前世で知ってる食べ物だからって迂闊な発言をすると危ないかもしれない。
コレオ、覚えた!
生活水準が高くて日本の食生活に近いからって喜んでいたけれど、まさかこんなところに落とし穴があるとは……。
知識と分析から当てずっぽうで言いましたって誤魔化したものの、それはそれで変な方向に有能判定されると困るんだよな……。
ま、よくよく考えたらカレー味当てたからなんだって話だわ。地下深くに埋もれていた古代文明の遺産に記された謎の文章が日本語だったからうっかり読んじゃったとか、そんな超弩級のマヌケを晒したワケじゃないし、変な展開にはならんだろ。
それにね? そんなことより屋根を完成させないと、今夜はゆっくり寝れないよ。
領主の屋敷への招待は向こうが折れるまで誠心誠意説得を続けました。あまりにも交渉が滞るようならイヤイヤ期の5歳児並みの駄々をこねて泣きわめくところまで攻めるつもりだったが、どうにか正座からの限界お辞儀が通用して助かった。
それでも護衛を外すワケにはいかないからと、ほかのパイロットたちに毛布とか色々用意して持ってきてもらったんだが。やっぱり基本FAって簡単な通信しかできないんだな。
戦闘国家なんて名乗ってるくらいだから特別仕様のFAで通話できたりするのかな? と思ったけど。合図を送って、人を呼んで、用件を伝えて送り返して……タブレット端末はあるのに携帯電話が無いとは。
勝手に作ったら大変なことになるかな?
うん。なるな、確実に。
もしかしたら通信関係に大きな制限とかあるかもしれない。それが大陸条約で定められたものであれば、俺はめでたく国際犯罪者デビューでござる。仮に俺ひとりの問題で終わるとしても嫌だわそんなもん。
おっと、余計なこと考えてるとマジで暗くなるまでに屋根が完成しないぞ。適当に柱を立てて、鉄を引き伸ばした波板をクラフトで接着して……と。これで雨が振っても安心して眠れるな!
さ、寝るべ寝るべ。
▲▼▲▼
「やぁ! おはよう少年」
「……おはようございます。ちゃんと戸締まりはしたはずなんですが、なぜ目の前に知らない女性がいるのでしょうか?」
「それはね? ドアは施錠されていたけれど、壁がほとんど無かったからだよ。せめてドアの両脇ぐらいは塞いであげよう?」
「風通しの良い職場で働きたかったので」
「ねぇ少年。私にも妹と同じように気楽な口調で話してくれていいよ」
「妹?」
「スティーリアは私の妹だよ。膝枕の感想はどうだった?」
「大変お世話になりました。……あのパイロットの人、そんな名前だったのか」
「なんだ、名乗ってなかったんだ。じゃあ勝手に教えるのは良くなかったかな〜。失敗失敗!」
「そうだね、普通は妹の前に自分の名前を教えてくれても良かったと思うよね」
「あ、ゴメンゴメン。私のことはカティと呼んでいいよ。ちなみに16歳だからコレオくんよりお姉さんなんだぜ!」
「16……16?! え、じゃあスティーリアは」
「12歳。コレオくんは10歳だったっけ?」
「テナクス戦闘国家じゃ子どもでも立派な戦力か。毎日のように、じゃなく、本当に毎日インセクトの襲撃があるんじゃ手段なんて選んでいられない……と」
「あはは! 面白いね〜コレオくんは! 他国の人からは非人道的だってしょっちゅう文句を言われてるんだけど。……また警鐘が鳴ってるよね? でも私たちにとってはいつものこと。パイロットになれるなら誰だって戦わないと、もしかしたら今日は守りきれないかもしれない」
派手な音がする。
空気が震えているような気がする。
昨日よりもハッキリと感じるのは、いろいろ話を聞いて俺の中でイメージと結び付いたからだろう。人、それを先入観と言う。
本当にインセクトと戦争やってんだな〜、なんて危機感のある想いではない。ようやく天使様が言ってたタワーディフェンスらしい状況になってんな〜、という戦ってる人たちに対してメッチャ失礼な感想である。
なんならムカデの姿を生で見たいとすら思ってますがなにか? この街のパイロットたちがどんな武器でどんな戦い方してるのか気になるじゃん。フォルティス王国では危険な目にあったわりに肝心のFAとインセクトの戦いは映像記録でしか見られなかったんだもん。
「生きるための手段を選べる人たちには、生きるために手段は選べない人たちの気持ちなんてわからないさ。自分自身が何者かに殺されそうになる直前までね。知らないもの、わからないモノは想像できない。良し悪しの話じゃないでしょ? それは」
「でも、なにも知らないヤツに文句言われるのってムカつかない?」
「それはそう。で、ちょうどカティさんの目の前にもなにも知らない呑気な錬金術士がいるんだけど。そいつにもムカついてんの?」
「まさか! 私とコレオくんは初対面なんだよ? ムカつくかどうかはこれから考えるよ。もっとも? そこに積まれた鉄の塊を見たあとじゃねぇ〜。リサイクルのレベルが違う。うんうん、キミは素晴らしい錬金術士だ!」
「そりゃ良かった。どうやって最初の信用を得ようか本気で悩んでたところだよ」
「お互い様だよ、それは。優秀な錬金術士さんとは、できるだけ友好的な関係になりたいだろう? パイロットとしては、さ」
ふむ。
なんかお茶目な感じにキラッ☆ ってエフェクトでも出そうなウインクしとるが、喋ってる内容は結構真面目というか切実というか。
たった1日だけどゴミ山を漁っていて気づいた。ホーエンハイム領とは内訳が違う。武器の割合が多いのもそうだけど、実家では廃棄されたFAの武装や装甲パーツなんて見たことがない。
メンテして繰り返し使うより、大量生産と大量消費でインセクトを押し返している……とすれば、リサイクル能力のある錬金術士はそれだけで価値があるはず。なんだ、思ったより生存戦略は簡単そうだぞ? 需要が無いのが一番困るからな、生産者側としては。
「他人の不幸で飯を食うみたいで申し訳ないが、頼ってもらえるなら俺としても助かるよ。食いっぱぐれる心配しなくていいし」
「そんなこと気にしなくても大丈夫。だって私たちにとっては普通のことだから。仕方ないんだよ、立地条件が良くないし。テナクスそのものが大森林壁の目の前だもん、むしろ小型のインセクトしか来ないだけラッキーが続いてるんじゃない?」
「大森林壁……?」
なんか、どっかでチラッと聞いたような。
父ロジャーとの会話だったっけ? そのうちって流されると俺もすぐに忘れちゃうからな〜。
「あれ? もしかして教えてもらってない? 領主貴族の息子ならてっきり。んっとね、大森林壁っていうのは、インセクトの世界と人間の世界の境界線で、天まで届く巨大な森のことだよ。なんて、私も詳しくは知らないんだけどね。調査隊が無事に、まともな状態で戻ってきたこと無いらしいから」
タワーディフェンス→ほぼ無限に敵が出る。
無限に敵出現→大量のリソース源がある。
そのリソース源はどこ? →目の前にあるよ!
なんだ、思ったより生存戦略は厄介そうだぞ? 余裕が無いのが一番困るからな、防衛側としては。