ、伝わる人とそうでない人で温度差が激しくなる話だけど、俺、ファンタジーでもSFでも“特殊加工された強化◯◯装甲”みたいな設定が好きなんだよね〜! 

 

 

 と、ここまでは副産物の話。

 

 もちろんメインのほうでも収穫はいろいろあった。余った素材を回収すると、自動的に統合されるとかね。バケツから回収した砕石、20個だったのがインベントリに戻したら14個になっていた。単純計算で3割ほど削れていたってことになるのかな? あんな方法でよく3割も削れたな……。

 そして検証。枝を2本に折ってひとつひとつ収納。片方だけではインベントリ内の所持数は変化せず、両方収納してようやく1本として加算された。感覚的にはインベントリ内部に存在する気配はするのだが、アイテムひとつとして判定される質量がないと────数字で表すなら小数点以下の状態だとアクセスできないようだ。

 

 そこまではいい。

 

 だが本命である魔力石の粉末が問題だった。

 

 少ねぇんだわ、回収できた量が案の定さ……。インベントリの表記は明るいので間違いなく所持している、しかし肝心の所持数は永遠のゼロですわよ。

 回収作業そのものは簡単だったんだけどね、一晩寝て朝起きたら水面にキラキラが浮いてたから。スキルに頼らなくても物理的に集めることができたのは嬉しい誤算だったのになぁ。

 

 効率的ってのはあくまで錬金術を使う場合であって、手作業での回収はサポート対象外だってさ! ちゃんちゃん♪

 

 クソが……作業が長引くからついついステータスツリーのほうで【持久力強化】をひとつ取っちゃったよ。貴重な強化ポイントだったのに、誘惑に勝てなかったよ……。

 これで俺の持久力は100から105に強化された。なんとなく同じ作業量でも気分が楽になったかも? ぐらいの変化だったが、気休め程度なら身体への負荷もそこまで変わらないだろう。

 

 ……良さそうなスキル、ほかにもあったんだけどね。ステータスツリーに。特に【オートクラフト】とか【インベントリ内クラフト】とか詳しい説明が見られなくても便利だってわかるわ。

 

 

 だが、結果が出ればモチベーションも上がる。

 

 毎日毎日コツコツコツコツ地道に地道に部屋に持ち込んだバケツに砕石と水を加えてグルグルグルグル朝昼晩を毎日毎日続けていれば、ついには必要数の魔力石の粉末が揃うってワケよ! ちなみに入れ物はまだ自作できないので適当な空き瓶をメイドさんに用意してもらいました。感謝。

 

 

 そしてスキルをアンロックしたなら、そりゃもう試さないワケにはいくめぇ? 

 

 

 砕石を握る。

 

 スイッチを押すように意識を集中。

 

 拳を包み込む錬成陣という名の魔法陣。

 

 変化する手の中の感触。

 

 無色の砂を回収。

 

 さらに錬成を重ねる。

 

 結んで開いた手の上に米粒ほどの輝き。

 

 もちろんアイテム1個としてカウントされるには足りていないが、それでも……俺が、クラフトした魔力石の粉末だ。米粒サイズで粉末とはこれ如何に? 

 

 ま、いいか。目的のスキルは無事ゲット出来たんだし。

 

 しかし、なんというか。

 

 

「……時間がかかるのは覚悟の上だったけど、まさかスキルひとつアンロックするのにリアル2年もかかるとは」

 

 

 駆け出しチート錬金術士コレオ・ホーエンハイム、無事5歳になりました! なげぇよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。