リソース管理や稼ぎプレイが嫌いなゲーマーいる? 作:はめるん用
5歳といえば、地球の日本なら小学校入学前の時期である。身体能力はまだまだ貧弱だが、語彙力というか発声力? の成長は俺のメンタル的に一番ありがたいところさん。言語による、というか会話による意思疎通ができるんだ……こんなに嬉しいことはない……!
反面、スキルツリーの育成はちょっと滞ってる。枝と石のインベントリ容量は拡張スキルをふたつ最大レベルまで成長させて100個までストックできるようになったし、その先にあった【採取量2倍】もアンロックできたので素材集めも少しは楽になった。
だけど今回の魔力石の粉末のようにアンロックに現物を要求されるタイプのスキルはまったくの手つかずという有様。サバイバル系ゲームなら、そして大抵のラノベで活躍している生産系チート転生者なら開始早々ゲットしているであろう丸太すら手に入らない。枝や小石みたいに部屋に持ち込んで誤魔化せるような大きさじゃないもんな〜。
行動範囲の中に木は生えている。が、仮に手段を確保できたとしても、まさか庭の木を勝手に切り倒すワケにもいかないだろう。あそこは庭師のサムソン爺さんの仕事場だ、俺の都合だけで勝手に荒らすなんて冗談じゃない。
中々もどかしい日々が続くが……両親との会話から俺にもそろそろ錬金術の基礎を教えてくれそうな雰囲気を感じ取れているので、いまさら焦る必要もないだろう。急いては事を仕損じる、スキルを取るため魔力石の粉末を小瓶に5個貯めるまで2年も使ったんだ。それに比べりゃどうってことねーべ。
まずは気持ちを落ち着かせて、努力の成果を堪能しよう。砕石から魔力石の粉末を練成し、数ヶ月かけて集めていた小瓶ひとつを数分もしないうちにクラフトできたことにひとひらの虚しさを感じていたところ。
「コレオぉッ! おはようッ! 迎えにきたぞぉッ!!」
「……アグラヴェイン様?」
錬金術士という肩書き対して屈強過ぎる肉体を持つ髭のおっさんが現れた! 別に見知らぬ不審者などではない。父ロジャーの知人であり別地方の領主貴族のアグラヴェイン・ボンバストゥス様とは砕石ガラガラの期間に何度もお会いしている。
「おはようございます。今日も軍装のコートの上からでもわかるほど筋肉がキレてますね。肩に迫撃砲でも乗せてるんですか?」
「貴様のその独特の褒め言葉、ワシは好ましく思っているぞッ!」
「恐縮です。それで、迎えにとは?」
「貴様も5歳になった! 残念ながらワシは戦闘任務が重なって祝いに来れなかったが……ともかく! 貴様も錬金術の基礎を学ぶには丁度いい年齢になった! そもそも自力で魔力石の粉末を生成してみせた時点で素質は充分以上だったがな!」
「それに関しましては、手出しも口出しもせず見守っていただけたことに感謝しています」
「それだ」
「はい?」
「貴様のその姿勢! ワシやロジャーに協力を求めて効率よく目標を達成するよりも、自分自身の探求を優先した心意気! 実に気に入ったぞ! と、いうコトでだな。家庭教師なんぞよりワシのところで勉強せんか? という誘いに来たぞ!」
「その話は父には」
「まだだ! 朝一番で乗り込んだからな、いまごろはワシの従者から説明を受けているだろうが……これも誠意だ! なに、ほかの錬金術士相手にこんな真似はせんよ。ロジャーが相手だからこそ、ワシの本気を伝えるにはこうしたというまで。決して貴様の父親を蔑ろにしたり侮ったりしているワケではない」
「アグラヴェイン様のその行動力の裏側で礼節を重んじているお姿、私は心から尊敬していますよ」
「はっはっは! ただの性分だ、褒められるようなことでもない! それで……どうだ? 別にいまここで決めろとは言わんが、少しは心が揺れたか?」
メッチャ楽しそうだな〜このおっさん。でも勧誘自体は本気なんだろうな。領主貴族としての義務、錬金術士としての責任、国家の防衛を担う立場として未来の危機に備える……たぶん、俺なんかより何倍も何十倍も考えることもやることもあるだろうに、その上で追加の面倒を抱えるって言ってくれてるワケだ。ありがたくて涙が出るね。
「そうですね。非礼を承知の上でハッキリと申し上げますと、欠片も心は揺れておりません」
「ほぅ! 理由は?」
「なにも知らないからです」
「……続けろ」
「私が知っていることは、アグラヴェイン様が父ロジャーの知人であり、愉快な人物であるということだけです。家庭教師と比較してアグラヴェイン様に学ぶほうが良い、と判断するための素材が手元にありません」
「フフン、なるほど。それは道理だ。知らぬモノの価値を見定めることはできん、当たり前のことだな」
「生意気を言ってしまい申し訳ありません」
「かまわん、気にするな。その遠慮の無さはワシに対する信用だと受け取っておく。朝一番で乗り込んだ甲斐があるというものだ。さて……息子のほうと面白い話ができたことだし、今度は父親のほうと面白くない話でもしてくるか!」
「お仕事の話ですか?」
「まぁな。ロジャーの奴も堅物に見えるかもしれんが、アレで冗談は通じるし遊び心もある。だが、流石にインセクト絡みの話では互いに肩がこるようなやり取りになるのも仕方ないことだ」
「なら、肩コリが一発で完治する薬を開発できたら、領主貴族の方々に飛ぶように売れそうですね」
「おう、作れ作れ! 試作品が完成したらワシに飲ませろ、実験台になってやるぞ! では、またあとでな」
うーん、貴族っぽさのない賑やかな人だったな。
アグラヴェイン様の誘いを受けるかどうかはともかく、ようやく俺にも錬金術の基礎を学べるチャンスがやってきたか。チート能力はそれはそれとして、しっかり勉強しないとな!