リソース管理や稼ぎプレイが嫌いなゲーマーいる? 作:はめるん用
ひと言で表すなら、それは【アシナガバチ】だった。
ふた言以上で表すなら、それはクリアパーツやメタリックパーツを使ったアシナガバチのサイボーグだった。どこかの本部やオペレーターがどうにも頼りにならない防衛軍で侵略してきた巨大生物とは違い、なんというか……生物を改造した兵器、あるいは兵士って感じが凄い。
そしてやはりというかなんというか、絶対に意思疎通なんて無理だろうなって確信した。天使様から虫の化け物が敵だって言われた時点で予測はしていたけれど。虫とか昆虫って生物というより有機物で作られたロボットみたいなイメージだったし。生存本能というより“そういうプログラム”で動いているだけ、みたいな。
あと、双眼鏡で覗き見してるときに目が合った気がする。というか、絶対に俺のこと認識してたよアレ。だってゆっくり前進していたのが急にピタッと停止してクルッとこっち見たもん。
ゲーム的な表現で巣と無線の応答をしているとすれば、たぶん「敵意無し、交戦不要」みたいな通信してると思う。そう送信するプログラムが組まれた偵察ドローンのように。
うん。
これはヤバい。
喉の奥から悲鳴も出てこなければうっかりビックリお漏らしなんて情けないことにはならなかったが、全身から体温が消え去って指先から痺れるような不快感が広がっている。
「どうだ小僧。インセクトを見た感想は」
「アレは人類の天敵というよりも……自然現象、あるいは自然災害のようなものだと感じました」
「あん? なに言ってんだ?」
「まぁまぁ。それで、コレオ。もう少し詳しく説明してくれるかい?」
「水が高いところから低いほうへ流れるように、風が吹けば草木が揺れるように、たぶん……俺たち人間にとってインセクトは天敵ですが、向こうは人間を敵として認識していないと思います。俺たちが大雨を鬱陶しく思うことはあっても、誰も空から降ってくる水滴のことを指差してアレは敵だ! なんて騒がないでしょう?」
「おい銀髪。この小僧もしかしなくても【ギフテッド】か?」
「さぁ? アタシに紹介してくださいましたときには、領主サマはな〜んにも仰らなかったぜ?」
「ギフテッド……?」
「小僧みたいにガワと中身が釣り合ってないガキのことだ。だいたい5歳から10歳ぐらいの間にそういうのが現れる。つっても、歳のわりに早熟ってだけだからな。大抵の場合、成長するにつれて周りとの差は埋まっていくもんだが……たまに、本物が混ざってる」
まさか俺以外にも転生者が!?
ん? でも、それなら天使様が事前に教えてくれたりするんじゃなかろーか? ガチでそういう天才が定期的に産まれるってことなのかな。なんかこう、星の意志的なヤツが、人間とインセクトのパワーバランスを保つために定期的にイレギュラーを投入するとか。
しかしそうか、前例があるなら俺が命懸けの社会見学させられてるのも特別扱いってワケじゃないんだな。つまり“コイツはギフテッドかもしれねぇ”と判断された子どもはどんどん教育を先取りして戦場を体験させましょうね〜、ってのが国家レベルの基本的教育方針ってことだ! う〜ん、これは生存競争やってますねぇ!
「運が無かったな小僧。通商貴族か法務貴族、あるいは騎士として王家の飼い犬に産まれてりゃまだ助かったのに。領主貴族のギフテッドは戦場で死ぬことしか許されねぇぞ?」
「つまり、俺が本当にそのギフテッドとかいう人間なら、ムダに能力を腐らせることなく本気で錬金術士として生きることが許されるということですね。幸運にも領主貴族に産まれたおかげで」
奥義、皮肉返しッ!
いや俺のコレは皮肉か?
ま、いいや。小僧呼びの傭兵のお姉さんだけじゃなくて、ほかのパイロットたちにもウケたみたいだし。それに小バカにされたとしてもギフテッドという免罪符を知ることができただけでもありがたい、チートスキルを試す上で追い風となる。
少し気になるのは、その可能性を知っていたであろう両親がなぜ黙っていたのかって部分だ。不自然にボロが出るよりは、と開き直って会話をしていたけど、たぶんアグラヴェイン様の勧誘って俺がギフテッドかもしれないからっていう囲い込みだったんじゃね?
「くっくっく……ッ! イイねぇ、ホーエンハイム領に目ェつけたのは当たりだったな。シェーネスだ。今後ともよろしく頼むよ? 小僧。ま、どういうワケか知らねぇけどアシナガバチは手出しさえしなけりゃ人間を襲うことはない。安心して勉強して帰りな」
「アシナガ、バチ……」
名前そのまんまかい!
でも覚えやすくて助かるね!
「ちなみにコレオ、実際にインセクトを見て、残りの30点はどう考える?」
「手出しをしなければ安全、しかし、ここで少しでも攻撃すれば危険。例えば、あのアシナガバチに誰かが発砲したとたんに……遠くにある巣から一斉に仲間を呼び出す、とか」
「これで次の部下が10人いても、全員生きて帰れるようになったじゃないか。領主サマにはちゃんと報告しておいてやるよ。それが100人、1000人でも生かせるように。学習の機会が損なわれないように、ね!」
いえ、ただの前世知識というカンニングです……。
なのであんまりプレッシャーかけないでください……。