俺が厄介ごとに巻き込まれていようとインセクト側にそんな事情は関係なく、今日も今日とで襲撃を報せる鐘が鳴る。
ハロー、タワーディフェンス。あれからアホ王子側の接触もなく……単に誰かが知らんうちに阻止してくれていた可能性のほうが高いけど、平和に武器開発に勤しめたのでお披露目の時間がやってきました。
「スタンライフル隊、準備よろし!」
「アイスジャベリン隊、準備よろし!」
身長よりもデカい銃器を構えた女性たちがずらりと並ぶ。数の暴力には同じく数の暴力で受けて立つ。別に全てを駆逐できなくても構わない、本命は変わらず防御陣地で出番を待っている正規のパイロットたちなのだから。
「虫にも負けず、人にも負けず、皆にありがとうと言われ、自惚れもせず、驕りもせず、そういうモノに、私はなりたい」
「少年、どうした急に」
「人々を守るためインセクトと戦う使命を、ひとりではない誰かと共有できる喜びを噛み締めています」
「む? インセクトは人類共通の敵なのだから手を取り合うのは当然の……あぁ、そういえばアレと遭遇したのだったな」
「規律や規則を大切にしてそうなマーテルさんまでアレ呼ばわりなんですね」
「殿下御本人と直接お会いしたことはない。だが勧誘に来た女の態度が問題しかなかった。自身の言動が組織の評価に繋がることを理解していない、そんな人間に交渉を任せるようでは期待など……だ」
「それはある意味、ハーディ殿下も被害者みたいなモノだと思いますが。味方からの、背中からの流れ弾的な意味で。……っと、本日のお客様のご来店ですね」
「新人の拙い接客で満足してくれると良いがな?」
「小隊、攻撃開始」
「攻撃開始ぃッ!」
「撃てぇぇッ!!」
「射撃開始ッ!!」
「派手にやれやぁッ!!」
パイロット候補生の中でも見どころのある人たちが選ばれ、フォルティス王国の基本機体エチュードに相当するFA【ポーン01】を展開し小隊長として指示を叫ぶ。いかにも軍隊らしいその光景に、相手は虫の化け物だが戦争をやってるって実感がへばりついてきてイヤな感触だ。
だからといって知らん振りで引き返すワケにもいかない。スタンライフルはともかく、大型クロスボウ改めアイスジャベリンの威力と────氷属性の効果を確認しないことには戦場錬金術士としての役目を放棄するも同然。自分でインセクトと戦うことを選んでるんだ、後悔は自由でも後退の自由なんてクソ喰らえだ。
んで。
「やや山なりの曲射、だが威力は申し分なし。槍そのものが粉砕して残念なのが半数を超えているように見える、けど……貫通しても元気にジタバタしてるところは、やっぱり虫だな。そして……貫通せず、突き刺さったムカデ……
「コレオ様よりいただきました、わたしのダブルライフルの実弾……体液に引火して内部からムカデを焼いた、あの魔力反応と同じと仮定しますと」
「体液が急速に冷却されて、そのままポックリ……ね」
さすがは虫、寒さには勝てなかったか。
貫通してしまった槍のぶんは期待薄だが、凍死は撃破にカウントされるかな?
「FAを展開しないパイロットによるインセクトの撃破。ギリギリできました、程度ではありますが……マーテルさん、評価のほどは?」
「上出来だ。しかし少年」
「……? マーテルさん?」
「まるで軍人だよ、その表情。少年将校とでも言うべきか? フォルティス王国に帰ってから苦労するかもしれないな」
「領主貴族として褒め言葉と受け取りましょう。パイロットに認めてもらえるのであれば、戦場錬金術士としての第一歩として上等です」
「それは頼もしいことだ。……体調の方は」
「慣れません。ただの意地です。吐き気が酷い。安全なソファーの上で理想を垂れ流すクソどもを殴れば治るかもしれませんね」
「同感だな。スティーリア」
「はッ! コレオ様、もう充分でしょう」
「そうだな。精神が昂ぶり過ぎて頭が痛い。マーテルさん、お先に失礼します」
効果は確認した。
俺がここに残る必要は無い。
俺がクラフトした武器でパイロットがインセクトを仕留める。俺自身がインセクトを倒す必要は無い。というかできない。助かった、どうにもイライラを制御できそうにない状況で武力系のチート無双はイヤな予感しかしねぇ。
これが戦場の風、なんだろうなぁ。もしくは自作した武器が活躍している影響か。スタンライフルとアイスジャベリン、それぞれ50丁合計100丁。撃破カウントがスキルツリーに累積する反動がこれだとしたら……クラフトした武装を託せば託すほど、か。う〜ん、いまから頭痛が痛いぜ!
「しばらくは……微調整、とか。そういう仕事で実績を積む形になるのかな? というかそうであってほしい。領主様のお考え次第だけれど、しばらく武器は作りたく……ボルトアクションライフルは別腹だから」
「一部のパイロットには好評でしたね。わたしの好みとは少し違いますが、傭兵の皆さんの技術を見たあとですと……フフフ、可能性を感じてしまいますね」
「素材をFメタルに切り替えればインセクト相手にも使えるかもね。手動のリロードは防衛戦には向いていないけど。洞窟の中では……そういえば、スティーリアさんはヨロイムカデの抜け穴については知ってんの?」
「えぇ、まぁ……」
「別に嬉しくない内容でもいいよ。それはスティーリアさんの責任とは違うから」
「コレオ様。テナクスにおけるパイロットの主な損失理由はなんだと思いますか?」
「この流れでそれ聞いたらもう答えじゃない?」