朝の準備を済ませて本日もリサイクル業務を始めよう! ……と、いうタイミングで。
「お〜い!」
むむ、いかにも現場の人間って風貌のおっさんたちの集団がこっちに歩いてくるな。
「お〜い!」
声の雰囲気からして苦情の類ではなさそうだ。なんなら友好的な感じもする。
ならば。
「へーいッ!」
こちらも元気よく迎え撃つッ!
「なに? ……そぉいッ!」
なん……だと……ッ?!
まさかのアピール返しとは……やってくれる!
「せぇぇいッ!」
「よぉぉいッ!」
「ほいさぁッ!」
「こらしょぉッ!!」
「おんどるばぁッ!!」
「ほっきゃら「いつまでバカやってんだいッ!」あだぁッ?! かあちゃん、いきなりグーで殴るこたぁないだろぉ……?」
「あ、終わりですか? 申し訳ありません、まさかこっちの悪ふざけに付き合ってもらえるとは思ってなくて。つい楽しくなってやっちゃいました。ごめんなさい」
「ん? なんだい、こんなところまで出稼ぎに来るだけあってしっかりしてるねぇ! ウチのバカどもにも見習わせたいぐらいだ」
出稼ぎ?
「えっと、その話は誰から」
「船長からだよ。アンタ、家計を少しでも楽にするためにって、錬金術の勉強がてら船長に案内してもらったんだろう? まさかゴミ山に様子見に行ってくれって頼まれたときは耳を疑ったけど……ふんふん、なるほど。この小屋はアンタがクラフトしたのかい?」
「風通しの良い自慢の事務所です。ぶいッ」
「あっはっは! モノは言いようだね! ……ほらアンタッ! ボサッとしてないで素材を見せてもらいな!」
「へいへい、わぁ〜ってますよ……。坊主、オメェさえ良けりゃそっちに積まれてる木材だの鉄インゴットだの、オレたちに買い取らせてくれねぇか?」
「はぁ。それは別に構いませんが、まずは直接触れて品質を確かめてもらってからでもいいですか?」
「そうか? 正直、パッと見ただけでも中央から送られてくるモンより上等に見えるんだが……ま、いい。ガキでもそういところがしっかりしてんのは信用できる。そいじゃ、お言葉に甘えて品定めさせてもらうぜ。おい、テメェら」
昨日の今日で対応が早すぎる。
これも船長のギフトとやらで先を見通した結果か? 人情を楔にして俺をテナクスに縛り付ける……いや、それはないか。ある程度とはいえ未来が見えているなら、約束を違えるようならチート能力の全てを使ってでも実家に帰ろうとすることも予測できるはず。
ならこれは俺が領主との繋がりを嫌がって生活基盤を自力でなんとかしようとすることを見越して先手を打った、みたいなパターンかも。でもギフトの説明を聞いた感じだと俺の行動は予測できてなさそうだから、きっと船長側も言い訳を用意するのに戸惑ってんだろうな〜。転生者の歪んだ価値観なんて理解できないだろうし。
「ところで女将さん、買い取りについて相談したいことがあるんですが」
「なんだい? 安く買い叩くつもりはないけど、子どもが相手だからって甘い商売をするつもりはないよ」
「お金より食事とかそういう、物で直接支払ってもらえたりって、できます?」
「そりゃ……でも、いいのかい?」
「大丈夫です。お金のほうは俺の能力が認められれば、船長が領主様と交渉してくれることになってるんで」
先手を打っていいのは、先手を打たれる覚悟のあるヤツだけだ。先読みできるギフト持ってんだろ? なら面倒事は全部押し付けてやるから後始末はしっかり頼むぜ〜?
「そういうことならコッチは構わないよ。それなら着替えは? ちょいとサイズが合わないかもしれないけど、古着でも良けりゃシャツなんかも遠慮なく使い捨てにしておくれ」
「かあちゃん、それ、オレの」
「はんッ! 仕事でダメにするんならともかく、酔っ払ってケンカして破けたシャツを縫ったのは誰だと思ってんだい! 文句があるなら次から新しいシャツは自分の小遣いで買いな!」
「はい、文句なんてないです……どうぞ、お好きにお使いください……」
もしかしたらこの集団の統率者は親方っぽい雰囲気の男性ではなく奥さんかもしれない……あまりにも特殊な組織構造、転生者じゃなきゃ見逃しちゃうね。
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素材の取り引きは滞りなく終了した。数日に1回、工場の若い人が取りに来るそうだ。目の前のゴミ山しか見えてなかったけど、奥のほうに人力の荷車のためのレールがあったらしい。
現金ではなく現物でやり取りできるのもなかなか美味い。単に金の使い道なんてあって無いようなものだから提案したが、金銭ほど帳簿を細かくつけないだろうからポッケナイナイも楽になる。もとから廃棄物だしあんまり関係ないかな?
よしよし、これで当面の生活については爆速で問題が片付いたぞ。これなら気兼ねなくFA関係のスクラップにも手を付けられ……の、前にムカデとの戦闘も見せてもらわないとダメか。人間用の武器もあるし、パイロット以外も戦ってるならそれも参考になる。
うん? ということは先にパイロットじゃなくてもインセクトに有効打を与えられる武器を作るほうが信用を稼ぎやすいか? ファンタジーの定番みたいに“女性じゃなければダメージを与えられない”のではなく“女性のほうが桁違いのダメージを出せる”ってだけだし。
……もしかしたら、使い捨てにされてるのはそれが理由かもしれない。火力だけを優先した結果、武器そのものの消耗が激しすぎてスクラップにするしない、とか。
つまり好きなだけロマンを詰め込んでも許されるってことだな!
だって火力が無ければ武器として役に立たないんだから!
よっしゃ、戦闘の様子を見せてもらう前に人間用の武器のスクラップ解析したろ。正体のわからんモノでもインベントリに収納しちゃえば一発鑑定だから誰かに教えてもらう必要もない。
それに父ロジャーの許可を得て武器関連の錬成については色々勉強させてもらっている。あとは開発ツリーで武器関連のバンドルをアンロックして、簡単なモノから試作を繰り返せばイケるはず。
そう考えると、ゴミ山って結構アレだな。情報の塊過ぎて他国の人間を立ち入らせたらダメじゃね? 錬金術士なんて特に。
うん? ひょっとしてスキルでクラフトした道具とかルカニに触らせてたのって、実はマズかったのでは?
いや、でも弟だし……中間素材なんて俺じゃなくてもクラフトできるし……大丈夫、だよな?