美しい〜汗を〜かこぅお〜♪
汗をかくって素晴らしぃ〜♪
汗をかくって素晴らすぃ〜♪
「浴室の改修、完了! といっても、俺はほとんど雑用を手伝っただけなんですけどね〜」
「いや、キミ、なかなか筋が良いぞ! 入学前とは思えないぐらい錬成陣の扱いが上手いじゃないか!」
「あのリットン爺さんが弟子にするだけあるぜ、坊や。いまウチの工務店にバイトで来てる学生の5倍は使える」
「学生バイト……そういうのもあるのか……」
「まぁ、キミの場合はリットンさんのお仕事を手伝うほうが勉強になるだろうが……そうだ! 魔導管の施工管理に関する資格が欲しいときは相談に来るといい! 遠慮はいらないぞ!」
「いや、爺さんの弟子ならFA関連の進路だろ。とはいえ、資格を持ってりゃ水や照明なんかも自分でも弄れるからな。気が向いたら調べてみるといい」
「はい! ありがとうございます!」
生活を安定させるには錬金術ばかり勉強していればいいというものでもない。直ちに必要ないからと環境整備を怠れば、手遅れになってから後悔するのは誰もが通る道。
別にリットン親方の管理が悪いという話ではない。複数人が暮らす前提の施設にひとりで生活していれば、優先順位の差でどうしても後回しになる部分が出てくる。最低限、使えればいいや……ってね。
なので錬成陣のトレーニングも兼ねて修理してみようと、自分の部屋の掃除も後回しにして取り掛かろうとしたところ。
「せっかくだ、ギフトに頼らねぇプロの技術ってヤツも見ておけ。そもそも公共のライフラインに接続するような部分をイジるにゃ資格が必要だしな」
正直、技術的な部分で学ぶべきところはなかった。
だが重要なのは技術ではない。
特別な力に頼らなくても、ギフトなど持っていなくても、人は人の技術で生きているという事実。
物騒な現場ばかり巡っていたせいで危うく忘れかけていた。荷物を運ぶために台車をクラフトしたように、俺のスキルツリーだって戦闘だけが取り柄じゃないんだ。
うむ。
領主貴族の本分は領民を護ること。
それは外敵の排除だけでなく、豊かな生活を……日常を護ることでもあるのだ!
……なんて。偉そうに理解したフリしたところで、結局はチートスキルの優越感から永遠に離れられないんだけどね。
しばらくは穏やかな時間を過ごせそうだし、少しは落ち着いて自分自身と向き合ってみるか。駆け足から歩くような速さで。
「おぅ、坊主。どうだった?」
「とりあえず、人はギフトが無くても生きていけるという事実は再確認できました。半分くらいは」
「半分、か」
「はい。死の恐怖を“いくつか”知っている身としては、そう簡単に割り切れませんね。それが良いことか悪いことかはわかりませんが」
「ふぅん。ま、いいんじゃねぇの? お前は誰かが知らないことを知っている、誰かはお前にできないことをやっている。それでなにか不満があるか?」
「まさか。いや〜、俺の知らない常識をリットン親方から教えてもらえて嬉しいな〜」
「そうかそうか嬉しいか。じゃ、素材と食材の買い出しでも行ってもらおうか。儂はこの前コケて助けてもらったばっかりだからな。これも社会勉強ってヤツだ」
「素材って、クラフトに使うヤツをですか?」
「なんだ、お貴族サマのご子息はクラフト素材なんかテメェで買ったことなんか無いってか?」
「そうですね。鉄を使いたいときは自宅の裏を岩石層が出るまでひたすら掘りまくって石を切り出して砂鉄まで分解して掻き集めて使っていましたし、行儀見習い中は廃棄場に小屋を建てて住み込んでリサイクルしながら作業してたので、お金を出して素材を購入したことはありませんね」
「お前本当にホーエンハイム家の子どもか? 儂が若い頃の平民出身の学生だってもう少しマシな方法で素材集めてたぞ? そのへんの床で毛布だけ被って気持ちよさそうに熟睡してるしよ……言っとくがな? 勝手に貴族の名前を騙るような真似したら牢屋にブチ込まれるからな?」
失礼な。
領民の皆さんの税金を節約しただけなのに。
▲▼▲▼
「へぇ、坊やがリットン爺さんのところに転がり込んだっていう」
「金は無いけど貴族と顔を突き合わせるのも面倒くさいってワガママ言ったら快諾してくれました」
「ハハッ、そりゃいいや! あの爺さん、悪い人じゃないんだけどさぁ、お世辞にも愛想が良いとは言えない人だから。アンタみたいにグイグイ当たりに行くやり方は案外あってんのかもね」
「でもお姉さんはリットン親方が良い人だって知ってるんですね」
「あらヤダお姉さんだなんて。今回だけジャガイモ、オマケしてあげちゃう♪ そうね〜、傭兵さんたちも結構出入りしてるし、鍋とかフライパンの簡単な修理も引き受けてくれるし、下宿先としては大当たりなんじゃない?」
頑固爺さん、と呼ぶには軽いノリにも乗っかってくれるだけあって、商店街でのリットン親方の評判は悪くないようだ。でも愛想が良くない人……かなぁ? 初対面の俺でも全然親しみやすい性格の人だと思うんだけど。
買い出しがポンポン簡単に終わったのもリットン親方の人徳だと思う。どうやら昨日、俺が寝床を確保するために共有スペースを軽く掃除している間に通知を済ませてくれていたらしい。ちょっと口調が乱暴なだけでバリバリ実は良い人じゃん。
いやぁ……実家には当然報告しないとだけど、これ、入学手続きが完了するまでの時間ヌルゲーか? 一般常識を学ぶだけのボーナスタイムとか最高かよ。フフフ、俺も商店街の皆さんから家具や道具の修理を請け負う何でも屋さんムーブを全力で遂行して────。
「もし、そちらの男子生徒様」
うん?