『それで私に連絡を寄越したのか。頼りにされるのは父親として喜ばしいことだが、お前にしては珍しく弱気な判断をする。リットン氏には許可を得て試作したのだろう?』
「父様。荒んだ心に武器は危険なのです」
『お前が言うと説得力が強すぎる』
「お忙しい中時間を割いてくださった父様をボケに付き合わせるのは申し訳ないので本題に入りますが、完成
『聞こう。なにを懸念する』
「私の手を離れたあと、それの矛先がインセクト以外に向けられることを」
『理由は?』
「人は己を試さずにはいられません。そして安易な手段で力を手にしたものは、やはり安易な手段でそれを成そうとするでしょう。それも、反撃を受けることのない安全な相手を選んで」
『困ったな、心当たりがあるせいで安心させるための言葉を掛けてやれんぞ』
「誰もが気分次第で壊せるモノを持っているそうです。ペットだったり、恋人だったり、家庭だったり、国だったり……規模は様々ですが。初めてこの言葉を聞いたときはそんなものかな、ぐらいの納得でした。ですが、いま、こうして多くのモノを壊せる側になってみると……正論ばかりを振りかざそうとは思えませんね」
『人々の盾であり剣であるべき領主貴族としては反論したいところだが、私もお前と同じように壊せる側の人間だからな。ここで簡単に否定するのは無責任だろう。それで? 試作段階で相談するほど問題があるのか?』
「いえ。コストパフォーマンスが劣悪過ぎて量産計画など考慮するに値しない欠陥品なので誰もアイディアを盗もうとはしないでしょう。そもそも現状の武装でなにか問題が起きているワケでもありませんからね。真っ当な感性の持ち主であれば尚更のことです」
『発想は面白いと私も思うがな。まぁいい。せっかく息子が頼ってくれたのだ、私のほうでも気に掛けておくとしよう。怪我にだけは気をつけてな』
「はい、安全第一で無茶します」
『どうせなら最後まで安心させて欲しいのだがなぁ』
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とりま父ロジャーに武器用コアのこと話してスッキリですわよ。家族として、父親としての視点からアドバイスってのはまた別腹だ。
リットン親方に不満があるとかそういう話ではなく、単純に立場の違いで見えるものや気になる部分は違うよね? って話でね。
「おぅ、戻ったか。ちったぁ肩が軽くなったか?」
「どうでしょうね。試作試作の繰り返しで肩も腰もカチコチになりそうだったのは事実ですけど。それで、新しい武器用コアのほうは」
「そこそこ安定してるぞ。脆さを補うために、まずは最も単純な手段から順番に試す……解決してから次を悩むのも間違いじゃねぇ。ただ、その手段がなぁ? まさか硬化の属性石をそのままコアの芯の部分に据えちまうとは」
装甲パーツやシールド系武装の防御力アップに使う硬化属性。
その魔力石をコアの中心に組み込めば壊れにくくなるんじゃない?
我ながら乱暴な方法で解決を試みているが、創意工夫というヤツは手持ちの手札を使い尽くすところから始まるものだ。自分で勝手に出し惜しみをしておきながら悩むのはアホのやることぞ。
「インクに混ぜて刻印すれば切り替え可能で、素材に混ぜて錬成すれば魔力に反応して自動発動。じゃあ、そのまま使ったらどうなるか? まさか親方も知らなかったとは思いませんでした」
「そもそもの話、普通はこんな超純度の属性石なんて手に入らねぇんだよ。実験しようにもモノが無きゃどうにもならんわ」
なんとビックリ、武器用コアの形状は球体で正解だった。
機体用のコアはパイロットの魔力を増幅して装甲と武装に送り出すための装置であって、普通は魔力をキープする能力はほぼほぼ備わっていないらしい。エンジンと燃料タンクは別物ってことだ。だから中身はマガジンや拡張空間と同じ板状の魔法陣で問題ない。
だが俺がやりたいのは魔力のチャージ。バッテリーの中に充填されているような静的な魔力ではなく、ボルトアクションで一気にバレルに送り出すための動的な魔力だ。そのためには魔力を常に動いた状態でキープする必要があり、行き止まりのない球体は最適解だったワケだ。ただの偶然なんだけどね。
で。
ぐるぐる回るリングたちの舞。
そこに寄り添うように形成されている魔力の流れ。
その中心で穏やかに輝く硬化の属性石。
期待通り、コアは頑丈になった。
予想と違ったのは、属性石を中心に一定の空間全てに硬化が付与されていることだ。
だいたい半径2メートルくらい?
コップに入れた普通の水が、スライムみたいにぺにょんぺにょんですわ。噛み千切ったら口の中で液体に戻ったので、無差別ではなく、なにかしら条件があるのだろうが。
「ボルトアクションの機構も、バレルに刻んだ魔法文字も、まとめて影響を受けるだろうなコイツは。有りか無しかで言うなら有りだ。コレでライフルだけじゃねぇ、もしもパイロットスーツ、装甲パーツ、追加フレームとついでに地面までまとめて固まるなら好都合だ。デケェ杭を打ち込むように、大口径の反動にも耐えられる」
「ですが、その理屈だとチャージ開始から発射まで動けませんね。インセクトがチャージなどさせるものかッ! って突っ込んできたら一気にピンチですよ。いやぁ〜、まいった困った。こりゃ改良するのも大変ですよ親方」
「じゃあ少しぐれぇ困った顔しろよお前はよぉ」
「そういう親方こそ。実験に夢中になり過ぎて、うっかりアルバイトや講義をサボらないよう気をつけないといけませんね!」