インクリメンタル☆アルケミスト   作:はめるん用

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洞窟大作戦・甘口!

 王族が関わることってなんでもかんでも大げさに発表されるものだと思っていたけれど、ハーディ王子のために出陣式みたいなヤツはしないらしい。実利的でとても良いことだと思います。

 下手に式典なんてされたら俺の立場がどんなふうに悪用されるかわかったもんじゃない。自惚れと侮るなかれ、コレオ個人に価値は無くてもホーエンハイムの名に価値はある。本人がどう思うかじゃない、周囲は属する者として人を見るのだ。

 

 

「自分の所属は遊撃隊、ですか。まともな軍隊教育なんて受けていないんですが、大丈夫なんですかね?」

 

「コレオ様、別に常の言葉遣いで構いませんよ」

 

「遊撃隊の中でスティーリアさんがどういう立場なのかわかりませんので」

 

「我々に役割分担はあっても上下関係はありません。臨機応変な戦闘を担うからこそ遊撃隊ですので。そもそもコレオ様はゲスト待遇ですから、口調程度は自由にしてくださって問題ありません」

 

「わかった。偉そうにならない程度に普通の話し方をさせてもらうことにするよ」

 

 

 軽く遊撃隊の隊員たちに頭を下げて……輸送車を盾にするようにハーディ王子たちのほうをチラリ。

 

 王子の護衛として同行する、騎士の称号を掲げるパイロットたちのFA【ナイト04】はドレスアーマーとでも表現すればいいのか。なんとも華やかな印象の装甲パーツで構成されている。

 

 それは、まぁ、わかる。王子様だもんな。

 

 ハーディ王子の側にいる見目麗しい女性たちが親衛隊のようなポジションなのも理解した。彼女たち以外の騎士はハーディ王子に話しかけるどころか近寄りもせずに整列しているから。

 

 だけど、なぁ。

 

 雰囲気の違いが露骨なんよなぁ。

 

 

「スティーリアさん。ハーディ王子の取り巻き……じゃなかった。親衛隊の騎士の皆さんの装備なんですけど。肌の露出が多いのは、なにか意味があるんでしょうか?」

 

「言葉遣い」

 

「俺は雰囲気に酔いやすいんだよ」

 

「フフフッ、実にら(・)し(・)い(・)弱点ですね。それで、露出の意味ですか? まぁ……王族の護衛ですから、華やかさも必要でしょう」

 

「本命は整列してる皆さん、か。博愛主義のつもりはないけれど、俺から見て真面目に仕事をしている人には死んで欲しくないな。俺自身の都合でね。明日のメシが不味くなる」

 

「命の損失は稀ですよ。地下は量より質の戦場なので、負傷者を連れ戻す余裕は意外とありますから。えぇ、命の損失は」

 

 

 つまり命以外の損失はどうにもならないってことですねわかります。そういえば本来お世話になるはずだったゲオルグ様も義足なんだっけ?

 魔法と錬金術のある世界の義手と義足なら性能も高そうだが……良く動くから大丈夫とはならんよなぁ。生きてるだけで丸儲けとは言うが、生きているからこそ“それ以上”を求めてしまうのが人間だもの。

 

 

 

 

「やぁ、コレオ・ホーエンハイム。久方ぶりだね」

 

「あ、どうもハーディ王子。ご無沙汰しております」

 

 

 うわっ。 

 

 考え事してたから接近に気がつかなかった! 

 

 

「先日は強引な誘い方をしてしまい悪かったね。だがもう気にする必要は無くなった。私がテナクスの王となったとき、隣に並ぶ英雄たちの中にキミの姿は“視えて”いないからな」

 

「はぁ……」

 

「そういえばキミは己の才能を過信して行儀見習いに出されたのだったな。全く、私としたことが少しでも同志を集めるべきだと視野狭窄に陥っていたらしい。私はキミとは違うよ、残念ながらね」

 

「はぁ……」

 

「ハハハッ。だがこれもなにかの縁だ。私が王位継承の儀に臨むときにはキミにも招待状を出そう。ご家族のぶんもだ。美味しいオレンジジュースも用意しよう。それでは、ヨロイムカデの抜け穴では良く働いてくれることを期待しているよ」

 

「はぁ……」

 

 

 頭のおかしい人がいました。(確信)

 

 すごい、一方的に言いたいことだけ言って立ち去っていったぞ。しかも取り巻きの人たちは何故か満足そうにドヤ顔してるし。

 アレか? 俺が貴族的な教育をちょっと蔑ろにしちゃってるから意図を汲み取れないだけで、普通の貴族は11歳ならもう理解できて当たり前のやり取りだったりすんの? 

 

 こえーよ、なんなんだよあの王子は……初対面から俺にずっと恐怖を与えてくるじゃん……なんか右目だけやたら金色にキラキラと────まて。違う。あのアホ王子は片目だけ金色なんかじゃなかった。そんな特徴的なオッドアイなら絶対に忘れない。

 

 くそ、こんなことなら聞き流さないでハーディ王子の話を覚えておけばよかった。

 ホントもう面倒な気持ちが強すぎで早く消えろよとしか思ってなかったし。

 

 くそぉ、会話の内容をサラッと思い出せるラノベ主人公たちの記憶力が羨ましい……ッ!! 

 

 

「スティーリアさん、ハーディ王子の話していた内容とか覚えてたりする?」

 

「ハーディ王子と直接お会いするのは初めてですが、なかなか個性的な方でしたね。浅学のわたしには理解が難しい高尚な語りであったとは思います」

 

「そりゃ自分に話しかけられたワケじゃないし、いちいち覚えているワケないか」

 

「恐らく、としか言えませんが……ひとまずコレオ様に対する興味が無くなっていたことについては安心しても良いのではないでしょうか?」

 

「それ以外の部分が不安しかないよ……」

 

 

 これから大規模戦闘が始まるかもしれない、というタイミングで王族の言動が怪しくなる。異世界で見る、いつもの前フリ。僕にとって新鮮味がないことが、フラグの証だと思う。

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