そこにみっつのハンドガンがあるじゃろ?
ひとつはリットン親方に借りた錬成台でクラフトしたハンドガン。
ひとつはチートスキルの武器バンドルから呼び出したハンドガン。
ひとつはスキルに頼らず俺自身の技術と経験で作ったハンドガン。
「ま、俺の自前のヤツは論外として────」
「そう卑下するこたぁねぇよ。作って終わり、じゃなくて指先で細かく魔力の流れを修整してあるだけあって充分売り物になる出来栄えだ。あとは回数こなして経験積んで、じっくり完成度を高めりゃいい」
「普通の鉄製なのでインセクト相手じゃ豆鉄砲にもなりませんけどね〜。まぁ、基礎なんて生涯通して学び続けるぐらいで丁度いいってことで」
「儂より年寄りみてぇなこと言ってんじゃねぇよガキが。で……これがギフトを使ってクラフトしたヤツか。とんでもねぇ完成度だな、錬成陣と魔法文字を読み解いてコピーしたいぐらいだ。まぁムリなんだが」
「そうなんですか?」
「努力では越えられん壁の先にある技術だぞ? そうでなけりゃギフトなんて御大層な言い方してねぇだろ」
ハッキリと“こういうことが出来ます”ってギフトの説明は船長の未来視のような能力しか知らないが……確かにアレは努力では追いつけないよなぁ。第六感的な能力なら鍛えられるかもしれんけど。
……ん?
まてよ、それなら。
「そんな明確な区別があるなら自称ギフテッドなんて出てこなさそうなもんですけど」
「それは知らん。そうなるってことは、そうなる理由がなんかあるんだろ。そもそも本物と言われるような連中だって、物心ついたときから特別な能力があったヤツもいれば、大人になってから目覚めたヤツもいるしな」
「つまり考えるだけ時間のムダですね。それじゃあ親方、次のクラフトいきますよー」
…………。
…………。
「槍のほうにも魔法文字を刻んで弾丸にするたぁ、なかなかデタラメな武器を思いつくじゃねぇか! 儂は嫌いじゃないぞ、こういうのも」
「Fメタルの補強を最低限にして、工場のラインクラフトでも生産できるか、せめてメンテナンスの問題を片付けたかったんですよ。幸いにして知り合いになれた領主の方々にも熟練の錬金術士の方がいらっしゃったので、一応正式に採用されたって感じですね」
「そもそも装甲パーツの無い候補生すら戦場に立たせるって発想が────いや、そういうことか。なるほど、大森林壁の近くで行儀見習いなんぞさせるとは、ホーエンハイム家の問題児って噂も全部が間違いってワケじゃなさそうだな?」
これ行儀見習い先がテナクス戦闘国家だってバレたな?
リットン親方は信用できるからと話し過ぎたか。だがやはりこういう会話も凄く勉強になる。テナクスと比較した場合、フォルティス全域で外部からの侵攻や襲撃が少ないのだろう。だから需要と供給の違いから大森林壁という単語まで出てきたんじゃないかな。
カティさんは半信半疑というか、情報として管理されているから存在する前提で一応……みたいなところがあった。だがリットン親方の話し方はもっと自然なイントネーションみたいな気がする。単に老練の錬金術士だからってそういうバイアスが働いてるだけかもしれんが。
ふーむ。
大森林壁について聞くか黙するか。
ここで日和るは女々か?
女々じゃ。
「親方は大森林壁についてはご存知なんですか?」
「それは儂より先に父親に聞け」
「忙しくて聞きそびれたんですよ」
「だったら落ち着いたら1度、家に帰れ。心配せんでも戻ってくんなとは言わねぇ。半端な知識は毒になる。だが、そうだな……師匠らしく、弟子にひとつ、ダメ出しぐらいはしてやろう。このアイスジャベリンとやらじゃ、大森林壁の麓を彷徨いてるインセクトにゃカスリ傷の1ミリも与えられねぇよ。せいぜい枯れ葉が擦れたぐらいの扱いが関の山だな」
「つまり敵対すらできない、と」
「良かったなバカ弟子。お前じゃ戦いが起きないからきっと生きて帰ってこれるぞ。命は無駄遣いしなけりゃ何十年も使えるんだ、錬金術士として資源は大事にしねぇとダメだろう?」
つまり大森林壁とやらの近くには、あの幼体ヨロイムカデに近いレベルのインセクトが普通に闊歩していると。
なんで人間界は滅んでないんだろうな? 実は大森林壁の向こうがメチャクチャ広くて、人類の生存圏は星の表面の極一部だけ説。あると思います!
しかし、これだけ詳しいならリットン親方は“生き残り”の可能性あるぞ。いっそのことヨロイムカデの外骨格とか見せてみようか?
もう少し食い込んでいろんな話を聞かせてもらえるようになったら、のお楽しみだね。
▲▼▲▼
「お掃除お疲れさん。で、こちらがディアさん専用ハンドガンをクラフトするための第一歩だよ。まだ普通の鉄製のハンドガンだけどね」
「あら……? 3種類、あるのですか? どれも魔力の気配に差異があるように……ですが、どれもコレオ様の魔力でクラフトされた物なのですね」
「ひとつはテーブルクラフト、ひとつはハンドクラフト、そしてひとつが特別なとっておき。ま、実際に触れてみて良さげなヤツをベースにしよう」
「では、失礼して……。ふむ、なるほど……これは、えぇ……」
吟味、してますなぁ。
ときにはマガジンを抜いて銃口まで覗き込んで。
ちょっと意外。完成度が一番高いチートスキルでクラフトしたのが選ばれると思ったんだけど。
「こちらのハンドガンが……わたくしは、1番、良いモノだと感じました」
選ばれたのは……え? 自力でクラフトしたハンドガン? そんなバカな……リットン親方は褒めてくれたけど、この中じゃ1番品質が低いのに。
「理由を聞いてもいいかな?」
「品質がほかふたつと比較して劣る、のは理解しています。ですが、使い手の、パイロットのことを想いクラフトされたこともまた理解できましたので」
「品質の違いをわかってるのにそれなんだ……」
「わたくしが気に入った物を選んで良い。そう仰ったのはコレオ様ですよ? その上で、わたくしはコレを選びました」
「わかった。全力を尽くすよ。それで、まずはどうしよう」
「そうですね……わたくしのギフ」
「────泥水で顔洗って出直してきやがれッ!! テメェらみてぇなトンチキどもに作ってやる武器なんざねぇんだよッ!!」
「親方ッ?!」
「コレオ様ッ! あちらをッ! 外ですッ!」