「おはようコレオくん! 今日もイイ天気だね私の武装は?」
「……おはようございますカティさん。戸締まりはちゃんとしたはずなんですが」
「確かに扉には施錠がキチンとされていたし、いまはちゃんと壁もある。それでも私がこうして侵入できたのは……キミが家の外で寝ていたから、という単純なトリックさ!」
「失礼な。その言い方だと俺が野宿してるみたいに聞こえるじゃないですか。ちゃんと作業小屋の中ですし、毛布だって被ってますよ」
「はっはっは! 似たようなモノじゃないか、スクラップの真横で寝てるんだから。ほら、そんなことより朝ごはんにしよう。腕は大丈夫? 私の武装を作ってくれる大事な腕だからね、代わりに食べさせてあげようか?」
「清々しいまでに下心を隠しませんね。魔力さえ回復すればどうということはありませんよ。先に体、拭いてくるんで」
神出鬼没のカティさん、そんなにスティーリアさんにクラフトしたツインでマグナなライフルが羨ましかったのだろうか? 本人からの感想を聞くよりも早く朝イチで突撃してくる程度には活躍してくれたことへの褒め言葉として受け取っておこう。
「ま、私のぶんの武装のことも本気ではあるんだけど……ちょっとだけ真面目な話も持ってきたんだよ。ジャジャ〜ン! なんと、コレオくんの実家であるホーエンハイム領からお手紙が届きました〜! と、いってもプライベートメールじゃなくて領主同士のお仕事用のやり取りなんだけどね」
「へー、それは凄い。で、それって公務の正式な書類ってコトですよね? そんなもん持ち出しちゃってあーた、領主様とかに怒られでもしたら」
「安心しなよコレオくん。逆にね、怒られなければ問題にはならないのさ!」
俺、知ってる。
あとで見つかってこっぴどく怒られるヤツ。でも公務扱いになるだろう手紙を持ち出せるってことは、それなりに領主様に信用されているポジションなんだろうな。それだけ姉妹で優秀なパイロット説、あるんじゃない?
「で、内容をザックリ説明すると……キミのお父さんは正式な形でフラメル領に行儀見習いとして差し出したって方向に調整したみたいだね。ローゼンクロイツ領の領主、あ、これは代理のゼノビア様じゃなくてゲオルグ様のほうね? と一緒に悪ノリすることにしたんだね〜」
「なるほど差し出した。フォルティス王国での俺の扱いが愉快なことになってるのが手紙でも簡単に伝わるのは楽で良いことですね」
「安心しなよ、愉快なことになってるのはテナクスも一緒だから。コレオくんの安全のために、カモフラージュのために、王国での悪評を利用して根性叩き直されてこい! って体裁を整えたのはわかる。でも、仮にもギフテッドかもしれない、って言われた錬金術士にウチの中央政府が無関心なのはな〜。私的に解釈違いも甚だしいんだよね〜」
「あぁ、優秀な人材は自動で栄転するシステムでしたっけ?」
「戦闘が頻発する防衛都市よりも、安全な中央政府のお膝元でFA武装をせっせとクラフトしてくれたほうが国益になるから仕方ないさ。装甲パーツも武装パーツも申請が簡単に通るから助かるよ。同じくらいコーヒーも簡単に届けてくれれば忠義の心も満タンになるのに」
万が一を想定して本命の生産ラインはインセクトと接触しない安全な後方へ。領主貴族としては反論できないロジカルな判断だ。
いうて街の活気はテナクス戦闘国家の方針を肯定的に受け入れている証明でもあるのだろうけど。やっぱり食い物の心配が無ければ大抵のことは許せるんやな、って。
「ま、私的には別にいいんだけどね。領主同士の慎ましいやり取りが国家同士の駆け引きになっちゃったらクソ面倒だし」
「子ども同士の微笑ましいイタズラに、親が口出ししたせいで本気のケンカになるみたいな?」
「放置するなら放置するで徹底すればいいのに、なぁ〜んで余計なコトしたがるんだろうね〜? で、ね? コレオくぅん♪」
「いっけな〜い☆ 今朝のぶんのお洗濯をしないとママに怒られちゃ〜う☆」
「お洗濯は昨日の夜に済ませてあるでしょ? まぁまぁそう嫌がらずに話だけでも聞いてよ。そのあとにどうするかの選択はキミの自由って雰囲気だけは出すからさ」
「なんちゃって選択肢やめろや」
「少し真面目な話をしよう。キミはギフテッド疑惑で国を騒がせたことを反省する意味でフラメル領に行儀見習いに出された。それはつまり、コレオ・ホーエンハイムに対して相応の経験値を積ませる必要がある」
「ゴミ山を更地にする、といった微笑ましい笑い話ではなく……俺が盛大に苦労したという建前が必要になった、と」
「そういうこと。ま、キミのお父さんもイロイロと動いているのだろうけど、今後のお付き合いを良好に続けるためにもフラメル領地側で適度な無茶振りをしないとバランスが取れないんだよ。ちなみに許可はちゃ〜んと得てるよ? あ、内容についてどうこうじゃなくて、コレオくんなら許しがあれば大抵のことには対応するから心配するなって後押しの意味でね」
「ルールを守ればルールが守ってくれるので。約束や許可は大事ですよ」
「それも書いてあった。下手に約束したり許可を与えたりすると、その中でなにをやらかすかわからないから1時間以上目を離すな、監視はどれだけ厳重にしてもロジャー・ホーエンハイムの名で許すって」
「う〜ん、父様からの信頼と親子の絆を感じる措置!」
「で、実際になにをするかだけど……Fメタルをクラフトできるなら、銅が足りなくなるでしょ?」
「まぁ、スクラップの内訳にも偏りがあるので」
「だから、銅鉱石の採掘現場にご招待しようじゃないか!」
「でも危険なんでしょう?」
「いきなりムカデの住処に連れて行くようなことはしないさ。まずは比較的安全なところから始めよう。フラメル領から簡単に行けるイイ場所を知ってるんだ。かなり古くから銅が採集できる場所で……」
「────【ヨロイムカデの抜け穴】って呼ばれてるんだけど」
その呼び名で比較的安全はウソでしょ。