「申し訳ありません小ホーエンハイム卿。挨拶は後ほど改めて……と、自分のほうから申し上げておきながら随分と日にちが空いてしまいました」
「お気になさらず船長。宝物庫を自由にさせていただいて感謝してますよ。皮肉などではなく本気で。ホラ、この通り。船長さえ良ければ試し撃ち、してみますか?」
「む……では、せっかくですのでお言葉に甘えさせていただきましょう」
出会ったときと変わらない老紳士スタイルの船長に試作型加速ライフルを渡す。いまのところ転生者としてのメタ読みでしか信用できる情報が無いけれど、能力のある人間との繋がりは無駄にはならないはず。
あと単純に試射をお願いするのに丁度いい知り合いが船長しかいないんだよね。素材を買い取りに来てくれる人たちは非戦闘員だし、見張りのパイロットはスティーリアさん以外はあんまり姿見せてくれないし。
「アレを狙えばよろしいのですね。それでは失礼して────ほぅ」
「一発必中。さすがです」
「威力以外は素晴らしい出来栄えだとわかります。射撃時の反動もほとんど感じません。装弾数はどの程度でしょうか?」
「80。ライフルとしては標準的な数値のはずですが」
「このフラメル領で使用されているモノは20発で使い物にならなくなります。もちろんFA部隊の装備ではありません。パイロットスーツで支援戦闘を行う候補生たちのための武器です」
「20発。さすがに単発の使い捨てではなかったか。しかし、パイロットスーツだけで戦う候補生たち……ですか」
「はて? 小ホーエンハイム卿は候補生たちのことをご存知ではないのですか? てっきり自分は、彼女たちのために武器の改良をしてくださっているのかと」
「これは自分のためですよ。ムカデたちをどのように迎撃しているのか知りたかったので、見学の権利を得るために私の利用価値を示そうと思いクラフトしました」
「小ホーエンハイム卿は勉強熱心でございますな」
「父からは知的好奇心の化け物を内側に飼っていると呆れられましたがね。誰かが私の役目について教えていただければ、この化け物も少しは落ち着くと思うのですが」
「残念ながら、自分でも正確なところはわからないのです。祖国テナクスの繁栄ではなく平穏を願っても、どうもノイズが酷くて困っていたところ……運良く必要な人物を発見できた次第でして」
「ノイズ?」
「えぇ。まぁ、若い頃も極稀にありましたがね。ただの老化現象なら受け入れるだけのことですが、せめて小ホーエンハイム卿をフォルティスにお返しするまでは騙し騙しでも使うしかありません」
あー、神童も二十歳を過ぎればタダの人って言うもんな。与えられた力にばかり頼らないで自分で努力しなさいってことか。
でも船長もなかなかのご年配に見えるし、ギフトを使いこなすための努力を怠らなかったからこその現在なのかもしれない。俺も見習わなけりゃな。
「ところで、このライフルはこれで完成でありますか?」
「いえ、せめてヘルメットぐらいは貫けないと。一応ムカデの外骨格を素材にしていますので、目安になれば」
「ふむ……わかりました。それでは自分のほうからは、領主様に掛け合って守備兵と話せる機会を設けられるよう取り計らいます。もちろん説得はしません。それは貴方の望むところではないでしょう」
「その気遣い、私を招待してくださったときにも欲しかったですね」
「ハハッ、それは耳の痛い話ですな。言い訳でしかありませんが、正門から我が祖国にお越しいただく手段も当然ご用意させていただくつもりでした。しかしそちらは酷く……抽象的な例え話になってしまいますが、パズルを組み立てている途中、離席して戻ってきたら粉々にされたような……まぁ、違和感と不快感がありましたので、今回は見送らせていただきました」
つまり正々堂々と入国していたら十中八九ろくでもないことになっていた、と。そういえば優秀な錬金術士は中央とやらに集められるんだっけ?
どんな扱いされるのかは知らないが、インセクトから人々を守るための防衛都市がこの扱いだもんな。誰にとって、は知らないが、俺にとっては面白くないことになっていたのだろう。
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ライフルの改造をどうするのか、リサイクル業務をしながら考える日々を過ごしてしばらく。
「船長から話は聞いた。お前がインセクトとの戦いに参加を希望している錬金術士か?」
「それは違う人の話ですね。俺は戦闘への参加は希望していないので」
「む、そうなのか?」
「錬金術士の仕事はパイロットの補佐です。そのために必要な情報が欲しいだけで、インセクトと戦うなんて絶対に嫌ですよ。死にたくないので」
「そうか。試すような真似をして悪かった。もしもお前が自分も戦う、といった旨の発言をしたら防御陣地への立ち入りを断るつもりだった」
「むしろ立ち入りたくないんですが。もっと離れたところからインセクトの様子を観察したいというだけの話なんですが?」
「む……そうなのか? そのライフルがムカデどもに効果を発揮するか、試したいだろうと思っていたが」
「これはまだ未完成ですよ。パイロットスーツで支援戦闘を担当している人たちがいると教えてもらいましたからね。最低でも生身で持て余すぐらいの火力を出せないのであれば、試す価値もないでしょう」
「ふむ。理解した。ならばいまのお前に必要なのは、戦場の現実を知ることよりも先に武器開発の助手だろう。なに、ひとりふたりパイロットを融通するぐらいの余裕はある」
あら意外。
こういうときって「貴様の道楽に付き合わせるような戦力は無い!」みたいな感じで断られるのがテンプレだとばかり。そのために武器作りで備えていたんだけど。
予測は外れてしまったが、パイロットの協力を得られるのは素直にありがたい。自分ひとりでは試せない魔改造を好きなだけ施せるってことだからな。
俺も所詮は男なんでね、女性キャラがバカでかい銃器をブッ放す姿は大好物さ! それはそれとして某13みたいなプロフェッショナルなおじさまも大好きです。