オンライン対戦でバトった相手が「ハメちゃんはリアルファイトなら負けないんだよぉ!」とか言ってたので会いに行ってみた。尚、彼は全長221cmのムキムキ!マッチョ!マッスル!の人間である 作:SUN'S
ゆるふわ*天使ハメ子。
通称ハメねこはコーポ大谷の一階に暮らすニャンチューバーであり、そこそこ有名なライバーとして活躍しているが、ここ数週間ほど爆発的に登録者数が増えている現状に素直に喜べずにいた。
その理由は、昼九正午にある。
昼九正午。
日本スーパーミドル級。日本ランキング5位のプロボクサー。デビューして二年目。サンデーパンチは「左フック」。本来はヘビー級に相当する体格だが、日本国内に於いて彼に比肩する体格のボクサーはそう居ないため、階級はスーパーミドル級に在籍している。
体格と派手さはピカイチなプロボクサーが、ひょんなことから画面に映ることが増えた。そりゃあ、もうコアなファンは彼を見るために登録する。
ここはハメちゃんねる、なんだけどぉ?
そう不満をぶつけたくなるが、収益に繋がっているため文句を言って良いのかも分からず、ニャーニャーと唸って困ることしかハメねこには出来ないのだ。
「どうなのさ。ショーゴ君!」
「オレはハメ子の役に立っているのか」
「立ってるよ!立ってるけど、不満だよぉ!」
ニャオーン!と怒るハメねこの渾身の右ストレートを座ったまま避けるショーゴに彼女は「避けないでよ!?」と文句を言えば、首を捻って避ける。
スリッピングアウェー。
「漫画でしか見ないヤツじゃんそれぇ!?……ね、ねえ、こういうパンチとか打てる?」
ふと、ハメねこはスマホで漫画の技を見せる。
その漫画のタイトルは「はじめの一歩」だった。つまり、ハメねこはボクサーとしての力量を確かめる名目で技再現動画を撮りたいのである。
「ムッ。ガゼルパンチか」
「できる!?」
「出来なくはない。ジムで試すか?」
「やったー!」
そう約束は交わされた。
「ちなみに負けた理由は?」
「判定だ。フットワークの上手さに翻弄された。まだまだオレは弱い」
そう言ってショーゴはハメねこを背負い、一定のリズムで走り始める目的地は、所属ジム。やることは推し活のために使う、ガゼルパンチだ。
十分ほど走った先。
ボクシングジムに入ったショーゴは「おはようございます!」と挨拶し、ロッカールームに向かう。
その間にハメねこはマネージャーやトレーナーに撮影の許可をもらい、動画のタイトルは「現役ボクサーに漫画の技を再現してもらってみた!」に決まる。
ロッカールームから戻ってきたショーゴはストレッチを終えると18オンスのグローブを両手に嵌め、サンドバッグを殴る。
「先ずは簡単なところを見せる」
「うん!みんなも見ててね!」
・タンクトップすげえ
・昼九だ!
・前の判定負け。悔しかった
リスナーがコメントを書き込む。
「シッ!」
左ジャブ。
左ジャブ。
右ストレート。
揺らぐサンドバッグと響く重低音。
「うおぉ」
・爆発音みてえ!!
・ヘビー級だろこれ
・サンドバッグ、くの字じゃん!?
右のボディーブロー。
続けざま、二度目のボディーブロー。
「行くぞ」
ステップバック、からのステップイン。
ダッキング、からの左フックが爆ぜる。
ガゼルパンチが、決まった。
「すんごっ……」
・すごすぎ
・えっぐ
・こいつ、得意技左フックだよな
・死ぬんじゃねえの、これ
・やっべぇ
「こんなもんか?」
「いや、何今の!?サンドバッグ縦揺れした!!」