と、いうことで。
行儀見習いとしての建前をドドンッと整える!
……ための、実績作りをする!
……ための、銅の採掘現場にお邪魔する!
……ための、実績作りをする!
……ための、正式な錬金術士として活動を開始する!
……ための、準備をする!
……ための、打ち合わせのお時間です。
俺の趣味の時間が公務に切り替わってしまったということで、領主様のお屋敷からは執事のトラックスさんとライムさんがやってきました。
ヨロイムカデの抜け穴の説明? それはキャンセルだ! というか教えてもらえなかった! 迂闊に情報を与えると危険だから教えられないって言われてしまった。
なんでや、俺は3歳で自我を取り戻してから“いいよ”と“だめ”の約束はちゃんと守ってきたがな。
勝手に行動したら10割全部自分の責任になるんだもの、そんな迂闊なマネはしませんって。誰かに責任を背負わせた上で、ルールの中で工夫しながら好きにやるから楽しいんじゃないか!
と、そんなことより執事親子との打ち合わせよ。
「────そこは、譲れません。譲るつもりはありません。えぇ、それはもう髪の毛先ほどにも」
「しかしですね、我々としても正式にフォルティス王国のホーエンハイム家から行儀見習いとして受け入れるワケですので……」
「行儀見習い中は家の名に頼らない。少なくともフォルティス王国の貴族であれば皆が知る決まりごとです。その点についてはご存じのことと思っていたのですが?」
「もちろん確認しております。ですがコレオ様、労働には適した環境というものがあります。料理人には厨房を、薬師には調合室を、ならば錬金術士であるコレオ様には工房で活動していただくのが適当であるかと」
「でしたらなにも問題はありませんよね? 私にとっての工房はすでに存在するのですから。なので」
「────ゴミ山からは動きません! 以上、解散ッ!」
「……左様でございますか」
「事前にフラメル様から説得は現実的では無いと言われておりますが、コレオ様は本気でこの廃棄場を工房として活動なさるおつもりなのですね」
「私にとっては宝物庫も同然ですから」
「なるほど。……父さん、諦めよう。家の名に頼らずに、生活費すら自力で稼ぎ、しかも地域住民の皆さんとも良好な関係にある。行儀見習いとして本来求められているモノをコレオ様は全て満たしてしまってるよ。説得するための理由が無い」
「はぁ……私個人としてはコレオ様のことを好ましく思いますし、なにやら複雑な事情があってフラメル領にお越しいただいていることも理解していますが……わかりました。これ以上なにかを申し上げるのは執事として任された役目の外側にあるものです。コレオ様、なにかお力になれることがあれば、ご遠慮などなさらずに」
「はい、そのときは是非ともよろしくお願いします」
▲▼▲▼
俺の工房は守りきったぞ!
お次は地域住民の皆さんへの事情の説明を、特に素材の買取でなにかと都合をつけてくれている親方────の奥さんに話さないのは不義理というものだろう。
「ふーん、コレオちゃんがお貴族様、ねぇ……。アンタ、アタシを面白おかしく騙そうとしてんじゃないだろうね?」
「女将さん、ここは普通アンタ平民のフリしてみんなを騙してたのかいッ!? みたいになる場面だと思うんですが」
「いくら公共浴場が裸が許された場所だからって、ウチのバカ野郎どもと一緒にフル◯ンでラブソング歌って説教されてた坊やの正体がお貴族様って言われて誰が信じるってんだい」
「男として、あの空気を楽しまないのは意気地無しの所業であるとあだぁッ?!」
「他所者のアンタがここでの生活を楽しんでくれてんのは嬉しいけどね、だからってなんでも悪い大人を手本にするんじゃないよ。お貴族様だろうと、錬金術士としての腕前が上等だろうと、アンタまだ子どもなんだよ? ……まぁ、ウチのろくでなしを慕ってくれんのは悪くない気分だけど」
「はぁ〜い、反省しまぁ〜っす」
「ったく、こんなんで本当に行儀なんて身につくんだか。……それで? コレオちゃんの正体が他国のお貴族様ってのはわかったけど、それでなにが変わるんだい?」
「特には。強いてなにかあるとすれば、この前食べさせてもらったピーチパイが凄く美味しかったのでもう一度食べたいです」
「はいはい、今度持ってきてやるよ」
ピーチパイ、ゲットだぜ!
……じゃなくて。とりあえず女将さんに話しておけば工場関係の人たちには事情が伝わるだろう。あとは露店通りとかそっち方面だけど、別に自分から俺は貴族だぞ〜って言いふらすのもなんか違うしな〜。聞かれたら答える、ぐらいでいいか。
▲▼▲▼
改めて行儀見習いとしてのリスタート、なかなか順調じゃない?
ぶっちゃけなにも変わらんと言えばその通りだが、これからはリサイクル素材の納品よりも武器などのクラフトが生活の中心となる。
昨日の今日で明日いきなり採掘現場に連れて行ってもらえるワケではないので、まずは防衛戦で地道に実績を重ねていこう。
「安心しろ少年。その実績作りには喜んで協力しよう。追加の試作スナイパーライフルを、いや、既に実用性は確認できているのだから試作と呼称するのは良くないな。なにか名前は無いのか?」
「名前、ですか。マーテルさんのご注文なんですから、マーテルさんが名付けてもいいですよ」
「む? そうか……そうだな……うむ! なにも思いつかん!」
「そんな自信たっぷりに言わなくても。普通にロングレンジライフルとか、あとは候補生の皆さんに愛称でも考えてもらえば」
「それはムリだ。確実に喧嘩になる」
「あー、まぁ……皆で使い回しているワケですから、そうなっちゃいますよね……新しい試作武装でもお渡しすれば、少しは緩和されますかね?」
「ついでにバズーカやグレネードランチャーなどで、なにか新しいアイディアがあれば是非とも試してみてほしい。中央政府から支給される武装は、威力は申し分ないのだが燃費がな。それに仕留め損ねたときのリスクも以前話した通りだ。だからこそ、私のような素人には工夫の余地があると思うのだが……」
ふむ。
確かにスティーリアさんに渡したツインライフルより自由度はあるかもしれない。レーザーに衝撃属性を付与してスタンを狙えたぐらいだ、爆風に氷属性を纏わせて広範囲を凍結とかできたら強いかも?
害虫駆除用の冷却スプレーとかあったし、なにより虫ってのは低温に弱いって相場が決まってるからな。仮に違っていたとしても、周囲のフォローが期待できるタイミングで効果無しという結果を得られるなら大歓迎だ。
「わかりました。また通常兵器を改造する形になるので、決定力のほうは期待できない仕上がりになりますが、それでも良ければ」
「構わない。実験兵器のテスト、とでも言えば連中のモチベーションも高まるだろう」
うん、これだな。
当面は属性付与の研究と実験で、のんびり経験値を稼ぐとしよう。テナクスで自由に活動できるうちに基礎属性と応用属性まで使いこなせるよう頑張ってみるか。お兄ちゃんらしく、ルカニにもちゃんと教えてやれるようにしないとな!