リソース管理や稼ぎプレイが嫌いなゲーマーいる? 作:はめるん用
「俺の死を……悲しむ、ヒマが、あるなのなら……1歩でも前に行け……決して、振り向くな……! 弟よ……俺の屍を、越えてゆけ……ッ!」
「あ、兄上ぇぇぇぇッ!?!?」
「あ、ごめんルカニ。ちょっとハンカチ別なヤツ取ってもらっていい? 鼻血が逆流しそう」
「作業着がとんでもないことになっちゃいましたね兄上。今日はもう鉄のクラフトは諦めて休みましょう」
「でもなぁ……もうちょっとでコツが掴めそうなんだよなぁ……」
縦穴ほりほり続けること2年。
どうにか鉄を含む岩の層まで辿り着くことはできたのだが、自前の錬金術で鉄だけを取り出す作業が鬼のように難しい。なんならスキルに頼らないで石から魔力石の粉末を取りだす作業ですらとんでもない集中力と魔力を消費している体たらく。
もっとだ……俺にはもっと努力と、そして試練が必要なんだ……ッ! ちなみにスキルツリーのほうも確認してみたけれど、新しく【砂鉄】というスキルまで明るい範囲が広がった。けど石材や砕石から繋がってはいないあたり、どうやら鉄系の素材は鉄系で独立しているらしい。
ここまで邪魔な石は錬金術で砕石にしてから処理していた。
そしてこの岩を同じように砕こうとしたら黒い粉が残った。
はて? こんな粉なんて残ったことあったっけ? と回収してみたらインベントリ内部に砂鉄が0個で表示されてスキルをアンロックするための前提条件が整った。
つまり状況から察するに、穴の底で黒光りしている岩の塊が、この世界では鉄鉱石として扱われている……で、合ってんのか? 座学の内容も増えてきてるけど、素材集めは本来なら採掘の専門知識がある錬金術士とかが担当してるから、領主貴族の錬金術士が学ぶことじゃないんだよね。
手探りで素材を探すのはもちろん最高に楽しい。が、そんなことは関係なくこの推定鉄鉱石は手強いとかそういうレベルじゃない。未だ丸太すら自力で伐採できない7歳のキッズボディで鉄鉱石なんて採掘できるワケねーっての。
ではどうやって砂鉄を取り出すのか? 鉄鉱石に触れて、手の平に魔力の流れを集中させ、表面部分に魔力で干渉することで砕石だけを錬成して無理やり砂鉄と分離させることでコツコツ集めている。へッ、錬金術士が錬金術で素材を集めてなにが悪いってんでぇ?
けどさ、これがま〜た難しいのなんの。
3回もやれば鼻血ブーですわよ。
「兄上。休まなければいけないときに、休むことを選べないのは、怠けるよりもダメなことだって……兄上が僕に言ったんですよ? なのに兄上だけ休まないのはズルいです」
「む。弟にズルいと言われちゃ兄として黙ってはいられないな。わかった、あんまりムリして頭の血管まで切れたら大変だ。今日の外仕事は〜、これで、終わり!」
命綱を巻き取りながら階段を上る俺、立派な土木作業員になったと思わない? 素材集めの要素があるゲームってさ、商人から買うこともできたりするじゃん? でもさ、フィールドを歩き回って採掘ポイントから集めたりモンスター倒してドロップアイテム集めたりできるものをさ、お金の力で解決すると負けた気分になるじゃん?
企業レベルの話をするなら需要と供給のバランスを考えないと結果的に市場全体の経済が悪化することもあるだろう。けれど俺ひとり、いやルカニとふたりで使うぶんの素材を、それも子どもが自主トレに使う程度の量なんて自給自足したところで影響なんて微々たるもの。そもそも自給自足できてないんだから影響なんてするワケがない。
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アナグラ脱出!
う〜ん、新鮮な空気がおいし〜☆
大きな露天掘りとはいえ穴の底、いまの俺では酸欠を解決する手段が小まめに作業を中断して休憩するぐらいしか思い浮かばなかった。空気を循環させるためのダクトとか設置できればいいんだけど、送風するためのギミックを作れないんじゃ意味がない。
でも監視役の大人たちが特に注意してくることもなかったから、もしかしたら土の層をくり抜いた程度なら問題ない高さってのが常識だったのかも? 魔力がある世界だからな、空気の循環や酸素の作用も地球の法則とは違うのかもしれない。その辺りを詳しく知っていればもっと早く砂鉄を含む岩まで辿り着けたのかもしれないが、それ以上にルカニと試行錯誤する時間に価値があったと信じよう。
「そういえば兄上。僕も工房に、今度連れて行ってもらえることになりました」
「それは良かった。一応、俺なりに丁寧に魔力の扱い方を教えたつもりだけど……やっぱり基礎はちゃんと学ばないと、変なクセついちゃったら困るからな」
「そうですね。最初は僕もけっこうできるもんだな〜、なんて軽く考えていたんですけど。穴を掘り進んでいるうちに、やっぱり丈夫な土ブロックを作るのが難しくて」
ほんとそれ。
ステータス強化でクラフト精度と速度にポイント割り振って、どっちも120まで上げたのに。単純計算で2割強化されてるはずなのに、なかなか上手くクラフトできない。倍率がどうだろうとベースが子どもだから誤差の範囲ってコト? 逆に考えよう、将来の楽しみがまた増えたんだって。
「どうせ、いまの俺たちじゃこれ以上の採掘はムリだし、明日からは魔力の扱い方を鍛える方法でも考えようか? 少しは貴族らしいことをしないと、父様たちも心配しちゃうだろうしな」
「はい! 兄上、一緒に考えましょう! ……ところで兄上、貴族らしいことってなんですか?」
「フッ、簡単なことだよルカニ。わからないことは、知っている人に聞けばいいのさ! 本当は自分で調べるほうがいいんだけど、本でもタブレットでも汚したり壊したりしたら事務の人に迷惑をかけちゃうからそのうちね、そのうち」
「屋敷で働いてくれている人たちのことをちゃんと考えて動く……兄上! それもなんか貴族っぽいですね! 偉いからこそ皆のことを考えなきゃいけないって、父上も言っていました!」
「た、確かに……ッ!?」
そこに気がつくとは……ッ!!
まさかルカニもギフテッド? なんてことだ、あとで父ロジャーと母メルティナに自慢しなくてはッ!!