納得9割、落胆1割ってとこかな?
やはりムカデの外骨格を貫通するほどの威力は無かったが、それでも足止めぐらいはできるらしい。
それに。
「共喰い……? いや、ムカデの習性か」
この世界のムカデは視力が極端に弱く、獲物を探すときはほぼほぼ魔力反応に頼っている。
それでいて動きのあるモノには取り敢えず噛み付く習性があるので、足を止めた前のムカデが後続のムカデたちに容赦なくバラバラにされていた。
「俺のクラフトした武器が、少しは役立っているようで安心しました」
「そうか。だが運用方法について少し考えなければダメだな。このままでは自分たちの首を絞めかねん」
「……? なにか不都合がありましたか?」
「少年がクラフトしてくれた武器に問題はない。ムカデの死ぬ位置が遠すぎるのが問題だ。奴らの体液には当然魔力が多く含まれているのは知っているだろう? それを栄養剤として森が広がれば厄介なことになる」
「インセクトを駆除するはずが、インセクトの活動圏を広げてしまう……申し訳ありません、そこまで考えていませんでした」
「む? いや、少年の仕事にケチをつけるつもりはない。Fメタルを使わない武器で良くやってくれている。性能に問題がないのだから、あとは我々パイロットの仕事だ」
ドヤ顔助かる。
そうだな、なんでも悪いほうに考えるのは良くない。今回の成果でいえば、足止めができて同士討ちも狙えるという事実にまで目を背けなくていい。
成功したら喜び、失敗したら反省して次に活かす。その割り切り方こそプロフェッショナルに求められるモノだ。
と、いうか。あんまり自虐してると
領主貴族として、錬金術士として、今後も生きていくために────戦場で生き残るためにはこういう考え方も必要になるワケだ。
深淵の底から「アナタはそこにいますか?」という呼び声が聞こえても、元気よく「私がウギョペレパ地獄大魔神村長です」と返事するぐらいの気構えで戦場に挑まにゃならん。
よっしゃ。
気持ち切り替えて観察したろ。
「……頃合いだな。総員ッ! 現在の射撃ラインを維持しろッ! 群の先頭を狙う必要はないッ! ムカデどもの流れが一瞬でも止まればそれでいいッ!」
タワーディフェンスの定石だな。
下手にゴール付近に火力を集めて一気に薙ぎ払おうとしても、物量による押し出しでアッサリと抜けられるのは良くあること。ある程度は奥のほうに火力を持っていって流れに切れ目を入れるほうが少ない戦力でも案外どうにかなるものだ。
そして、同士討ちの壁を乗り越えてきたムカデを次の狙撃班が迎え撃つ。ここと同じようにFAを展開したパイロットに指揮された候補生たちが、例のインスタントライフルを連射しては交換を繰り返している。
ふむ、ふむふむ。向こうはしっかりムカデにダメージ入ってんな。火力特化の使い捨て、これをFメタルでクラフトしたらどこまで上乗せできるのだろうか? 一撃で全てのリソースを持っていかれる切り札、それもまたロマン。天敵はエリクサー症候群だ。
大雑把に数を減らせば接近戦の出番、といってもアサルトライフルやショットガンによる射撃戦がメインのようだ。僅かに浮遊するタイプのFAなのか、スケート選手のように草原の上を滑るような動きで攪乱している。
火炎放射器が見当たらないのは延焼のリスクを鑑みて、かな。インセクトの体液はよく燃えるってデータあったし。一瞬だけ激しく燃え上がるタイプで燃料としては使い難いらしいが、その一瞬で周囲に燃え広がれば大惨事になってしまう。
ん?
そういえば。
「どうした少年。気になることがあるなら言ってみろ」
「シューターによる砲撃支援は無いんですね」
「あぁ、それか。バズーカやグレネードランチャーは使えない。飛ぶからな」
「飛ぶ?」
「まれに軽いのが混ざっている。フライトユニットを装備しているかのように、爆風でフワリと浮くんだ。それで向こう側に飛んでくれるならまだいいが、手前に来て大事になったことがある……らしい。私が12でパイロットになったときにはもう使われていない。この話も祖母から聞いたモノだ」
んんッ! アースをディフェンスするフォースで親のインフェルノより見たインフェルノの光景ですぞッ! 弱い武器でいきなり挑むと、ロケットランチャーとかの爆風で虫が飛び散って包囲されるんだよな……。
▲▼▲▼
候補生の女の子たちに感謝の言葉と一緒にちゃっかり増産を依頼されたりもしたが、どうにか無事に帰宅できました。やったぜ。
危なかった、堂々とした態度にもタイムリミットがあるからな。これでインセクトと向き合うのは3度目だが、指の震えが止まらない。フフフ、夜おトイレに行くとき幽霊出てきたらどうしよう?
だが知識を経験に変えることができた。今日の体験は黄金でも交換できない価値がある。本物の、戦場のニオイ……これから錬金術士としてこの世界で死ぬまで付き合うことになるんだ、早めにはじめましての挨拶は済ませておいたほうがいい。
それに、実際にムカデの挙動を確認できたことでスティーリアさんにプレゼントする武器のアイディアも固まった。
雰囲気だけでツインなライフルを第一候補として作ろうとしていたが、付与する属性を吟味すればガチで有効な武器に仕上げられそうだ。
肝心なのは、俺自身がイメージを明確にすること。そこから先はチートスキルがどれだけ応えてくれるか……違うな、応えてくれるまで気合いと根性を見せつけてやらなきゃいけない。
よし、最初にやるべきことが決まったぞ。それは────鼻血に備えて予め布切れを突っ込んでおくことだ!
命懸けの世界で転生者を好きにさせるためには、前世の倫理観が邪魔をすることがあります。だから、割り切らせるためのイベントが必要だったんですね。
真面目な連載作品なら主人公の葛藤を時間を使って表現しても面白いかもしれませんが、本作のコンセプトは朝刊と夕刊の四コマ漫画なので2話も使えば充分でしょう。はよ素材まみれになろうや。