「もしかしたら俺、動物に好かれるチートもセットでもらってるかもしれねぇ」
<コケッ?
休息を取りつつ初心を忘れぬよう養鶏場にお願いして昼寝をさせてもらう俺氏、なぜか鶏が腹の上にちょこんと座る事態に。
いやぁ〜、お腹がポカポカしますねぇ〜。これでタマゴを温めて孵化させるワケか。生命の神秘って偉大だわ。ちょっと臭うけど。前も言ったかこのセリフ? もう覚えてねーや。
なにもしない、という贅沢。
スキルツリーの確認すらしない。
なにかをしなければならない、という焦燥感に追いかけ回されているときこそ立ち止まって振り返る時間が必要なのだ。
洞窟。
地下迷宮、か。
普通のムカデも土を掘って巣作りしたりするのかな? もしもそうなら四方八方から奇襲のリスクがあるってことなんだけど……でも防衛拠点もあるって言ってたし、素人の俺が思いつくようなこと戦闘のプロならとっくの昔に対策してるだろ。
ほかは? 例えば武器の選択。背景の、地形が崩れないゲームの世界であれば爆発物でもなんでも持ち込めるけれど……生き埋めはイヤだなぁ。逆にインセクトを埋める? いやぁ、そんなデータキャラじゃないんだから爆発と崩落をアドリブでコントロールとか無理ムリ。
ははっ。
結局、こういうこと考えるよな。
認めよう。
ワクワクしている。
機会はあっても予定がメチャクチャになって巣穴の中は体験できていない。安全なうちに、誰かの助けを借りられるうちに、自分で背負う責任が軽いうちに、万が一のとき父ロジャーに相談できるうちに────いや物理的な距離があって相談できないんだけど、気持ちの問題としてね? ともかく余裕のあるうちに経験値を稼ぎたい。スキルの強化という意味ではなく、俺自身の視野を広げるという意味で。
故に。
故にこそ。
だからこそ備えを。
死なないために。
<コケッ
鶏とムカデって、どっちが強いんだろ?
少なくともこの世界では鳥が勝てるような虫なんて存在しないんじゃなかろうか? 飼料の乾燥トウモロコシを食えるコイツはそれでいいが、野生の鳥たちはなにを食って生きてんのかねぇ。そのへんに生えてる野生の果物とかついばんでるんかねぇ。
「お前、実は200メートルぐらい巨大化したりしねぇの?」
<コケッ?!
「ハハッ、冗談冗談。いつも美味しいタマゴを産んでくれてありがとう。お前のおかげで俺たちは生活できるんだ、本当に助かってるよ」
<コケケッ!!
野生の世界の食って食われては身体の大きさによる有利不利が全て……ではない。身体が小さくても強力な武器を持つ生物だってたくさんいる。
そうだ、生物。インセクトだってバカみたいにデケェ虫ってだけで生きている。だから中身が焼けたり凍えたりすれば倒せる。頭や動体を派手に吹き飛ばせなくても。
まぁ……普通の弱点だ。
ほかには?
ムカデの動き……関節? 頑丈な外骨格で防御を固めていたとして、関節部分まではフォローしきれないんじゃないか? だって関節まで鎧で包み込んだら動けなくなるし。
接近戦で断ち切るように……戦艦も斬れるような巨大な剣をイメージして、Fメタルで作ればワンチャンいけそうではあるな。半端に胴体を切断しただけじゃ残った上半身、というか前半身で襲ってきそうだけど。
ふ〜む?
「……プロの意見が聞きたいな。パイロットの」
「新しい武装のクラフトだったら喜んで相談に乗るよ!」
「あ、どうもカティさん。横になったままで失礼します。腹の上の鶏、ウトウトしてるんで」
「鶏以下の扱いなんてヒドいぞー。お詫びとして私にもスティに負けない専用装備を作れー」
「地下迷宮向きの武器ってなんでしょうね?」
「キミもショットガン信者にならないか? ともに火炎放射器教徒どもを糾弾しよう」
「俺の愛は全ての武器に平等です」
「チッ!!」
「鶏が慌てて逃げ出すレベルの本気の舌打ちしないでくださいよ。ツバとんだら汚いでしょ」
「ふーんだ。そんなツレナイこと言うコレオくんには中央都市の政府高官から送られてきた怪しい指示書の内容を教えちゃうもんね〜」
「なかなか斬新な嫌がらせですね。タイミング的に俺にも関係していそうで効果抜群なのがまた」
「当たり〜。第一王子ハーディ・クロウリー・テナクスの実績作りのためにヨロイムカデの抜け穴の調査をさせたいから、フラメル領はこれに積極的に協力してね……だってさ」
「じゃあその日は俺、廃棄場で留守番してますね」
「私もそれがいいと思っていたよ。船長からキミを連れて行くべきか残して行くべきかについて、どちらもノイズが酷くてなにも見えないって言われるまではね。ま、なんか怪しくて問い詰めたら……変なモノが見えたらしいよ」
「変なモノ?」
「巨大な歯車のような、魔法文字のような、錬成陣のような……それらが複雑に交差して、それでも規則的に動いている巨大な空間。とにかく神秘的で、心臓を鷲掴みにされたように恐ろしいモノが見えたんだってさ」
「ものすごく抽象的なクセにメッセージ性が強くて嬉しくなさそうな予感だけはちゃんと伝わってきますね」
「ホントだよ。我らが祖国のために、ってコレオくんを連れてきたのはいいけれど、本当に正しい選択をしているのか? って不安になってきたんだってさ。いまさらだよね〜。ちなみに、そんな船長の判断はコレオくんを“連れて行くべきではない”だってさ」
「俺もまさかの第一王子殿下と知ったいまでは余計にハーディさんにはお会いしたくないです」
「でもフラメル領の領主カテリーナ・フラメルの判断は“連れて行くべき”なんだな〜コレが! 理由はね、もしものことが起きたときに、街中だと住民はもちろん建築物への被害を気にする必要があるから。洞窟の中なら安心して戦える……とも言い切れないけど」
「生き埋めは勘弁してほしいんですが、それは。あぁ、だけど、そうか……そうなるのか……俺がトラブルの起点になるなら、確かに街に残るのはあまり。俺自身もお世話になってる人たちを危険にさらすのは好みではないです」
「決まりだね。ま! 安心したまえ〜! 私とスティ、姉妹の絆でコレオくんのことは守ってみせるさ! だから〜、私にも武器チョーダイ♪」
「地下迷宮向きの武器のアイディアについて」
「私と一緒に散弾の福音を奏でよう!」
「散弾ではなぁ……」
「いや実際有効なんだって! 外での防衛戦と違って地下では戦闘領域が限定されるから、クロスレンジでの瞬間火力は大事なんだよ。味方撃ちのリスクを考えれば格闘戦も厳しいから余計にね」
近距離……。
散弾……。
瞬間火力……。
「あッ」
「なにか閃いたッ!?」
「まぁ……一応」
ロマンじゃなくて実用性を鑑みて“アレ”の再現を目指す理由が出てくるとはなぁ。反動で後ろにすっ転んで後頭部強打で気絶! とかならないといいんだけど。