インクリメンタル☆アルケミスト   作:はめるん用

34 / 36
一般人が銃を撃っても当たらないという普通の事実。

 やることが……やることが、多い……ッ! 

 

 だが父ロジャーから、俺のためにしっかり1日を使うことができるならこんなに急ぐ必要も無かったのに……なんて申し訳なさそうに言われたら頑張るしかないんだな、これが。

 属性付与と射撃訓練という慎重なリスクマネジメントが必要な部分だけは自分で確認したかったらしい。属性付与はまぁ、魔力操作は自我を取り戻してからずっと繰り返していたからともかく。射撃は……うん……楽しみな部分はあるけど、やっぱり不安もある。

 

 

「おやおや坊っちゃん。ついにここに立ち入る日が来ちまいましたか。我ら警備隊一同、歓迎いたしますよ。それでロジャー様、わざわざご足労いただけたってことは……見学で終わり、って話にゃなりませんわな」

 

「コレオならば大丈夫、と思う部分も無くはない。だが知識だけでクラフトした武器は理屈の中でしか使い物にならん。それに、入学後のカリキュラムだけでは……な」

 

「あぁ、それは。坊っちゃんには物足りないでしょうな。まぁ、宜しいんじゃないですかね? 我々はアリの巣までは同行できませんが、こういうことでなら役立てますからねぇ」

 

 

「コレオ様、こちらをどうぞ。訓練用のハンドガン、とりあえず弾丸は1発分だけです。あ、銃口は絶対に覗き込んじゃダメですよ? 大ケガじゃすみませんからね?」

 

「重いですね。感触が」

 

「ハハッ、そう感じることができるならコレオ様はご立派ですよ。お貴族様にもいろんな方がいらっしゃって、いろんなお子様がいらっしゃいますんで。それじゃ、まず構えですが────」

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

「いいですね、なかなか飲み込みが早くて教えるのが楽ですよ。それではコレオ様、覚悟はよろしいですか?」

 

「外しても笑わないでくださいね」

 

「笑いませんよ、誰も。反動にだけ気をつけてください。我々ひ弱な男性たちにパイロットスーツによるパワーアシストはありませんからね。手元で風の魔力が弾ける感覚は、慣れるまでは肩まで痺れることもあるんで」

 

「うっかり銃を落としても以下同文」

 

「それだけ余裕があるなら大丈夫です。的を狙って、でも当てることは考えずに。とにかく銃を支えることに意識を集中して、恐れず一気に引き金を引いてください」

 

 

 あ、ヤバい。

 

 普通に緊張してきた。

 

 

 父ロジャーと隊長さん、そして訓練を中断している警備隊の皆さんの視線が刺さる刺さる。

 訓練用、形は前世のエアガンとほとんど変わらないのに手の平の感触が本当に違う。

 

 なんでだよ、どれだけチート転生者の主人公が、知識チートとかで作ってさ、当たり前のようにサクサク試し撃ちしてたじゃないか。くそ。

 

 

 目を閉じる。

 

 深呼吸。

 

 思い出せ、この世界のアシナガバチの姿を。

 

 感情の無い殺人兵器。

 

 恐れろ。

 

 だが躊躇うな。

 

 

 ────よしッ!! 

 

 

 

 

「うぉ……ッ?!」

 

 

 

 

 音がしないのは知っていた。火薬を使わずに銃身に刻まれた風と【加速】の魔法文字で射出されるという大雑把な説明は聞いていた。

 だから、魔法で撃つ銃ならと……なんだよ、結構、くるじゃねぇか。お子様ボディでは肩どころか背骨まで響いたぜ。弾けた風が胸を貫いて背中から飛び出たみたいだ。

 

 

「……まぁ、そうなりますよね」

 

「いきなり当てられたら俺たちの立場が無いですよ」

 

 

 大きく外れた。

 

 ちゃんと狙ったはずなんだけど。

 

 

「もしかしたら、なんて予感もありましたが……いやはや、しばらくは坊っちゃんのお側を離れずに済みそうですね。仕事があるのはありがたいことです。ねぇ? ロジャー様」

 

「私の仕事は領主と錬金術だ。戦闘ではないが?」

 

「えぇ、えぇ。もちろん承知していますとも」

 

「どうしてこう私の部下は……どうだコレオ。武器を手にして、銃を手にして自分で引き金を引いてみて、なにを感じた」

 

「……わかりません」

 

「わからない?」

 

「はい、わかりません。なにかを感じたような気はします。ですがそれを言葉にして伝えることができません。覚悟とか、責任とか、そうした言葉で簡単に表せる気がしませんでした」

 

 

 思ってたのと違うなー。

 

 これが“主人公”や“英雄”と讃えられるような人種との差か。結構なことだ、ヒーローを目指すには中年男性ソウルじゃ現実を知り過ぎている。これはつまり神様から、お前さんは趣味に全力で生きてもオッケーだよ♪ って背中を押されているに違いない。

 

 

「ふむ、そういうものか。いや、いい。そのための訓練だ。何度でも繰り返すが、錬金術に必要なのは術者が鮮明にイメージを描けることにある。お前はお前の感性を大切に育てろ」

 

「はい。申し訳ありません」

 

「だから謝罪は不要だと言っている。さて、私は仕事に戻るが……ここで射撃訓練を続けるか、それとも工房に戻ってハンドガンのクラフトあたりから学ぶか、好きにするといい」

 

 

 どうする? どうしようか。いや、いまの精神状態で上手くクラフトをできる気がしないな。

 俺の心はもう次弾装填、せめて的の端っこのほうにだけでも当ててみたいという闘争心がメラメラだ。単なる負けず嫌いとも言う。

 

 ちなみにステータス強化ツリーに射撃技能とか追加されてたりは、して、ない、かぁ。ん〜、残念! でも下手に武器を持つと逃げるべき場面でも戦えてしまうってなにかで見たっけ。適材適所って言葉もある。最低限の護身のため、あとはクラフトのイメージを鍛えるためぐらいのスタンスでいよう。




 運営から今回もタグ足りてねぇと怒られたので、ついでにタイトルとあらすじも真面目に考えようかと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。