「ハンドガンを使用する技能試験で、なぜターゲットが固定されていたのでしょうか? 動かない的を狙うのですから、外れることなどあり得ないと思うのですが……」
「うんうんそうだね、ディアの言ってる事はあたしにもわかるよ。不思議に思っちゃったんだもんね。でもディア、それ、あんまり人前で言わないほうがいいよ」
「そうなのですか?」
「いやほら、試験内容でしょ? 先生たちや学園側があれこれ言うのと、あたしたち生徒がそのへんで喋っちゃうのはさ、ちょっと違うじゃん?」
「なるほど……。確かにナージェンダ様のおっしゃる通りですね。わたくしはあくまで大勢在籍している生徒のひとりでしかないのですから、まるで私事のように技能試験について語るべきではありませんでした。ありがとうございます、注意してくださいまして」
ペコリと丁寧にお辞儀をする友人の姿を見て少女は思う。
ちょっと世間知らずなお嬢様ぐらいのキャラに思っていたが、半年もしないうちにヤバそうな気配がどんどん滲み出してるな? と。
前期課題、ハンドガン検定を無事クリアしたふたり。ナージェンダを含め多くのパイロット候補生たちがB判定という上等な合格を獲得した横で、ディアマンテはA判定という最高の結果を叩き出している。
試験監督を担当していた教官は驚いていたが、正直なところナージェンダを含む背後で順番待ちをしていた友人たちは当然の結果として受け止めていた。トレーニングの時点で2丁拳銃を器用に使いこなしていた腕前で、いったい誰が失敗を予測できるものか。
もちろんディアマンテ本人は真面目に攻略したに過ぎない。課題として用意されているのだからなにかしら意味があるのだろう、と不思議に思いながらも次々とターゲットを打ち抜いた。
幼い頃から戦闘訓練を受けてきたディアマンテの動きに迷いなど無く、10発だけ装填されているマガジンユニットを流れるような動きで取り替えながら……あっという間に規定数のスコア100を叩き出し合格となる。
その後ろ姿を眺めながら、そういえばライフルの射撃は苦手でもリロードだけは速かったな……と。呆れ半分感心半分でナージェンダはトレーニングの様子を思い出していた。
自然に出てくる丁寧な言葉遣いと、扱い慣れた様子で銃器を使いこなす技術。
もしかしなくてもディアマンテは本物の貴族かもしれないという、方向性は合っているが微妙に外れた結論に至るのも無理はない。
「まぁ、なんにせよ合格よ! 合格! あとはもうひとつ合格判定を取れば、あたしたちも特別講習を受けて補給拠点のアルバイトに行けるわ! コレオは今日から向こうに泊まるんだっけ?」
「はい。リットン様にも何度も相談なされていました。通常のアルバイトでも金銭を受け取る以上、学生という身分でも相応の責任がありますが……やはり、インセクトと接触する可能性があるのですから、コレオ様も思うところがあったのでしょう」
「ふーん。……結構、マジな感じだった?」
「マジな感じでございました」
「ちょっと意外ね。アイツのことだから、もっと余裕がある感じで……いや、違うか。うん、それは違うわね。冗談言ったり変な行動は多いけど、ほかの男子よりずっと責任感がある感じするもの。仲間内でも慕われてたしね」
「はい。それに、上級生の皆様に教えを請いながらトレーニングにも積極的に参加しておられました。常日ごろからも、戦場の錬金術士として生きると宣言されて……有言実行。わたくしも、是非とも見習いたいと思います」
「戦場の錬金術士、ね」
そもそも、あの行動力で後方待機は無理だろう。
なんて説得力のある目標なのか、そしていくつものアルバイトを共にこなしてきたナージェンダだからこそコレオの本気を信じることができる。
カリスマ性と呼ぶほど上等なモノではない。
リーダー気質とも違う。
物語に登場する英雄のように遥か遠くを見ているような雰囲気は無く、どこまでも庶民的な感覚の持ち主。
だが、なんとなく。
そう……なんとなく、コレオなら大丈夫という不思議な信頼感はあった。
しかし、同時に。
「……補給拠点のアルバイト。一応、安全だって事務局の人も言ってたけれど。それでも、インセクトの襲撃が絶対に無いワケじゃないって」
「防衛拠点があります。観測所があります。補給拠点にも、待機しているパイロットの皆さんがいます。王国兵の方々も、傭兵の皆さんも。ですが、それはインセクトの発生を防ぐものではありません」
「もしもコレオのいる拠点にインセクトの襲撃があったら、アイツは────逃げるわね、確実に」
「逃げるかと思われます。コレオ様は
「補給拠点がほぼほぼ壊滅している前提ね。1年生は後方基地なんでしょ? アルバイト。そこまでの防衛拠点が全部潰されるレベルの襲撃とか、もうイロイロ終わってるし、だったら心配するだけムダね」
「それでしたら、わたくしたちも同じ補給拠点でのアルバイトに割り振られることを期待するほうが建設的であるかと思います。あぁ、いえ。違いますね。まずは特別講習に集中して取り組まなければなりません」
「錬金術士は設備の修理とか、そういうのを教えてもらったって言ってたわね。パイロットならなにかしら? まさかインセクトと戦わされるなんてことはないと思うけど。FA機体どころかパイロットスーツすら貰ってないんだし」
「大丈夫ですよ、ナージェンダ様。前提条件である前期課題の内容がそこまで難しいものでは…………」
「うん? ディア、どうしたの?」
「ナージェンダ様」
「うん」
「わたくしたち、まだ、攻略しなければならない前期課題がひとつ残っていました。特別講習に取り組む以前の問題です」
「……あ」
そのうちママンの戦闘シーンも書きたいなー。
最近、インセクト成分、足りんとちゃうん?
ほな、すてーじ4の間に投稿するかぁ。