案ずるより産むが易し。
まずはスキルを駆使してFAコアをクラフト、それから内部に刻まれた魔法文字を調べるところから始めよう。
とはいえ、基本的な構造は図書館で調べてあるのだが。授業を受けられなくても本は自由に読めるからな。足りない知識でも理解できる部分はある。
ふむ。
ふむふむ。
本に書いてあった通り、ちゃんと【強化】の魔法文字が刻まれているな。パイロットスーツにより効率的に全身を巡る魔力がコアに集められ、出力が強化されて装甲パーツや武装に魔力が供給される仕組み……うむうむ! 知識を体験で確かめるのは楽しいゾイ☆
この流れを応用するワケだから……起点となる人間の魔力は、予定通りパワーバッテリーで代用するだろ?
パイロットスーツの代わりは普通に属性ガラス繊維で繋ぐだけだから、そんなに難しく考える必要はなさそうだ。
だから、必要なのはボルトアクションライフルのシルエットに収納できるサイズのFAコアを用意することなワケで。
圧縮……初代ゲームなボーイぐらいのFAコアを、ピンポン玉ぐらいのサイズまで縮めることができれば違和感なく搭載できるかな……?
別に歯車を複雑に組み合わせるような機械的な部品ではなく、魔力と魔法陣で動くマジックアイテムなんだし、なにかしら工夫の余地はあるはず。
球体の中に、文字を刻むための空間……レイヤーを重ねるようなイメージで……あ、マトリョーシカみたいにすればいいのか。大きさの違うピンポン玉を何個も重ねるような感じで。
これでパイロットスーツや装甲パーツと接続するための配線だのなんだの必要だったら頭痛が痛くなるところだったが、ポジションとしては魔法の杖を強化してくれる水晶玉のようなもの。
やはりコードレスやワイヤレスしか勝たん。結局充電が気になって繋ぎっぱなしがデフォだったけど。
よし。
そうと決まればまずは試してみようじゃあ〜ないか!
…………。
…………。
「思ってたんと違うのできた……」
なんつったけなぁ、これ。
地球コマだっけ? ジャイロ効果で倒れない玩具というか、科学の学びになる知育玩具というか、そういうヤツ。
球体の表面に正確に魔法文字を刻むのは難しい。小型化を目指すなら尚のこと。ならば小さくても正確に文字を刻めるようにと帯状に引き伸ばしたFメタルに刻んで繋いで組み合わせて……をやってたらこうなった。
見た目は悪くない。むしろボックス状で胸部装甲の内側や背中側に取り付けて使う本来のFAコアよりファンタジー色が増してるまである。ヴィシソワーズを芋汁と呼ぶズボラ系天才魔法少女がクルクル回りながら魔法陣を展開するようなアレみたいで。
うん。
まぁ。
サイズの問題はクリアできたから良しとするか。
でもこれ、見た目はいいけど使う側どうなんだろうな……? 魔力を通すと魔法陣のリングが動くのは見てて面白いが、ライフル構えたときに顔の横でコレやぞ? 絶対に邪魔だろ……。
狙撃をしなければ普通に使えそうではある。ギュンギュン回転するほどバッテリーユニットから魔力がチャージされている状態だって周囲にも伝わるから、連携するときの目安になるワケねーだろ戦闘中にそんな余裕あるかぁ。
いや、まて。
逆に考えよう。ライフルそのものを大きめに、つまりは大口径にして内部機構としてスッポリ入るようにしちゃえばいいさと。
小型化することが目的じゃない。目的のために小型化をしているのだ。品評会に出して技術自慢をしたいんじゃない、インセクトを撃ち抜くための武器が作れればいい。
まずは普通のバッテリーユニットを作って。
普通のマガジンユニットも作って。
ライフルの本体部分を作って。
試作コアと一緒に組み込んで。
ロングバレルを作って〜。
簡単な魔法文字を刻んで〜。
ボルトアクション部分にも属性ガラス繊維仕込んで〜。
それぞれ全部繋ぎ合わせて〜。
「そもそも理屈として機能するのか? を試すだけの試作品、完成でございます。親方」
「おう。コアの小型化は良く考えたな。さすがに機体に組み込むには出力の安定性が全然足りねぇが、目的のために要求される性能を満たしてんならそれが正解だ。バレル側には属性付与してねぇのか?」
「そもそも魔力を叩き込む機構として機能するかわかりませんし、まずガラスに伝達するのを確認できればいいかなと」
「そうか。まぁ新しい試みに慎重になるのは悪いこっちゃねぇ。どれ……ふむ……バッテリーの出力を、もう少し、絞っても……いいな。いや、絞ったほうがいいな」
「人間装備にも使える程度の出力のヤツですけど」
「たぶん、でしかないが、それでもコアがブッ壊れるかもしれん。普通のFAコアはアイドリング状態でパイロットの魔力と馴染んだところから出力を上げる。だから急激な変化にも耐えられる。だがコイツはそうじゃねぇ。チャージまではできるが、ボルトを引っ張って魔力を送り出した瞬間にテメェの出力で壊れるかもな」
いわゆる暖気運転が足りないってことか、このままだと。
チャージはできる。
出力もできる。
但し壊れるから使い捨てになる。
失敗としては悪くないんじゃない? 考え方は間違っていなくて、解決するべき問題が見えたんだから。
というか解決する方法もわかってんじゃん。ゆっくりチャージして慣らし運転を同時に済ませればいいだけなんだし。
いいぞ、理屈による解決策だけでも見えているかどうかで気持ちは全然違ってくる。ゴール地点がわかっているのに加えて、チェックポイントも判明しているなら迷子になるリスクも相当減らせるな。
……でも使い捨て前提のオーバーな火力のウェポンもそれはそれでロマンがあるよな。
いや、いまは余計なこと考えるな。それにマシンマキシマム構想は俺が目指す錬金術士の姿とは真逆過ぎる。
ふぅ、危ない危ない。
武器作りのために人間性を捧げるなんて冗談じゃないぞ。こりゃ家族と話す頻度を増やすなり、リットン親方だけじゃなくディアさんやナージェンダにも相談するとか、そういう時間もちゃんと作らないと危険だな。