オンライン対戦でバトった相手が「ハメちゃんはリアルファイトなら負けないんだよぉ!」とか言ってたので会いに行ってみた。尚、彼は全長221cmのムキムキ!マッチョ!マッスル!の人間である 作:SUN'S
『リアルファイトなら負けないんだよぉ!』
「受けて立とう」
『逃げんなよぉ!!』
ディスプレイのスピーカー越しに聴こえた言葉と、確固たる自信の現れに思わず、そんなにリアルファイトが強いのかと感心し、オレは対戦相手の名前を見る。
ゆるふわ*天使ハメ子
頭に血が昇りすぎて、マジの連絡先を送ってきた先日の出来事を思い出す。アレはキレると面倒臭いタイプの獣人だと思いつつ、にゃがみ原市を歩く。
「しかし、珍妙極まった名前だな」
そんなことを呟きながら、わりと真面目に件の配信者に会いに行ってみた。かなり趣を感じる二階建てのアパート「コーポ大谷」の看板を見る。
ここであってるよな?と考え込み、唸るオレの目の前に見覚えのある細くて小さな獣人がアパートの一階から出てくるのが見えた。
「ハメ子、会いに来たぞ」
「えっ、だれ?」
「? リアルファイトするんだろ?」
「は?……リアルファイトって、こ、ころさないでぇ」
「なんでだ!?」
「見た目がガイルじゃん!?ハメちゃんにソニックブームするきでしょう!?やだぁー!」
こいつ、自分で呼んだ癖に何を言っているんだ?と困惑するオレの目の前に倒れ込み、ジタバタと暴れるハメ子の事を見つめていると視線を感じた。
「なにしてるんだ?」
「女の子に手出しはダメですよ?」
「お前達、良い筋肉だな」
思わず、二人の身体に感心する。
「秀夫、どうする?」
「とりあえず、大家さんに相談しとけ」
二人の会話を聞きつつ、コソコソと逃げようとするハメ子の襟首を掴み、二人に突き出す。
「オレはコイツに『リアルファイトなら負けない』と言われた上、住所まで渡されたんだが。お前達が迷惑なら日を改めて来よう」
チラリとハメ子を見る。
「いつも応援しているぞ。スパチャだ」
スッと5万円を差し出す。
「え、あ、ありがと?」
「じゃあ、オレは帰る。スパチャは定期的に渡しに来るけど、構わないか?」
「え、う、ぅん?」
よし、言質は得た。(筋肉万象)
あとで配信されたら、またスパチャしよう。
そんなことを考えながら、オレはいそいそとコーポ大谷を離れていく。推し活をしているわけじゃないが、可愛い女の子には優しくしなくてはいけない。
「いや、5万は多いって!?」
「迷惑代も込みだ」
「あ、そうなんだ。それならいいかな」
うまく誤魔化せて良かったぜ。
ハメ子破、やっぱり気が抜けているな。
「(とりあえず、負荷掛けて歩くか)」
全身の筋肉を力ませ、オレは歩き出す。
ギチギチと筋肉繊維の締まる音が心地好いぜ。