「おいボウヤ、少し見ない間に浮気とはいい度胸してるじゃないか。まったく、つれないねぇ? 最初に契約したのはアタシだろう?」
「トルメンタさんはもう自前で装備揃えてるでしょ。……ただいま、そしておかえりなさい。なにやら事前調査でアチコチの巣穴に潜り込んでいたとか」
「おかげでトレードマークの銀髪も砂埃まみれだよ。なぁに、ボウヤの波乱万丈さに比べれば楽な仕事さ。それで? なにかアタシに聞きたいことありますって顔してんじゃないか、えぇ?」
「最近、フォルティスの若者の間ではギフテッドとして目覚めるのが流行しているとか」
「態度はクソだが能力は本物っぽいのが確かにいる。これはアタシの勘でしかないが、たぶん貴族のほうが環境の違いで見つかりやすいってだけで、一般人にも目覚めてるヤツいるんじゃねぇの? もしかしたらそのへんの主婦が格闘戦特化のギフト持ってるかもな」
「夫婦喧嘩が大変なことになりそうですね。ま、本物のギフテッドが増えるのは国家防衛の視点から見ても喜ばしいことです。偽物のギフテッドとしては安心できて結構なことかと」
「その言い訳、学園生活ではあまり使わないほうがいいかもな。ギフテッドが増えたことで、逆にボウヤの評価を改める連中も出てきてるぞ」
「はい? なんでまた」
「さてな。貴族連中の考えることなんて知るかよ。あまりにもそいつらの態度が悪いせいで、ボウヤに擦り寄るほうがマシだって考えたとか、そんな理由だってあり得るし」
「うーん、迷惑」
「そうかぁ? 迷惑度合いでいやぁ、他国のお姫さん……それも雷の槍の娘を実家に連れて帰るよりはマシだと思うぞぉ?」
「彼女のハンドガンは私が作りました。あとエチュードも。メヌエットよりは書類を揃えるのが簡単で助かりましたね」
「動きは悪くなかった。燃費については3割ルールをこれから叩き込む。2、3日はこっちにいるんだろ?」
「はい、いまのディアさんは9割ぐらい後先考えずに魔力を消費していますからね。お願いします」
「任せな。動きは大味だが高火力ってのもアタシらの訓練に丁度いい、つまりはお互い様ってヤツさ」
これが体育会系のノリか。単にトルメンタさんが姉御肌で面倒見がいいってのもあるだろうけど。
結局ディアさんに用意した機体はエチュードになりましたとさ。やはり練習用も兼ねた設計思想なだけあって、事前に用意しなければならない書類も比較的簡単なものばかりだった。
見本となる装甲パーツを父ロジャーに用意してもらうことも考えたが、どうせならとスキルを使い自前で用意。それに刻まれた魔法文字と錬成陣を読み解きながら自力でクラフトして渡すことに。
ありがたい、というのも変な話になるが、どうやらディアさんのギフトはあくまで攻撃に特化したものであるため装甲パーツは普通の作りで問題なかったから楽でしたねぇ。これで全身が雷でバチバチパワーアップですわ〜、みたいなコトされてたらまた鼻血コースだったかも。
「あの魔力、防御や回避には使えないものなんですかね?」
「そりゃ訓練次第だ。なんでもかんでも女に理想を求めるのは良くないぞ色男。能力があることと、それの使い方を知っていることは別問題だ。だからボウヤたちはこれから学園生活でそれを学ぶんだろうに」
「そういえばそうでした。俺も物知らずで父様になにかと苦労をかけてしまっていますからね、少しでも常識を身につけられるよう頑張らないと」
「そこで錬金術を頑張るって出てこないところがボウヤらしいよ」
「そこは周囲に合わせて適当に過ごす気マンマンですから。そのためのセカンダリ入学みたいなところありますし。ちやほやされたい欲求が無いワケではありませんが、それが勉強の邪魔になるなら俺には不要です」
「ハハッ、手抜きというより任務遂行のための擬態、だな」
「難しいところではありますけどね。お前、本当は強いのに心の中で周りを見下してたんだろ! みたいなイチャモンつけられる可能性だってあるでしょ、ほぼ確実に」
「そうだな。傭兵の世界でも似たような話はある。インセクトさえ倒せばいいんだろ、って普段のやり取りを蔑ろにするヤツはいる。人が集まってなにかやるってときに、人は感情で動く生き物だってことを度外視するようなマヌケは長生きできないものさ」
人間関係こそが最大の難関、あると思います。
でも真面目な話、チートスキルで無双してオレツエーしてる場合じゃないって思い知らされてるから難しいんだよね、匙加減。
チートスキルを使いこなすことも大事だけど、チートスキルを活用するための知識そのものを整えないと宝の持ち腐れになってしまう。
あぁ〜、やっぱり学園生活が不安なんじゃ〜。
前世の記憶と価値観が絶対にトラブルの原因になる〜。
とっくにハチャメチャが押し寄せてきてるんだもの、泣きたくなるっつーの。
でもあんな武器やこんな武器を再現する大義名分を得られたのは素直にワクワク100倍だわ。パーティーの主役は遠慮させていただきますが。
いやぁ、やっぱりそこは分けて考えんとさぁ。自分に正直にならないと責任感との板挟みでメンタルがまいっちゃうよ。
正義の心は美しいけれど、人間は多少の毒もなければ生きていけないのだ。龍がサクラサク高校で国語の先生もそう言ってたのだ。
「トルメンタさん。ぶっちゃけていいですか?」
「どうした?」
「上の人たちの思いつきに振り回されて巣穴に送り込まれたときのほうが、まだ緊張しませんでしたね」
「……うん、ちょっとわかる。アタシも依頼の交渉してるときのほうが戦ってるときより精神的にしんどい」
これぞ現場主義、って感じで……。
チート転生で2度目の学生ライフとか、マンガやラノベのシチュエーションとしては、わりと好きなネタだったんだけどなぁ〜。