「……ってな感じで、アルバイトのほうも順調です。お金より価値があると思いますよ、安全管理のノウハウって」
「魔力石の連鎖反応事故か。儂も知識でしか知らんからすっかり忘れてたな」
「親方は現地で素材集めとかは?」
「もちろんやってたぞ。だが依頼が安定してくると時間が足りねぇんだよ。傭兵側も生活あるだろ? 代金代わりにアリの殻を持ってこさせて分解して魔力石に再加工するほうが速ぇし」
「いまのところ俺の顧客はディアさんだけですからね。自由に動けるうちに勉強しますよ」
「おぅ、それでいい。好き好んで苦労をしろとは言わねぇが、汗はタップリかいておけ。それがテメェ自身の技術の背骨になる。……ま、コイツは儂のお師さんからの受け売りだがな」
「それなら弟子の俺が受け継がないと、ですね! ところでディアさんはまだ帰ってこないんですね?」
「っても、そろそろだろ。夕方になりゃ射撃訓練も否応なしに終わりにされるはずだ」
パイロットの前期課題についてディアさんの説明を聞いた感じ、なんとなくアクションゲームのスコアアタックみたいな印象を受けた。
学園側が用意した武器で、特定のシチュエーションでターゲットを壊す。ハンドガン、ショットガン、ライフル、ソード、ランス、アクスそれぞれでテストして、最も成績が良かった2種類のスコアで合否を決めるのだとか。
いろいろ使わせて得意そうな武器で判定をしましょう、というところに教育機関としての方針というか、矜持みたいなの感じない? 誰でも入学できるからこそ、誰にでもパイロットになれるような道筋を用意するのが我らの役目だ! みたいな。
ちなみに使用されるのは人間用の武器とのこと。
良かった、ついうっかり専用武器を展開して「もしかして殲滅してしまったら不合格なのでしょうか?」みたいなこと言いながらキョトンとする暴れん坊プリマドンナなんていなかったんや。
「コレオ様、リットン様、ただいま戻りました」
「噂をすりゃなんとやら、だな。おかえり嬢ちゃん、ライフルの練習は順調だったか?」
「リットン様。わたくし、誰にでも得手不得手があるのは当然のことであると思うのです。それが人間らしい生き方というものではないのでしょうか?」
「そうか。まぁお嬢ちゃんの魔力の質がな、なんとなくそうだろうって気はしてたが」
「試験用の武器を俺が改造するワケにはいかないし、素直にハンドガンとかショットガンとか……そうでなければ格闘武器で合格を目指したらいいんじゃない?」
「むぅ。それは、そうなのですが、やはりパイロットたるもの如何なる状況にも対応できるよう心掛けが」
「それを勉強するための学園でしょ。いきなりなんでもはできないんだから、まずは得意な分野を伸ばすことに集中しようよ」
「……わかりました。確かに、未熟者を自覚しておきながら、臨機応変な戦い方をいますぐにと求めるのは褒められたものではありませんでした」
「そうそう、ひとりで全部なんてできないよ。錬金術士だけじゃインセクトとは戦えないのと一緒だって。チームワークだって立派な武器だよ」
「はい。おっしゃる通りです。ところでコレオ様」
「うん?」
「えぇと、その。クラフトしていただいた2丁拳銃に不満はありませんし、むしろ素晴らしい贈り物をいただけたと本心から思っているのですが……その、ですね? ショットガンの2本持ちについては……どう、思われますか?」
ライフルの練習してきて出てくるアイディアがそれ?
▲▼▲▼
ディアさんが散弾教の信徒であることが発覚した翌日。
本当なら今日も採石場でアルバイトしたかったんだけど、監督さんから連日での労働は勉強に支障が出るからとお休みを言い渡されてた。別に筋肉痛で動けないとかはないんだが……せっかくの気遣いに反発することもあるめぇ。
しかしワイには金が必要なんや! ということで今日も事務局でお仕事の斡旋をお願いする俺。
見た目は子どもでも中身はオッサンだからねぇ。必要経費は割り切って考えられるけど、プライベートな出費くらい自力で捻出したいやん?
みんなでご飯でも食べに行こうぜ〜、ってときにひとりだけ黒パンと豆のスープ食ってたら俺は良くても周りが気まずいかもしれないし。
「リサイクル業務はどうかな? 前期課題が終了しているなら粗鉄インゴットが錬成できるんだよね? そんなに高くは買い取れないけれど、多少不揃いでも安く買い叩くようなことはしないよ」
「それも採石場みたいに人気が無かったりするアルバイトだったりします?」
「まぁ、多少はね。わざわざリバースクラフトの練習なんかしなくても、ちゃんと書類を記入して申請すれば成績に応じた素材は使えるから、錬金術の練習としてもそんなに……って感じかな」
「ちなみにリサイクルした素材の持ち出しは」
「はい、これ。書き方がわからなかったら教えてあげるから、現物と一緒に提出してね」
…………。
…………。
「さすが学園、国営の公共施設。ゴミの分別もちゃんとしてる。これ……自転車とか全然、ちょっと修理すれば乗れるじゃん。なんちゅう贅沢な」
「ホントよね。いくら教材として再利用するためだって、まだまだ使える道具を廃棄扱いは贅沢って感じするわ」
「むしろ再錬成するなら完全に壊れててもいいのにね。バラバラでも鉄は鉄だし」
「ても使ってる最中に壊れちゃってケガするよりはいいのかしら? 鉄を取り出すみたいにパパッとケガは治せないでしょうし」
「交通量の多いところでいきなりタイヤが外れたりしたら大事故になるからな。ところで」
「なぁに?」
「お嬢さんはどちら様ですか?」
「さっき事務局でアルバイトの話をしているのを偶然聞いちゃって。同じ金欠新入生同士ってことで、ここは協力しない? 効率だってひとりよりふたりのほうがイイし。錬金術士なら、やっぱりパイロットと組んでこそでしょ!」