次に備えていまを知る。
どの分野でも大事なことだ。
「だから、ハンドガンを解体する必要があったんですね。どれ……うん、当たり前だけどバレルユニットがボロボロだねぇ。ほとんど灰になってら」
Fメタルですらない、ただの人間用に拵えた鉄製のハンドガンだもの。そりゃあギフテッドの魔力に耐えられる、なんて期待するほうが間違ってるだろう。
戦闘系のギフトって全部あんな感じなのかな? もしそうならヨロイムカデ級のインセクトが侵攻してきても希望が持てるな。もちろんディアさんのギフトに耐えられる装備を作れるなら、という前提だけど。
アルケミストなら、パイロットの能力を引き出せなければ!
そのためにもまずは、FA用ハンドガンをスキルから引っ張ってきて見本にしよう。テナクスのときとは違って装甲パーツ無しの候補生向けって制限が無いんだ、遠慮なく全力でやったるでぇ!
とりま、邪魔だから灰を片付ける……いや、バレルの損傷具合を確かめたらヒントが掴めたりするかな? 現物が目の前に残っているワケだし、わからないなりに調べてみるのも勉強になるかも。
じゃけん灰をどげんかせんと……そうか、インベントリに収納すれば綺麗に取り除けるじゃん。パーツが崩れるのも防げるし、俺にしては冴えてるんじゃない?
【灰】
魔力反応の限界を超えた錬成廃棄物。時間経過で自然と世界に還元される。壺や木箱など簡単な容器で保存が可能であり、果樹や野菜を育てるための肥料にも使える。それ以外の用途は存在してはならない。
そうかー、肥料にしか使えないのかー。
インベントリの説明がそれ以外に使うなって言ってんだから肥料にしか使えないんだろう。なにもおかしいことはないな、ヨシッ!
そんなことよりハンドガンだべ。
錬鉄、銅、魔力石……とりあえず☆1Fメタルで☆1ハンドガン作るか。ついでに☆2Fメタル用に鍛鋼インゴットもオートクラフトに設定しておこう。
上位素材に手をつけると急に素材の消耗が跳ね上がるけれど、それもまたクラフトの楽しみだ。魔力回復力にも強化ポイント割り振ったおかげで石材インベントリの数字もガンガン増えているし、貯めた素材は派手に使ってナンボよ。
でも鉄も銅も魔力石も同じ石材ルートから引っ張るんよな……石材の容量も2000までは増やしたけど、使い道の多い素材が溶けるのってマジで一瞬なんだよな……。
で。
スキルなので完成はレンチンより早いぜ!
これをそのまま渡してもいいのかもしれないが、ディアさんもわざわざ手作りのほうを選んでくれたのだ。それを出来合いで誤魔化すのは普通に失礼なのでもちろん却下。あくまで見本として、錬成陣を展開して参考にするのみ。
そもそも壊れたハンドガンの損傷具合を確認しておいてなんも対策してない既製品を渡すとか手抜きだろ。バレルユニットにデカい負荷がかかることは確認済みなんだから、せめてそこを補強してカスタマイズしてから渡さんと。
そうだな。
まずは単純にFメタルを圧縮して重ねよう。
素材の圧縮は実家の穴掘りでさんざんやったからコツは知っている。もちろん土と金属では求められる魔力量も操作技術も違うけど、こちとら汚染された土を何年もクラフトしてきた熟練者ぞ? タダの金属なんぞ鎧袖一触よッ!
えーと、最初から密度の高い円柱をクラフトすると穴空けるの大変だから……バレル状にクラフトしてから圧縮して、その上に薄皮を重ねるように巻き付けて補強してみるか。
魔力の流れだけに頼らなくても、中が真っ直ぐなことを調べる道具もあることだし。いきなり完成品を作れるとは思わず、試作を繰り返してデータとか集めながらじっくり作業を進めよう。
…………。
…………。
「よし、バレル強化ハンドガン第一号完成! さぁ〜てぇ〜? まずは魔力の流れを確認して……うん、歪む! バレルのとこだけFメタル重ねたからバランス悪いんだな……前だけ重てぇしよ……」
知ってた。
こんな簡単な改造で問題を解決できるならエンジニアは誰も苦労なんてしなかろうて。
なんなら現物を仕上げてからが本番、求められる性能とユーザーの使い心地のバランス調整が1番大変まであるだろ。
ファンタジーなら重さぐらい大目に見てよ。
開き直らず真摯な態度で作り直せって? それはそう。
氷結クレイモアみたいに浮遊属性を刻んでみるのは……違うよなぁ。俺はミリオタの皆さんみたいに銃器やその挙動には詳しくないけど、銃口側が重力に逆らってフワフワしてるハンドガンとか絶対に狙いにくいだろそれ。弾丸で殴ったる、ぐらいの心構えで近距離でブッ放すなら関係ないかもしれないけどさ。
シンプルにグリップの部分にもFメタルによる補強をするか? もしくは単純にカウンターウェイトってことで普通に鉄を圧縮して仕込んで力技でバランスを取るとか。
そういえばゲームだと銃の底の部分で人や物を殴ったりできるヤツもあったな。ディアさんも近距離での戦闘のほうが得意みたいなこと言ってたし、どこかの女難系合衆国エージェントのイケメンも接近戦はナイフのが速いっていってたし。
ナイフへの持ち替え不要でシームレスな打撃を。
我ながら物騒だが実用的なキャッチコピーだわ。
テナクスではとにかく火力さえ確保すればいいや、ぐらいの勢いでオリジナル武器をクラフトしてたけど、アレって奇跡的になんかいろいろ噛み合ってたんだなって。
カティさんのときなんかパイロット側の出力が足りなくて使用に制限がついたけど、ギフテッドであるディアさんはパイロット側の出力がデタラメだから求められる調整が違うワケだ。
ロボゲーなら初期機体でもジェネレーターとかエネルギー周りを強化するだけで簡単にパワーアップするけど、FAはそんな単純な仕組みじゃないってことか。
そう考えると本当にテナクスでの生活って錬金術の修行としては丁度良かったのかもしれん。候補生が使える武器の研究から始まって、ギフテッドじゃない普通のパイロットのために武器作って、ちゃんと段階を踏んでたもんな。
よし、そうと決まればさっそく殴って使えるハンドガン作りますか!
あ、でもディアさん蹴り技が得意って言ってたよな? つまり必殺技はハンドガンキックになるのか。インセクト相手はともかく、とりあえず対人戦なら意表は突けそうだ。