登場は数話ほど先になりますが、ワケのわからない逆張りなどしないで素直に反映しますのでしばらくお待ちください。
「今後の話をする前に────すまなかった、コレオ。私の想像力が至らないせいで余計な苦労を掛けてしまって」
「謝罪は受け入れます。そうしないと不毛な問答が続きそうなので」
「わかった。なら私からはこれ以上は言わない。それで、ゲオルグたちローゼンクロイツ側については」
「錬金術士として義肢には興味がありますので、錬金術士として意見交換の場を用意していただける、という話であれば……ゲオルグ様とはお会いしてみたいですね」
「ゼノビア夫人については」
「謝罪されても困ります。別に気にしていないとか、許すための方便とかではなく、本気でどうでもいいのです。テナクスで少しばかり面白可笑しいイベントはありましたが、結果として無事に帰ってきましたからね」
「少しばかりの面白可笑しいイベントと言うには報告の内容が濃いように思えたが? 少なくとも私はハーディ殿下を殴りたくて仕方ない」
「そういえば王子呼びと殿下呼びの違いってなんですか?」
「……そこからか。王子はあくまで役職であって敬称ではない。とはいえ、特別な式典でも無ければ普通は誰も気にしないがね」
あー、なるほど?
日本で言うところの、上司を佐藤部長とか鈴木課長とか呼んでも別に失礼じゃない的な? そういえばカティさんもハーディ王子のこと思いっきり王子呼びだったもんな。親衛隊は様付けだった気がするけど。
うん?
つまり父ロジャーの殿下呼びは皮肉か。
ゴメン、父様。
そんなこと解説させちゃってマジで反省してる。
「あとは……メディア嬢についてだが」
「…………えーと」
「あの日、お前を出迎えるはずだったローゼンクロイツ家の令嬢だぞ」
「あー、はい……完全に忘れてました。ご挨拶をさせていただいたゼノビア夫人はともかく、メディア嬢は本当に……名前しか知らない人物なので」
「……わかった。それは私たちのほうで諸々を済ませておく。仮にも、国際問題に発展しかねない失態の後処理なんだがなぁ……。当事者であるお前が無関心である以上、別に望んで大事にしたいとも思わんが」
「視座が高くてすみません」
「そんな謝罪の言葉、お前ぐらいしか言わんぞ? ……よし、面倒はこれで一区切りとしよう。ヴィッシュの到着までは親子の時間だ、なにか話しておきたいことでもあれば」
「あ、そういうことなら父様の意見が欲しいクラフトがあって────」
「ほぅ? 面白そうだな。では、少し倉庫から素材を持ってきて────」
▲▼▲▼
「お邪魔するぜ〜。おひさ〜コレオちゃん、元気そ〜うでなによりだ〜ぜ。……って、ふたりでな〜にやって……ん、の、よ……?」
「テナクス戦闘国家のFA、ポーン01とルーク02のベーシックフレームを再現して遊んでました」
「他国の軍事機密など簡単に触れられるモノではないからな。我が国のエチュードやメヌエットの強化に使えそうな技術がないか分析していたところだ」
「ちょ、え? いや、それ……いやいやいやいやッ!? おま、ちょ、それ普通に大陸条約の……」
「なにを言っているヴィッシュ。専用設備も無いのに他国のFA装甲など簡単にクラフトできるはずがないだろう。これは、あくまで、コレオがハンドクラフトで再現してみたレプリカのようなものでしかない。いわばごっこ遊び、どの家庭でも珍しくない親子の道楽だよ」
「そうですよヴィッシュおじさん。FAの装甲なんて簡単にクラフトできるワケないじゃないですか。百歩譲ってクラフトできたとしても、他国の機体を簡単に再現できたら大問題でしょう? それらしい物を作って親子で遊んでるだけですよ」
再現は、していない。
ただスキルをアンロックしてクラフトしただけ。
嘘は言ってないし、なんなら人の手で作った装甲パーツより精度は上じゃない? 普通の人間では誰も同じものを作れない、ならば実質的には別物ってことだ。
「で、まぁ基本的な設計思想がそもそも射撃戦に偏ってるんだと思います。地上でムカデの大群を相手にするワケですから、低い姿勢で這い寄るところを上から狙い撃つスタイルが安定するのではないかな〜、と」
「ふむ……ベース部分の魔力作用をニュートラルに仕上げ、専門性や役割分担を完全に各種フレームの追加パーツに頼るフォルティスとは根底から魔法文字の刻み方に違いがあるのか……拠点防衛用にカスタムすれば我が国でもあるいは? いや、しかし妻ひとりに専用機体を用意するのとはコストの観点から見ても……」
「……普通のご家庭ではよ〜ぉ? そ〜んな、お前、親子の団欒で……他国の軍事機密を分解して、兵器の改良案をた〜のしそ〜うに話し合ったりし〜ねぇんだ〜よなぁ〜」
…………。
…………。
「改めまして、お久しぶりですヴィッシュおじさん。紆余曲折を経て愉快な行儀見習いから帰ってきました。向こうの第一王子に初対面で虫の毒入りジュースを飲まされたりもしましたが、結果的には有意義な2年間でしたよ」
「なぁロジャー、オレ様、一応な? お前らにブン殴られるぐ〜らいのつもりで来てんだ〜けどよ?」
「本人が気にしていないのに大人だけが気を揉んでも仕方あるまい。責任を感じているのであれば、これからの働きで頼れるところを証明するだけだ。お互いに、な」
「器が大きくてすみません」
「……あっは! いやぁ〜、コレオちゃんぜ〜んぜん変わってな〜くて安心だ〜わ。ま、未来を担う若者が頼もし〜いのはイイこった〜わな。で、ロジャー。頼まれモンは用意し〜てきたぜ〜? コレオちゃんのほうはもちろん、ルカニちゃんの出国手続きのほうもバ〜ッチリよ」
「ルカニの出国?」
「うむ。助かる。ルカニの出国については、あとで説明するとして……コレオ。首都グランマガザンが各国から自由に学びを求める子どもを受け入れる、学園都市でもあることを行儀見習いの出発前に話したと思うが……覚えているか?」
「はい、父様。綺麗サッパリ忘れていました」
「……そうか。いや、わかった。重要なのはそこではない。基本的に学生は学園側で用意する学生寮で生活するのだが、大勢の貴族も寝泊まりするとあって警備も厳重で安心できる施設だ。本来ならば、な」
「私に限っては安全が保証されていない。とはいえ、脅威といっても子どものイタズラ程度の嫌がらせぐらいでしょうけど。……ですよね?」
「仮にそうだとしても、用心するに越したことはないだろう。コレオ、入学式まで時間はある。お前自身で学生生活の拠点となる宿を探してこい。私やヴィッシュが下手に動けば周囲を嗅ぎ回ろうとする輩が出てこないとも限らん。……父親として、せめて宿のひとつぐらい用意してやりたかったのだが」
異世界転生して、まさかの進学に伴う下宿探し。
学園編の導入としては斬新だな? ちょっとワクワクしちゃうじゃないか……ッ!