通信技術はいいねぇ。
人類が産み出した、技術の極みだよ。
基本的にアクセスポイントありきのシステムなので個人が自由に持ち歩くことはできないが、そもそも遠距離通信の技術が映像付きで確立されているだけで便利も便利。
それに一部の公共施設はインカムみたいなの配布されてるし。病院とか。ナースコールの有無は冗談抜きで患者の生存率に関わると思う。もしも自分がケガしたり病気になったりしたら、ってときの安心感がダンチよ。
で。
公共施設には駅も含まれているもので。
「では、身分証明証となるものがあればご提示ください」
「お願いします」
「はい……コレオ、ホーエンハイム様……と。本日の御利用は公務ですか? 私信ですか?」
「学校に関する報告はどちらに含まれますか?」
「貴族の場合、グランマガザンでの6年間の学習は、特別な事情を除き義務ですので公務あつかいになりますね」
「特別な事情、ですか」
「持病などにより学園都市での生活が困難であること。ほかには、平民と結婚することで貴族籍から抜けることが決定している場合になります」
「ウチの国って結構、自由恋愛に寛容ですよね」
「個人的には良いことだと思います。えーと、それでですね。公務による通信となりますので通話ログは一定期間保存され、有事の際には第三者による確認が行われることに同意していただきます」
第三者による確認、ね。
そういうことなら。
「うーん、別に顔を合わせて報告するほどの内容ではないので……伝言でお願いできますか?」
「伝言ですね。どのような内容で送信するのかは決まっていますか?」
「はい。まずひとつ、下宿先が見つかったこと」
「下宿先が……見つかった、と」
「ふたつ。現役で工房を開いてるお爺さんの教え子になったこと」
「現役の、ご年配の錬金術士の方に……と」
「さいご。同世代のパイロットの女の子も同じ宿にいて、正直ビビってると」
「同世代の方との共同生活に……不安を……」
「あ、すみません。お手数ですがビビってるはそのまま伝えてもらえますか? あまり深刻に受け止められても困るので」
「ふふッ、畏まりました。正直ビビってると、そのままお伝えさせていただきます」
これで通じるかな?
いちいち報告するほどじゃない内容を、わざわざ言葉通りに伝えてくれるように頼んだ。たぶん、父ロジャーならなにかあったと察してくれると思うんだけど。いまさら女の子との共同生活ぐらいで俺がビビるかよ。
そんな小細工もそれはそれとして。
「そういえば、お姉さんも学園には通学していたんですか?」
「えぇ、していましたよ。もっとも、パイロットとして働いていたのは2年ほどで、子どもが産まれてからはインセクトとの戦闘からは遠ざかっていましたが」
「これは学園生の後輩としてお聞きしたいんですけど、ぶっちゃけた話……男子生徒たちの、錬金術士たちからされて“いや、ないわ〜”って思う案件って、どんなのありました?」
「あら? それは、あくまで、先輩としての話を聞きたいってことでいいのかしら?」
おや、口調。
意外とノリのいい大人多いな我が祖国よ。
「別にモテたいとかそういう話じゃなくて、やっぱりパイロットの皆さんは命懸けで戦ってくれてるワケですし。送り出す側として、やっぱり相手を思いやる気持ちは大事かな〜、と」
「あら〜、イイこと言うじゃない。それだけでコレオくんなら心配ないと思うわよ? 男たちってホント……3年生ぐらいまでは良かったんだけどねぇ〜」
「面白い話をしているな。私も混ぜろよ。で、男子どもにされて鬱陶しかったことだな? そうだな、当時はお互いに学生だったし、大抵のことは笑って許せるが……まぁ、やっぱりアレだろうな。武装や装甲にいらん改造を勝手にするのは迷惑でしかなかったよ」
さぁ〜ついに始まりましたドキッ☆パイロットだらけの本音暴露大会の会場はこちらでぇ〜すッ!!
…………。
…………。
なるほど、つまり。
「頼んでもいないことをドヤ顔で押し付けてくる前に、注文した内容で普通にクラフトしてくれよ……と」
「実用性があるならまだ良かったんだけど」
「見た目ばかり拘られてもな」
「無駄に属性盛られて魔力を食われたりとか」
「どう驚いた? ボク凄いでしょ? って顔がムリ」
「なんと言うか……普通に相談しながら、試作とか一緒に動作を確かめたりとか、そういうスタンスなら普通に勘違いもスレ違いも防げた感じで」
『『『『そうだよ』』』』
「ですよねー。でも一応、パイロットの皆さんって武装と魔力が繋がると、使い方とかはわかるんですよね?」
「あー、まぁ……そうね、うん」
「そういう問題じゃないよ、と」
「そう、だな……いや、なんと言えばいいか」
「別にキミが誠実にクラフトしてれば、特にパイロットの子たちと衝突するようなことにはならないから安心していいよ」
「なるほど……。仕事には誠実に、確かに1番重要なことですね」
▲▼▲▼
報告ついでに面白い話聞けてよかった。
やはり現場の声は大事だな。ロマンを求めて武器を再現するにしても、まずはパイロット側にとって必要であることが大事。武器は集めて楽しいコレクションじゃない、使うために作るんですよ。
「よぅ。今日も乗るかい?」
「いえ、下宿先のリットン親方から自転車借りてるんで」
どうせインベントリ機能は見破られたので、そのへんを駆使して放置された錆自転車を新品同様に仕上げたら無事「それも人前で使うの禁止な」とお墨付きをいただいたぜ!
いやさすがの俺だって人前で堂々とインベントリは使わんて。親方にはバレてるから遠慮しないだけで。それにしても便利な言葉だぜギフテッド。散々振り回されてるけど、チートの隠れ蓑として優秀だわ。
さて、報告は終わったし。
パイロット目線の話も聞けたし。
帰ってディアさんの武装について打ち合わせでもするか!
スティーリアさんとカティさんのときは状況がちょっと特殊だったからな。普通の錬金術と、普通のクラフトを、普通? のパイロットと一緒に実践するとしよう。