もぞもぞ。
がさごそ。
ぬりぬり。
ぺしぺし。
呑気な効果音が聞こえてきそうなほどマイペースに罠を再設置するジグモたち。
対する本隊の錬金術士たちは誰の部隊が最初に戦うのかを決める会議をするため観測基地へ。
そんなもん出発前に決めておくことだろなんで現地に来てから会議しようって話になるんだよ俺たち先発隊がジグモ出てきたって連絡した意味ないだろそれじゃあ。
そして……そんな連中が連れてきた戦力は、というと。
「巣穴の調査に砲撃支援用の【シューターフレーム】を持ってきた連中はなにをしにきたん? 減点1」
「バックパックにバズーカぶら下げてるヤツらは埋もれちまって地上に戻ってこれないかもな。減点1」
「正面からの防御力に優れた【ファイターフレーム】を展開しているパイロットが少なく思えます。減点1」
「なんでフローティングマイン系の武装をセットしてないのかしら? 後退するとき大変よ? 減点1」
「閉所戦闘の救世主たるフレイムスロアー様の御姿が見当たりません。信仰心が足りないのは減点1です」
「インセクトに余計な刺激を与えないよう、待機中はコアの出力を絞るべきなんだが。減点1」
「あ〜あ〜、あんなにガブガブとまぁジュースなんか飲んで。実戦にトイレ休憩なんてないよ〜だ。減点い〜ち」
「コレオくんを見て鼻で笑ってた。減点2」
「合計マイナス9点。これは追試が必要かしら?」
「最後の2点はあんまり関係ないような気がしますが。しかし、仮にも王族から与えられた任務ですよ? いくらなんでもパイロットの質が低いというか」
「コレオ様は、怠け者でも10人集めれば8人はそれなりに働き始める、という話はご存知ですか?」
「あ、はい。領主貴族としての教育で学びました」
「では、その理屈であれば────
「……マジで言ってます?」
「マジです。なんなら、防衛都市で働く貴族たちのシビアさは傭兵以上ですよ。彼らは自分たちだけではなく市民の命と生活にも責任がありますので、実の娘だろうと容赦はしません。そういう意味では、この集団の中には少数ながら確実にホーエンハイム領のご令嬢も参加していると思います。成長が遅いだけならともかく、怠け者の穀潰しを潰すことに躊躇いのない方が多いですから」
「錬金屋の男どもがさぁ? メッチャ気合い入ってんのに、ずいぶんしょっぺぇパイロット連れてきたな〜とは思ってたんよ」
「あのドヤ顔伝令の子であぁ、そゆことって気づいたよね」
「邪魔だからさっさと帰れってのを回りくどく丁寧にドヤッてきたヤツな」
「フツーに考えたらわたしら引っ込める意味ないもんね。使えるモノは傭兵でも使わないと」
「巻き込まれないように早く帰っておいでって、オジサマの気遣いですもの。ご厚意には素直に甘えましょ♪」
「まぁ、彼女たちが本当に大人用のスペシャル教育コースに選ばれたのかどうか、真実は不明ですが……錬金術士たちに先行して数名の人間が観測基地に入ってしばらく、いきなりレーダーが正常に戻りましたからね。裏で誰がなにを企んでいるのかわかりませんし、引き継ぎなんてサッサと終わらせて逃げるのが最善でしょう」
「そう、ですね……ヴィッシュおじさんが戻ってこいと言うのであれば、素直に従うほうが良さそうですね」
大穴チラリ。
ジグモくん、キミたちは真面目な働き者だねぇ。
本隊のみなさんは明日の昼に第一陣が戦闘開始の予定らしい。無策でいきなり突撃するよりは何倍もマシだけど、その頃にはジグモ側も巣穴で迎撃態勢が準備万端になりそう、ってかなるだろコレ。
伝令の人からヴィッシュおじさんが最寄りの街に待機していると聞かされたときは耳を疑ったが、やっぱり俺を呼び戻すためにわざと後方に残ったのだろうか? 死人が大勢出るかもしれないと承知で? 王族やっぱ怖い……初対面のうちに友だチ◯コになってて良かった……。
▲▼▲▼
「コレオ様。トラブルの際には私とマリーネが責任を持ってお守りしますので安心してお休みください」
「そもそもお師匠さまたちがバイクで一緒に走ってくれてるから、トラブルなんて起きないと思うけどな!」
「いや、だけど、一応ね? 俺が一番立場が上なのだから……ひとりだけ横になってるようでは信用は得られないのだから……」
「坊っちゃん。普通はですね? ギフテッドだからって就学前の子どもをインセクトの巣穴に叩き込もうとするのがイカれてんでさぁ。諦めてお休みくだせぇ」
輸送車で移動中、皆に甘やかされてしまう俺。
別に疲れとかは感じないんだけど……ま、いいか。俺がワガママなのを知っていて意見を出してくれるってことは、皆から見て俺が疲れているように視えているということだろう。こういうのは言われているウチが幸せなんだ。
どれ、横になって。
そういえば粘性糸って何気に新素材じゃん。なにかスキルツリーに変化があるかじっくり……おぉん? なんだこの【運命の輪】って項目は。クモの糸で出現するようなタイトルじゃないだろ。なに? クモの糸繋がりでお釈迦様から輪廻スパチャ? 俺はカンダタだった……?
開くの怖いんだが……生きるために有用なスキルがあるなら無視するのは愚策も愚策だし……いや、大丈夫だ。俺が信じたチートを信じろッ! 我ながらダッセェ決意だこと……。
…………。
…………。
あるな、ひとつ。
でも名前すら確認できねぇ。
…………。
…………。
ポチるしかないか。
どれ、アンロック……と。
【遥かな旅の始まりに備えて】
錬金術士として歩み始めた貴方は自身が未熟であることを知っている。だからこそ苦難や困難に備えることの大切さを知っている。貴方がこれから組み上げる運命の輪は少しだけ、しかし確かに優しい世界を目指して轍を残すのだろう。
《リワード》
・素材ツリー物質変換ルート解放
石材→鉄鉱石
石材→魔力石
魔力石→属性魔力石
枝→丸太
繊維→布
汚水→各種インクベース液
・開発ツリーバンドル解放
レアリティ☆0バンドル全解放
レアリティ☆1バンドル条件確認 解放
レアリティ☆2バンドル内容確認 解放
・ステータス強化ツリー項目追加
魔力探知
気配探知
危険探知
おおおおおおおお?!?!?!?!
いや何事ッ?!
いや……いや、何事なんコレッ?!
えぇ……急にメチャクチャ強化されるやん……。一応アレか。ルート解放と項目追加だから、使いこなすには自力で取得したりしないとダメなのは同じか。
レア☆0だと……もしかしてこれで石片手榴弾とかインベントリ内クラフトのスキルの対象になるか? インセクト相手には無力でも人間相手なら護身になるな。護身か? 自爆じゃなくて?
だがしかし。
驚きはしたが、これは検証の楽しみが一気に増えたな。今回の珍騒動が一段落して落ち着いたらゆっくりと楽しむとしよう。
しかし、なんで急に……これ、下にスクロールできるな。もしかして解放されるために満たした条件みたいなの書かれてたり? 今後のためにも方向性を知りたいところだが、さて。
《アンロック》
ヴィッシュ・マクレガー・フォルティスに定められた死の運命を覆し、未来に続く未知なる道をクラフトした。
今回の騒動の原因は〜?
俺だけど〜♪
俺じゃなかった〜♪
俺だけど〜♪
俺じゃなかった〜♪
俺だけど〜♪
俺じゃなかった〜♪
熱海ジャストいやぁ〜♪
タマゴ巻粉〜♪
「ぶふぉあッ!?」
「コレオ様ッ?!」
「コレオッ!!」
「だ、大丈夫ですかい坊っちゃんッ?!」
「ゲホッ、ゲホッ……だ、大丈夫。ちょっと、あくびとクシャミが同時に出そうになって、それを変に我慢しようとしちゃって」
「コレオ様、お水を」
「あ、あぁ。ありがとうリリー」
ごっくごっく、ぷはー。
うーん、お水おいちい♪
…………。
…………。
よし、寝よう!