「入学式の午後に前期課題の申し込みにやってくる生徒なんてなかなかいませんよ」
「師匠から手続きは後回しにするなと教えられまして」
「良いお師匠さんですね。どれだけ錬金術士として優秀でも、約束を守れない人間は信用を得られません。学生証の提示をお願いします」
「はい。どうぞ、お願いします」
「では失礼して……おや? キミがコレオ君でしたか。本当にセカンダリコースで入学していたのですね」
「まぁ、いろいろありまして」
「ハハッ、そんなふうに身構えなくても心配は必要ありませんよ。キミのように貴族でありながら望んでセカンダリコースを選ぶ生徒さんは毎年そこそこいますから」
「つまり、毎年何人も俺みたいな問題児が……?」
「返答は控えさせていただきます。では、次の方どうぞ」
▲▼▲▼
いやぁ、入学初日で受ける課題試験は強敵でしたね!
特に審査員である教師のひとりがドヤ顔でスクラップを用意してきたのには驚いた。なんならほかの審査員の教師の人たちも驚くっつーか、普通になにやってんだお前ぇ!? って空気になってたもんな。
錬金術士たるもの、いつでも素材が都合よく揃っているとは限らないのだから、どんな環境でも錬成ができてこそ……だったかな? いやいや、立派な心掛けじゃないですか。だから全員で遠慮なくスクラップから粗鉄インゴット作ってやったわ。
こういうこと言うの、下品なんですがね……。
クッソざまぁwww
おっといけない。ドヤ顔スクラップ教師は俺たちに錬金術士として大切な心構えを教えてくれたのに笑ってはいけないよ。
教育のためなら我が身も犠牲にする潔さ。途中で上司っぽい人が現れたことろ、一瞬で青褪めた顔になり連行される覚悟。まっこと、お美事に御座いまするッ!!
「これで自由時間は大いに確保できたな。なんだか普通を学ぶって目標からさっそく踏み外してる気がしなくもないが、俺は用意されている制度を利用しただけなんだから悪くねぇ」
「大丈夫だよ、たぶん。事務の人も言ってたじゃないか。なかなかいない、ってことはそこそこいるってことだよ」
「審査員の人らもそんなに驚いてなかったしな。オレたちみたいに小遣い稼ぎしてたヤツはさっさと終わらせんのが普通ってことで納得しとけよ」
それもそうか。
お約束パターンの「えぇッ?! ハンドクラフトで粗鉄インゴットがクラフトできるんですかッ?!」してざわざわするような反応も無かったし。技術としても現物としても当たり前に存在するものを、少し早めにお出ししただけなんだから普通だよな!
「それで、本格的にこれからどうするって話になるんだが?」
「事務員の方からはアルバイト先なども紹介してもらえましたが」
「それも魅力的っちゃあそうなんだが……いや、俺は今日のところは帰ることにする。まずは親方に課題をクリアしたことを報告したい。アルバイトには興味あるんだけどね」
宿代として細々とした仕事を手伝ってはいるが、せめて自分のために使うお金ぐらいは自力で稼がんと。
父ロジャーが用意してくれた資金は万が一のとき、1度にまとまった金額が必要になったときのため残しておきたい。
だが浮かれ気分のままアルバイトに行っても失敗する未来しか見えないし、ここは気分を落ち着けるために今日ぐらいはインターバルってことでゆっくりしよう。
…………。
…………。
「こういうとき、寮生活じゃないと行動がバラバラになっちゃうっていうね。ひとりでお散歩寂しいわ〜、っと」
男は錬金術士。
女はパイロット。
学園都市の受け入れに性別は関係ないが、学ぶ内容が違うため男女別々でカリキュラムを消化することになるのは当然の流れ。
なのでディアさんの様子見に向かう俺は異質な存在……ってほどでもないんだな。そこそこいるわ、男子生徒。よかった、青春を奪われて灰色の学生生活を強要されている男女なんていなかったんだ! まぁ同じエリアを歩けることと交流を深められるかは別の話だけどね。
「しかし判断ミスッたな。学校そのものの規模がデカくて個人を探せる気がしねぇ。見学も兼ねて適当に歩いてみるかとか軽く考えてたわ。案内用の端末をちゃんと確認しておけばよかったなぁ。こうなったら仕方ない。────すみませーん」
「あら、私たちになにか用が……って、男子? あぁ、そのネクタイの色、新入生の子ね。もしかして迷子かしら?」
「はい、お察しの通り8割ぐらいは迷子です」
「じゃあ残りの2割はなんなのさ?」
「知らないエリアを歩くのは楽しいじゃないですか。困ったらこうして誰かに助けを求めるだけですし、気持ちに余裕のあるうちに散歩しとこうと思いまして」
「なるほど。私たちもたまに錬金術士側のエリアに入ると新鮮な気分になるからな。気持ちはわからなくもない」
「最寄りのタブレットなら向こうにあるわよ。でも今日は貴方と同じように新入生の子たちで順番待ちになってるかしら」
「いえ、場所を教えていただけただけでも大変助かります。このお礼はいつか出世払いでお返ししますね」
「えぇ、期待しないで待っててあげるわ」
新入生補正つぇー。
期間限定の特典、どんどん利用しておこう。
▲▼▲▼
「ふむ。お姉様方のおっしゃる通り先客がいたな。知ってる後ろ姿だったけど。ディアさん、お疲れまさ」
「まぁ……コレオ様。わざわざ迎えに来てくださったのですか?」
「どっちかと言えば迷子かな。女子側の空気ってどんな感じだった?」
「そうですね。適度な緊張感の魔力で満たされていて、わたくしとしては思いのほか心地良かったです」
「……緊張感?」
「入学式の式典を終えてモニターが消されたあと、その場にいたパイロット候補生全員にナイフが配られました。まずは、武器を持ち歩くという意味を確実考えろ……と」
いや危ねぇだろそれ。
そういうのって、さきに座学で教えるもんじゃないの? 心構えとかそういうのを言葉で教えてから実践しろよ。なに初手から言葉ではなく心で理解させようとしてんだよ。
いや、でも、それは日本の価値観が残っているから……そうだよな、年齢的には出会ったときのスティーリアさんと同じだから、別におかしくはなくて、俺の考えが甘いだけか。
うん。
学園編、全然油断ならねぇわ。
次に登場するヒロインをどうしようかな……?
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「ファングさーん。出番なのですよー」
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「ヒュンヒュンとんでブッ刺さりなぁ!」
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「これ無くしたら一本いくらかしら……?」
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「ギュンギュン踊れ〜☆」