量より質。
言葉では簡単に表現できるが、実際に目の前にソレが現れると地上のムカデ軍団の襲撃がマシに見えるから困る。
「あんなのが一匹、街中で暴れたらどれだけ人が死ぬかわからんな……特撮で怪獣が現れたときの一般市民の気分だ」
寝泊まりを繰り返して最前線の防衛拠点まで到着して1時間もしないうちに、レーダーがムカデの接近を感知したということで遊撃隊のメンバーも迎撃に協力することになった。
当然ながら俺はなるべく安全かつ見通しの良い場所に避難している。具体的には管制室っぽい建物の屋上で双眼鏡を構えている。なんで中じゃないのかって? そら部外者がいたら邪魔になるからだよ。
ハーディ王子が俺に興味無いなった時点で引き返すのが正解だった、なんていまさら気づいても遅い。ならせめて、パイロットたちの邪魔にならないよう隅っこで大人しくしているしかない。
「大型レールガン、かな? バックパックから直接、脇腹に抱えるように……なんとぉーッ! とか言いながら撃てそうなデカブツに見える。さすがに連射はできないようだけど、特撮怪獣かよってサイズのムカデの頭を一撃で消し飛ばしてんのヤベェな火力」
広過ぎず、狭過ぎない地形に設営された防衛拠点は侵攻してくるムカデのルートを上手くコントロールしているようだ。サーチライトと、事前に打ち込んでいたらしい光源を頼りに天井や側面を進んでくるムカデを丁寧に叩き落としている。
たくさん並べてバカスカ撃てれば楽に守れそうだが、ここに来るまでの道のりを考えると補給も簡単じゃないからな。さすがに錬金術士はほとんど常駐していないようだし、メンテナンスを地上で、しかも中央都市まで運んでとなると時間が……。
命懸けの仕事なのに補給事情が歪、なんて事情を知らない部外者だから簡単に言えることなんだけど。でも一箇所に錬金術士を集めて作業をまとめたほうが効率的なのもそれはそうで。
そりゃね、俺みたいな未熟な錬金術士のクラフトする武器でも地上の防衛戦が楽になるなら歓迎されるわ。それで節約できたぶんのリソースを地下に振り分けることができるなら、過程や手段なんてどうでもいいわな。
「正面の迎撃部隊は……いた。スティーリアさんのダブルライフル、一応効果はあるっぽいな。連結させたコンテナみたいな身体の隙間が燃えている明かりが見える。胴体が焼けて分断されても動く生命力はとんでもないな……大きさは強さでしぶとさでもある、と」
これ実用面でもロマン武器必要じゃね? 生半可な火力じゃ成虫を倒せる気がしない。いつかのジグモが大人しいタイプのインセクトで本当に良かった、そうじゃなきゃあの時点で俺死んでたかも。
それで、錬金術士として参戦しているつもりの俺としてはカティさんのほうも気になる────お? 周囲の仲間を下がらせて……使うんだなッ!? いま! ここでッ!!
大型ショットガンを収納し。
両手を握りしめ!
増設したなんちゃってフライトユニットから魔力の波動が後方へと渦巻いてッ!
両肩のクレイモアが開いたッ!!
────おぉッ!!!!
大量に発射された氷結弾が正面から突撃してくる成虫ムカデと衝突してそのまま一気に全身凍結ッ!! 全身凍結? いや体長50メートルはあるのに尻尾のほうまで数秒で……あ。そのままの勢いで頭から何メートルぶんか粉砕してらぁ。
すげぇ。
氷結属性すげぇ。
氷属性とは全然違ぇ。
徐々に動きが鈍るアイスジャベリンとは効果が天地ほどにも違う。クラフトで加工時に持っていかれる魔力消費が多くて数日に分けて作ったけれど、ここまで露骨にダメージが違うと全然納得できる。
いや、これは単なる属性の違いだけじゃなさそうだ。全てをFメタルで加工して、FAを展開したパイロットが使用するとここまで露骨に威力に差が出るのか。銅を混ぜた魔力伝達率の影響、ハンパねぇ。
カティさんのほうは……あぁ、くそ。やっぱり消耗は課題になるか。倒れるほどではないが片膝をついた姿が見える。いまは仲間がいるからフォローしてもらえるが、孤立したときに使えば逆に追い詰められるかもしれない。
武装だけ強力なモノを完成させてもパイロットばかり負担が増える。やはりコアパーツや装甲パーツのクラフトにも着手しないとチートスキルを持て余すだけになるか。
物は作れる。☆1装甲バンドルに明るく表示されている。フォルティス王国の【エチュード】とテナクス戦闘国家の【ポーン01】という機体がアンロックできる。ついでに【基礎コアパーツ】も。
ほかにも項目はあるけれど、真っ暗で名前も確認できないのは別の国で使われているFAなんだろうな。たぶん実物に触れることがスキル追加の条件だ。
だから、まぁ、作ろうと思えば作れるけど……どっちをクラフトしても問題が起きる気配ビンビンやぞ? 無事に実家に帰って父ロジャーに相談するまで我慢するのが無難だな。
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「作戦会議に呼ばれなくて済むのはありがたいな……と。いやはや、鉄も銅も魔力石も豊富なおかげで俺にも役立てることがあって良かったですよ」
「こっちとしては、こんな細かい傷ぐらい慣れたモンだけど。ま、みたところ手間どころかものの数秒の作業だし、メンテしてくれんならありがたく甘えさせてもらうけど」
戦闘が落ち着いたタイミングで補給と修理。素材はいくらでもあるし、傷を埋めるだけならハンドクラフトで余裕で終わる。手間らしい手間なんて、たまに魔力の流れを微調整するのに指先でトントンとずらしてやるぐらいだ。
ハーディ王子が俺に対する興味を無くしてくれて本当に助かった。そうでなければいまごろ今後の動きについての打ち合わせに呼ばれていたかもしれない。迂闊なひと言で命の価値が決まるような会議になんて出たくないのが嘘偽りのない本音である。
……と、カティさんたちが戻ってきたな。
「やぁやぁコレオくん! お仕事、頑張ってくれているねぇ! 本当なら新型クレイモアの感想を語りたかったのに、王子たちの到着するタイミングがな〜。もう少し空気を読んでほしいよ」
「思いのほか、効果抜群でしたね」
「成虫ムカデならだいたい8匹ぐらいは倒せるかな。切り札としては充分に実用的。魔力消費はなかなかだけど、数秒で無力化できるなら対価としては充分安い」
「朗報ですね。錬金術士として素直に嬉しいです。ついでに今後の予定についても楽しいお話が聞けるとモチベも高まるんですが」
「次期国王自ら調査に乗り出したのに、なんの成果も得られませんでした〜! なんて許されると思う?」
「……なけるぜ」