実験その1。
硬化の効果範囲で人は自由に動けるのか?
「リットン親方監修のもと、真心込めてパイロットスーツをクラフトさせていただきました。魔力に反応して体型にシュッと合わさるミラクルフリーサイズって反則だわ。ディアさん、ナージェンダ、着心地どう? 変な感じとかする?」
「はい、パンタシアの物と比べて多少の誤差はありますが、特に問題はありません」
「……うん。なるほど?」
「気になることあるなら遠慮なく言って」
「いや、そういうんじゃないの。あたしパイロットスーツ初めて着たの。だから、ちょっと感動してるだけ。これがパワーアシストの感覚なのね。缶詰も中身入りのまま握り潰せそう。そんなことするヤツいたら全力で張っ倒すけど」
「1年の間は、自前で用意できなきゃパイロットスーツなんぞ配られんからな。バカ弟子、わかってると思うがコイツは」
「本来ならタダで錬成するなんて言語道断だし、余程のことがあっても安売りしていい代物じゃない、ですね。市場全体に迷惑がかかるので」
「それでいい。で……お嬢ちゃんたちよ、普通に動けそうか?」
「では、失礼して……わたくしは、問題ありません。ナージェンダ様?」
「あたしも平気。ただ、空間の境い目って言えばいいのかしら? その属性石の効果範囲ってヤツ、なんとなくわかるわ」
結論その1。
基本的には大丈夫そう。
パイロットスーツがカチカチになって動けなくなる、みたいに残念なことにはならないようだ。
▲▼▲▼
実験その2。
範囲内で武器を使うとどうなるか?
「まずは開発責任ということで俺がハンドガンを少々。────特に、なにかって感じはしないな。範囲外の地面に撃ったら、もっとめり込んでいくかと思ったのに」
「あくまで属性付与されんのはコアを中心とした範囲だけ、ってことか。バレルに加速や貫通を付与して弾丸を強化するのとは仕組みがまるっと違ぇんだな」
「では、次はわたくしたちの番ですね。いまのところ……こうして握っているだけでは、ショートソードに変化は感じられません」
「魔力の通りが悪いとかも無いし、見た目でわかるような違いとかも無さそうね。それじゃあディア、準備はいいかしら?」
「いつでも」
「とりあえず軽めに……ふッ!」
「音、魔力反応、いたって普通。普通に硬化を付与した武器同士がぶつかり合ったそれ。人の魔力を流したら弾き出される、ってワケでは無さそうですね」
「ってなると、硬化の影響を受けた水が口ん中で元に戻る理屈は……単に人間の魔力と反応して、ってことじゃなさそうだな?」
「逆に言えば、武器用コアとしてちゃんと使えるってことで安心しました。パイロットから魔力を供給された武器は属性付与の対象外、じゃ意味ありませんし」
結論その2。
いろんなゲームで馴染み深いフィールド効果って感じ。
適応される条件にはまだ細かい謎が隠されていそうだが、少なくとも武装の強化に関しては複雑なルールは無さそう。
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実験その3。
安全に使えそうだからもう撃ってみようぜ!
「わたくしは、その、ライフルは少々……相性があまり、よろしくないので……」
「別に試し撃ちにそんな技術とか関係ないと思うんだけど」
「親方、装甲パーツとかは渡さなくて大丈夫なんですか?」
「まだいらねぇだろ。というか、それ試すなら傭兵に金出して雇ってだな。機体用のコアや装甲にどんな影響出るかわかんねぇのに、ガキに実験なんかさせられっかよ」
「逆に、それで仕事を引き受けてくれる人いるんですね」
「いるさ。連中は人生を楽しんでるヤツが大勢いるからな。ナージェンダの嬢ちゃん、準備はいいか?」
「いつでもいけます!」
ナージェンダが銃を構える。
狙うのが穴の底のスクラップの山なので、ちょっと体勢が不自然になってしまっている。だけど横や上に撃ったら危ないからね。
街の外ならもう少し自由に実験できるけど、そうすると今度はトラブルが起きたときに困る。武器の破損はともかく、人の怪我がね。
魔力反応開始。
バッテリーからコアへ伝達。
目視確認はできないが、魔力が内部で回転しているのがわかる。
硬化の属性石、反応確認。
うん?
フィールド広いか?
なんか倍ぐらい広がってる?
直径で10メートルぐらいあるかも。
「コレオ、ひとつ報告」
「なに?」
「衝撃に備えて踏ん張ろうとしたら、足とか肩とかのパイロットスーツがガッチリ固定された感じ。意識を緩めると一緒に元に戻るけど」
「なんだそのご都合主義」
「男と女の魔力の質の違いかもな」
「もういい? 撃つわよ?」
「うん、問題なさそうならそのまま頼む」
ボルトアクション。
武器用試作コアと接触。
瞬間。
バレルユニットにインクで刻んだ貫通の魔法文字が輝く。
すげぇな。
内側に刻んだはず魔法文字が、バレルの外側にくっきり浮かび上がってるんだが?
これいきなり分解の魔法文字で試してもよかったかな?
いやいや。
安全第一よ、安全第一。
そしてコアの反応は無事のようだ。
魔力が抜けて沈静化……してすぐに次のチャージ始まってんな。
硬化の属性石も反応継続。
ふーん。
そういう感じ。
「さん、にぃ、いちッ! 発射ッ!」
…………。
…………。
穴掘りと採石場のアルバイトで鍛えたロープ下降術の前では、多少の縦穴など俺にとっては歩いているも同然! ほんと、どんなときにどんな技術が役立つかわからんもんだ。
スクラップ、貫通。
地面、貫通。
かなり深くまで撃ち抜いてんな。
親方が指摘した範囲だし、埋設された魔導管や下水道を壊すようなことにはなって……ないな、ヨシッ!
「ナージェンダ、お疲れ」
「まって、いま、話しかけないで。手に残る感触をじっくり噛み締めてるところだから」
「親方?」
「そっとしておいてやれ。誰も彼もがお前みたいに平然と知らねぇモンを受け入れられるワケじゃねぇんだ」
「大丈夫です、ナージェンダ様。わたくしにもその気持ちは理解できます。あとでお茶でも飲みながら、ゆっくりとお話しましょう」
…………。
ちょっと疎外感あるけど、無事に試作1号の実験は終わったから成功ってことでいいか。