一応、なんの武器を作るかは決めている。いまの俺でも作れそうな単純な構造で、貫通力と射程距離を両立させるならハンティングライフル系の武器しか勝たん。
接近戦は論外として、男がインセクト相手に戦いを成立させるなら……離れた場所に位置取りして狙撃、目の前まで近寄られたら諦める。これしかない。
俺の予想を裏付けるように、スクラップにはそれらしい銃器の残骸もゴロゴロ転がっている。アサルトライフルやショットガンも個人的に興味はあるんだけどね。主にどういう運用してるのかとか。まさかパイロットでもない人間で巣穴の攻略はしてないだろうし。
それに長距離からの狙撃を想定した人間の銃器は、完全に役割分担が機能しているホーエンハイム領ではあまり見かけないタイプだ。警備隊の仕事は人間相手を想定した治安維持だったから、やはりマシンピストルとショットガンがメインになっていた。見張り役にスナイパーライフルとか全然アリな組み合わせだと思うんだけど。
さて。
それでは改めて、どこから調べようかな……?
遠距離狙撃ができそうなライフルの残骸で〜、なるべく原型の残ってるヤツからの〜、とりあえず大きな違いが無さそうなマガジン周りから分解してみるとしよう。
貫通弾を収納する拡張空間を小型化するために、複数の鉄板に魔力伝達率の高い銅を使った【カッパーインク】という塗料を使って属性を刻み込んだヤツが入ってるマガジンユニットが……無いな、うん。
んんー? まさかボルトアクション方式でひとつひとつ手作業で? そんなバカな、ちょっと全体に魔力を通して魔法文字を探すか。
素材の表面を、パーツひとつひとつの表面に刻まれた属性を指先でなぞるように……お? 引き金の上のところに違和感みっけ。
これは……損傷が酷いな。俺の技術じゃ素材として再錬成できそうにないレベルで魔力の流れがグチャグチャになってやがる。
もう少し深くまで魔法文字を解析できれば……んん、んん〜? これ……もしかして、アレか……軽トラックで新幹線に勝つためにロケットエンジン無理やり接続しました的な。
かなり乱暴だけど実用的なんじゃなかろうか。メンテを考えず使い捨てにする前提で超火力を出す、その設計が原因で内部構造が簡単にぶっ壊れてくれるおかげで結果的に使用者も安全ってコトか。
ふむ。
ふむふむ。
これなら俺の付け入る隙もあるかもしれん。
別に産業革命を起こしたいワケじゃない。撃って当たってダメージを与えられる武器が作れればいい。
プロトタイプも完成してないうちにコストパフォーマンスを考えるのはアホの所業、まずは領主様かその関係者に利用価値を示すのが俺の生存戦略だ!
普通に考えたら他国から掻っ攫ってきたヤツに自由に武器を作らせるとかあり得ないんだろうけどね。監視役がそれをアッサリ認めるぐらいには“使えるモノはなんでも使え”って考え方が基準なんだろう。
初めてアシナガバチを見たときの恐怖を忘れたつもりはないが、ホーエンハイム領っつーかフォルティス王国って平和だったんだな。襲撃らしい襲撃なんて無かったし。ヴィッシュおじさんは暗殺されそうになってたけど。
そんな平和な実家に帰るためにも、チェキチェキ働くとすんべ。まずはベースとなる頑丈な鉄板を作るところからだな。粗鉄インゴットと火属性魔力石を使って、より頑丈な錬鉄インゴットをクラフトしよう。
で、この錬鉄インゴットがインベントリの中で認識されれば……よしよし、レアリティ☆1の【射撃武器バンドル】が解放できるようになった。これでスキルを使ってマガジンユニットが作れる。さすがに暴発の危険性がある部分を独学でハンドクラフトは怖いッス。
…………。
うん、やっぱりパーツも作ろう。
パイロットたちの聖域に踏み込もうってのに、全力を尽くさないのは失礼が過ぎる。トルメンタさんやシェーネスさんたち、俺に良くしてくれた傭兵の皆さんに顔向けできない。
チート転生者がチートスキル使わなきゃ、どんな言い訳しても舐めプだろそれは。いくぞインセクト! 保身なんてくだらねぇ、俺のチートを見ろッ! 安全なんて棄ててかかって行ってやる! 野郎オブクラフターッ!!
▲▼▲▼
そして完成したのがこちら、レアリティ☆1の銃器【ハンティングライフル】です。
これがこの街の戦いに通用するかどうかを考えるのではなく、こいつをこの街の戦いに通用するようクラフトするのが俺の、錬金術士の仕事だろうが……ッ!! 危なかった、かなり自分を見失っていた。
なんて、正気を取り戻したところでこのままだとインセクトには通用しない事実は変わらない。なのでこれからライフルに属性魔力石を使い強化することで火力の底上げをしたいと思います。
といっても、やることは単純。銃身に加速の魔法文字を刻むことで弾速をパワーアップさせるだけ。速度はシンプルな破壊力となる。それで成功したらほかの属性も追加してさらなる破壊力の改良を目指す。これだ。
んじゃ早速、汚水からインクベースをクラフトしよう。そこに僅かながら集まった銅と、水属性の魔力石を入れて……おぉ、銅があっという間に溶けて無くなった。
コレ指で触ったらダメかな? 溶けた金属だもんな、さすがに止めといたほうがいいか。新しいスキルをアンロックできるようになるかもしれないし、まずはなにか適当なビンとかに入れて1度インベントリに収納しよう。説明も見たいし。
どれどれ?
【カッパーインク】
道具に錬成陣や属性の魔法文字を刻むために使われる特殊なインク。先に属性魔力石を溶かし込むことで、本来の用途よりも上位の属性を塗布するだけで刻むことができる。ただし、直接属性を付与したインクは異なる目的で再利用することはできない。
垂らすだけで作業が終わる、ってコト!?
そいつはスゲーや! こんな便利なモノあるのに使わないとかマジで傭兵の皆さんたちを舐め腐ってるも同然だったわ。
ほなら、こいつに加速の属性魔力石を溶かして……ライフルの銃身に垂らして……本来なら覗き込む行為は殴られても文句の言えない危険行為だけど、いまだけは勘弁してもろて……おほぉ〜! 銃身の内側にほんのりと光る魔法陣が!
いうて生身で運用できるうちは役に立たんだろうけど。自分が戦力になれることを証明するのに、自分では使いこなせない武器をクラフトしなきゃならないジレンマよ。そこそこ身体も出来上がってきてるし、もう少しステータスで筋力とか育成するか……?