まずは余計なことをせず、そのまま試作1号。
「はい、特に問題なく扱えると思います」
「つまりお前如きに期待なんてしてないから必要最低限で充分だってことか」
「……え? え、え??」
「はぁ〜あッ! 良い武装をプレゼントしたくて、改良するための意見が欲しかったのに、ディアさんが満足できるような武器なんて素人にはムリなんだなぁ〜ッ! あ〜勘違い恥ずかしいッ!」
「いや、あの、え、えっとッ! いや、え? あのッ! ですから、そのッ! わたくしはそんなことは微塵も思ってなど────」
「改良するために意見が欲しいって言ってるのに、もうこれで良いよって言われたら錬金術士としてはそう受け取るしかないよ」
「そ、その……本当に、わたくしはそんなつもりでは……。ただ、せっかくコレオ様がクラフトしてくださったのに、それに対して……武装の錬成についてなにも知らないわたくしが、その、勝手なことを言うのは……本当にそれだけのことで……ッ!」
「だったらホレ、俺に気遣うってんならホレホレ、不満に思ったことを素直に吐きなはれ。ホレホレホ〜レ、早く言わないと泣くぞ? わんわん泣くぞ? 親方にディアさんにいぢめられたぁ〜って泣きついちゃうぞ?」
「テメェらのイチャコラに儂を巻き込むなバカ弟子」
「わ、わかりました……。それでは遠慮なく意見を出させていただきますが、やはり前方への重量のバランスが少し。負担、というほどでもありませんが……気になるということは、そこに意識が引っ張られるということですので……」
「使えることと、使い心地が良いことは別だからな。ありがとうディアさん、ちゃんとダメ出ししてくれて」
「わたくしのほうこそ申し訳ありません。忌憚のない意見が欲しい、と。事前にご丁寧に説明していただいたというのに……」
「ケチつけられて感謝できるあたり、心構えはもうプロ級だな……なんでそれで常識だけスッポ抜けてんだか」
▲▼▲▼
そして問題解決を優先した試作2号。
「造形美より実用美! からの試作美! そして実験美!」
「見た目を後回しにしてグリップ側に圧縮した鉄を付け足したのか。力技だが要求に応えることを優先する姿勢は悪くねぇ」
「先日のモノと比較して、かなり構えやすくなったと思います」
「成功美!」
「ビービーうるせぇ。なんだお前そのテンション」
「とはいえ現状ではただの重りなんで、そこは創意工夫の余地アリですね。無駄とは言いませんが面白くない」
「実用性があり、かつ重りとして機能するもの……ですか。このままでもハンマーのように打撃武器として使えるのではないでしょうか?」
「だとしても微調整は必要かな。殴った反動でスルッと手放しちゃった、なんてことになったら困るでしょ」
「熟練の傭兵は咄嗟の判断で収納したりするが、戦闘中にそれをやるのはかなりの高等技術だそうだ。アサルトライフルの先端にナイフ装着して振り回すのとはワケが違うからな、フォローは必要だろうよ」
「では、グリップの部分をナイフのようにするという改造も方向性としては可能ということでしょうか!?」
「そこに食いつくんだ……」
「よかったじゃねぇか坊主。ブッ飛んだ発想にもちゃんとついてきてくれそうだぞ」
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ナイフは無いっふけど試作3号。
「邪道を求めるのであれば、まずは正道を知るところから始めるべし。と、いうことでマガジンユニットを増設して重量を調整したのがコチラです」
「バランス感は良いと思います。手の平全体にズッシリとした鉄の感触があるのも安定感というか、握りしめたときの安心感があると申しますか。まだ、それなりに……ではありますが、手に馴染みそうな気はします」
「ならこれをベースにして……細かい調整というか、整形は普通の鉄製グリップで合わせるか」
「中のプレートはどうした?」
「鉄のまま圧縮すると錬成陣を刻むときに欠けやすいようだったので、そちらも全部Fメタルに変えました。装填できる弾丸素材の量も増えてくれれば嬉しかったんですけど」
「それで今回は出来上がりまでが遅かったのか」
「ムリすると鼻血が止まらなくなるんで。とはいえ……まだ重さのバランスの取り方の方向性が見えただけなんですよね〜」
「コレオ様。試しにギフトを発動せず、このまま発砲してみてもよいでしょうか?」
「どうぞ。弾丸は普通の鉄製だから遠慮なくやっていいよ。あとで回収してリサイクルするだけだし」
「それでも限界まで引っ張るなよ。バレルの中で砕けると掃除も面倒だ」
「了解ッス!」
…………。
…………。
「そういえば親方。この灰って肥料以外の使い道とかってあったりするんですか?」
「おぅ、あるぞ。芸術家が絵を描いたり粘土を焼いたりするときに使ってんな」
「え? あるんですか?」
「お前が聞いたんじゃねぇか、なに驚いてんだよ……。お前、コレが畑の中でどう変化して肥料になってるのかは知ってんのか?」
「すみません」
「灰が還元されたとき、そこは魔力の空白地帯になる。そこに外側から魔力が集中して圧縮されて、徐々に馴染んで土全体が肥えるって流れだ」
「お〜、自然の神秘ですね〜」
「そうした性質を利用すんのさ。壺やら皿やらを焼くときに水と練り合わせたヤツを塗ると、灰が抜けた跡に火の魔力が集まって色鮮やかで頑丈なブツが焼き上がる」
「なるほど〜。それなら絵画のほうはどんな変化が起きるんです?」
「そっちは逆だな。油膜で保護された灰がゆっくり時間を掛けて還元されるだろ? そうすっとな、色合いが綺麗なまま長持ちするんだとよ。絵が呼吸する、なんて言ったりするらしい」
「メンテナンスがどうとかじゃなくて、呼吸するって言い方が芸術家っぽいですね」
なんだよ〜、肥料以外にも灰の使い道あるじゃんよ〜。
しかも芸術の分野とか……もしかしたらなにか使うこともあるかもだし、インベントリに集めておくか。
デフォルトの容量が10000スタートとかいう桁違いなのがちょっと気になるけど、廃棄物全般の保管と思えば普通だな!
さ、謎も解けたことだし改造の続きだ。バランスさえ取れれば重量そのものはパワーアシストで解決できるし、まずは低出力でも雷属性を撃てる仕組みを考えるところから始めよう。