リソース管理や稼ぎプレイが嫌いなゲーマーいる? 作:はめるん用
「寒い夜に懐に入れて眠れる程度には……なりましたかね」
「これも日頃の努力の賜物だな。普通はもう少し難儀するものだが、便利な道具に頼らず回り道をしていた経験が活きたじゃないか」
属性付与のトレーニングはあっさり終わってしまった。小さなことだけど、才能ではなく努力として評価されたのは地味に嬉しかったりして。人間、誰だって「頑張ったんだね」と認めてもらえるのは気持ちの良いものである。
この世界の錬金術士にとっては小さな一歩かもしれないが、異世界からの転生者であり穴掘りと木こりを繰り返していた俺にとっては大きな一歩だ。言ってしまえばこれもまた新しい素材、インベントリに収納すれば新しいスキルの道が開拓されるかもしれない。
ポケットの中でこっそり────止めておこう。魔力の流れを読むのは俺でさえできるんだ、父ロジャーの感知能力は文字通り大人と子どもほど差があるはず。これまでの接し方からして気づいても知らないフリで通してくれそうではあるが……いまは授業中、余計なことは考えないで集中しよう。
「魔力石の属性付与はクラフトの手間を省くという点で優れている。自力で属性錬成陣を展開できるに越したことはないが、品質の安定化……特にFAの武装はテーブルクラフトが基本になる。楽をするために苦労する、その考え方が錬金術士には必要だ」
「天然で属性が付与された魔力石は存在しないのでしょうか?」
「ある。但し、いまのお前が発見することは不可能だ」
「そうですか。それではまた粉末からコツコツ溜め込んで数を揃えておくことにします」
密かに魔力石の粉末のインベントリを拡張しているときに、石材から直接【魔力石】のスキルにルートが繋がったから量産は難しくないんだよね。岩石層から砂鉄を抽出するときの副産物でなんぼでも手に入るし。そして最後に残る砂でインベントリはパンパンだぜ。
「よろしい。では次に銃器の基本的なクラフトについて教える」
「なんだかハイペースですね」
「学んだことを試す必要があるだろう? 傭兵たちと約束したそうじゃないか。1年以内にインセクトの巣に踏み込む準備を終わらせるよう全力を尽くすと」
「改めて言われるとギフテッドに対する信用が凄いです」
「お前に対する信頼だと思うがな。さて、スライドユニットやグリップユニットのクラフトは素材が変わるだけで基本は同じであるから……マガジンユニットから始めよう。早速だがこのハンドガン用のマガジンを分解してみろ」
「わかりました。えーと、魔力を馴染ませて……形状からして縦割りにすればいいのか? パカッと割れるイメージで────金属の板?」
中から出てきたのは弾丸ではなく数枚の薄い鉄板。それも赤茶色い塗料、じゃないな、もしかして銅だろうか? で、魔法文字が丁寧に刻印されている。
「錬成台と同じ理屈だ。FAが予備の武装を収納している拡張空間でもいい。予めクラフトした弾丸を収納しておけば戦闘中でも簡単に弾薬を補充できる、というワケだ」
「直接弾丸を装填しない理由はなんでしょうか?」
「装弾数と使い回しで圧倒的な利点がある。拡張空間にも重量制限はあるが、そもそもの弾丸が軽いからな。ハンドガン用のマガジンなら250発は入る。そして、内部では1度素材の状態に分解されるのでいざというときにはショットガンやライフルにも転用できる。求められる素材の比率が違うので同じようには使えんが……なにも無いよりはマシ、というワケだ」
はえー。便利。
ゲーム的に表示されるなら、所持している弾丸は全部ひとまとめにされて武器側で消費量が決められてるタイプのヤツだ。
いや、そうか。相手は虫だもんな。確実に物量で攻めてくる相手に装弾数が15発しかないハンドガンとか無力過ぎるわ。男も使える生身用の武器でこれなら、FA用の銃器はまさに桁違いの装弾数になるのだろう。
「これ、壊れたときが怖いですね」
「逆に利用することもできる、らしい。FAのパワーで叩きつければ、数百発、数千発の弾丸に相当する圧縮された金属が破裂するワケだからな。簡易クレイモアとして使えると妻から聞いたことがある」
まさに「全弾もってけ!」のシチュエーション。
きっと学校ではそういう生き残るための手段とかをパイロット候補生の女子生徒に教えてるんだろうな〜。俺にはそんな機転を利かせるなんてこと絶対にムリだわ。情けなく悲鳴を上げながら虚しく銃声だけが響いて最後には……な、モブキャラポジションにしかなれる気がしねぇ。
「それでは鉄板に魔法文字を刻印する練習を始める、と言いたいところだが……コレオ。さきに射撃訓練場に行くぞ。お前自身の手で銃を撃つということが、どういうことなのか。それを確かめろ」